F1新車解説:アルファタウリの2022年型「AT03」アストンとマクラーレンの折衷的エアロ?
角田裕毅とピエール・ガスリーが駆るスクーデリア・アルファタウリの最新作「AT03」が遂に発表された。お披露目されたのは実車ではなくレンダリングだが、幾つかの興味深い特徴が確認できる。
概して言えば空力的には、既に実車発表済みのアストンマーチンとマクラーレンの中間に位置するような印象を受ける。両者と比較しながら駆け足でファーストインプレッションをお届けしたい。
フロントウイング、ノーズ
アストンマーチン「AMR22」やマクラーレン「MCL36」とは異なり、ノーズの先端がメインプレーンと一体化されている。これは昨年発表されたFIAコンセプトモデルと同じだ。ライバル2チームは2枚目をノーズと一体化させ、1枚目を吊り下げる形を採っている。
上部エレメントは全体として縦方向に大きくせり出している印象だ。これはメインプレーンがノーズに吊り下げられ低い位置に配置されているマクラーレンやアストンマーチンとは異る処置で、これもFIAのショーカーを彷彿とさせる。
フロントタイヤの後流をコントロールするオーバーホイール・ウイングレットの内側にあるブレーキダクトは三角形状で、比較的サイズが大きい。
ノーズ側とエンドプレート側に設けられた2対4個のフラップアジャスターは、気流の渦を生成する空力的な役割を兼務したものだろう。
羽は規定上限の4枚構成で、全体として非常にシンプルというか曖昧な印象を受ける。そのため、フラップアジャスターが余計に目立って見えてくる。
恐らくフロントはレンダリング用のダミーで、実戦仕様はだいぶ異なったものになるのではないだろうか。伊ファエンツァのチームは昨年、レンダリングとは異るナローノーズを隠し持っていた。
サイドポッド
今シーズンのマシンデザインを語る上でのキーファクターとなりつつあるサイドポッド周りに関しては、まず最初にアストンマーチンとの共通点が目を引く。
両者ともに四角い形状が特徴的な吸気口を持ち、フロアとの間には深いアンダーカットが設けられている。これにより、前方からの気流をフロア上部を通してビームウィングとリアウィング下部へと流し、ディフューザーの性能を引き上げる効果が期待できる。
ただし、AMR22のように高い位置を保ったままテールエンドに伸びているわけではない。AT03の場合は車体後方へと緩やかに下るフォルムによって、サイドポッド上部の気流もまた、下部の気流と合流して後方に流れるような形になっている。
また、AMR22はサイドポッドのリーディングエッジからリアタイヤの直前部までボディーワークがワイドに膨らんだままだが、AT03は緩やかに絞り込まれながらリアへと向かっている。これに関してAT03はMCL36と近い。
フロアフロントの前方にあるターニングベーンは3枚構成ながらも、角度、長さともにアストンと似通っている。これらは前輪が巻き起こす乱流がフロア下に入るのを防ぐ役割があるものと思われる。
なおAMR22で見られたサイドポッド上部のルーバー(排熱孔)は確認できない。これは「RBPTH001」との呼称が与えられたホンダ製パワーユニットが、メルセデスのそれと比較して冷却要求が低いせいかもしれない。サイドポッドの内部にはラジエーターやインタークーラー等の冷却系が格納されている。
サスペンション
マクラーレンがフロントをプルロッド式、リアをプッシュロッド式に変更した事で注目を集めたサスペンションに関しては、フロントをプッシュロッド、リアをプルロッドと、コンベンショナルなレイアウトを踏襲した。
レッドブルRB18の構成を占うという点で注目なのはフロントではなくリアだ。アルファタウリは今季もレッドブル・アドバンスト・テクノロジーズからギアボックスと油圧系、リアサスペンションの供給を受ける。
下側のウィッシュボーン(青色)が高い位置に配置されている点は目を引くものの、先の理由ゆえに、これが実車を再現したものかどうかについてはどうしても疑いの目で見てしまう。
リアウィング、リアエンド開口部
リアウィングは2本のパイロンで支持(ツインピラー)されており、その間にDRSアクチュエーターが確認できるが、印象はフロントウイング同様にFIAモデルそのままだ。
ビームウィングはディフューザー上部に2枚構成という作りで、ディフューザーとリアタイヤとの間には水平方向のターニングベーンが取り付けられている。
また、リアエンド開口部はかなり大きく、フロア下のベンチュリートンネル出口との間にポッカリと空間が空いている。ドライバーシート上部脇からのボディーを沿う気流がここに導かれる形で、ビームウィングや排気とどのように相互作用するのか興味深い。