高地で薄まったW13の弱点とRB18の強み…ハミルトンとラッセルは対レッドブルの勝算をどう見ているのか?
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シーズン3戦を残して遂にメルセデス待望の2022年シーズン初優勝のチャンスが訪れた。F1メキシコGPでシルバーアローは長き干ばつに終止符を打てるだろうか?
メルセデスがシーズン未勝利に終わったのは2011年が最後と、実に10年以上前のことだ。今年も同じ運命に終わる可能性もあるものの、メキシコシティでのW13は今季最高潮にあるように見える。
結果としてはマックス・フェルスタッペンがポールポジションと、レッドブルに先行を許したが、ジョージ・ラッセルは2番手、ルイス・ハミルトンは3番手につけた。フェラーリは完全に蚊帳の外だった。
如何にしてメルセデスはエルマノス・ロドリゲス・サーキットで高い競争力を手に入れ、レッドブルに迫る速さを見せたのか?
ラッセルは「オースティンに持ち込んだアップデートが上手く機能している」としながらも、レッドブルに接近できたのは空気密度の薄さがW13の弱点とRB18の強みを薄めただめだろうとの見解を示した。
高地エルマノス・ロドリゲスは空気が20%以上薄く、その分だけダウンフォースが失われるが、それは同時にドラッグが減少する事をも意味している。
「チームとして進歩している事が確認できて本当にエキサイティングだけど、僕らのクルマはシーズンを通してパフォーマンスがかなり大きく変動している」とラッセルは語る。
「確かにここは僕らのマシン特性に合ったサーキットだし、標高が高いからドラッグが不利に働くこともない」
「一方でレッドブルのマシンは本当に高効率で、多くのコースで僕らよりコンマ5秒以上を稼いでいる。ストレートでね。でもその強みはここでは薄れる。それがおそらく、今日の差なんだと思う」
ハミルトンはQ1、Q2を最速で突破し、ポールに最も近い男に思われたが、Q2からQ3の終盤に向けて「幾つかのエンジントラブル」に見舞われた。
ハミルトンはトラブルの影響で「パフォーマンスが落ちた事は間違いない」としながらも、この日の予選を「今シーズンのベスト」と称してチームの努力を称えた。
一体どのようなトラブルだったのだろうか?
「コーナーの立ち上がりでパワーが落ちてしまって、最終コーナーを含む殆ど全てのコーナーでタイムを失っていたと思う。原因はよく分からない。点火系の問題のような気がするけど、チームに調べてもらうつもりだ」とハミルトンは説明した。
技術的不具合もさることながら、Q3での最初のラップがトラックリミットにより抹消されたため、ハミルトンは最終ラップに向けてバンカーがなく、限界までプッシュできないハンデを負った。
そのためハミルトンは「まだ引き出せるパフォーマンスがあった」と少し悔やむ様子を見せたが、それでも「今年追いかけ続けてきた結果、こうしてレッドブルにここまで迫れて最高だ」と語った。
ドライバー達は多かれ少なかれポール争いに絡んだ事に満足しているが、エンジニアリング・ディレクターを務めるアンドリュー・ショブリンにとって0.304秒というギャップはやや期待外れだった。
「最終的にマックスとの差は思っていた以上に大きかった」とショブリンは語った。
「最終セクターでのペースはかなり接近していたが、午後の暑いコンディションでは彼に及ばなかった」
メキシコGPはメルセデスにとって待望の今季初優勝の場となるのだろうか?
最前列2番グリッドにつくラッセルは「それなりのチャンスがあると思うし、ルイスと共に上位に付けた事で、(レッドブルとは)違う戦略を立てる事ができるかもしれない」と一定の自信を見せた。
2列目3番グリッドのハミルトンはターン1までの距離が長いことに触れて「3番手からスタートできる事になって本当に満足だ」「チャンスのターン1を掴みにいくつもりだ」と述べ、1周目の逆転劇を誓った。
最前列2台のスリップストリームを利用できるという点で、3番グリッドはこのコースでの理想的なスタートポジションとみなされている。直近の2大会のウィナーは3番グリッドだった。
ただそれでもハミルトンは決して楽観視しているわけではなく、レッドブルを打ち負かすのは楽ではないと考えている。
「路面温度やタイヤの関係で、ここでのレースは毎年厳しいものになる」とハミルトン。
「彼らはシーズンを通して速さを見せているし、今週末が僕らにとってのベストだとしても、ストレートスピードでは負けている状態だから、明日彼らに追いつくのが難しい事は間違いない」
2022年F1メキシコGP予選ではマックス・フェルスタッペン(レッドブル)がポールポジションを獲得。2番手にジョージ・ラッセル、3番手にルイス・ハミルトンと、メルセデス勢が続く結果となった。
メキシコGPの決勝レースは日本時間10月30日(日)29時にフォーメーションラップが開始され、1周4,304mのエルマノス・ロドリゲス・サーキットを17周する事でチャンピオンシップを争う。