マクラーレンのテクニカルチーフを務めるジェームス・キーとレッドブル・ホンダの最高技術責任者を務めるエイドリアン・ニューウェイ、共に2020年Courtesy Of

F1:時代の終焉か…ジェームス・キーがエイドリアン・ニューウェイに引導を渡す?

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エイドリアン・ニューウェイの時代は終わった…これからはジェームス・キーの時代だ。そう考えるのは、2014年にケータハムF1チームの代表兼CEOを務めていた元F1ドライバーのクリスチャン・アルバースだ。

フェラーリとウィリアムズに次ぐ史上3番目に多いコンストラクタータイトルを持つマクラーレンは、ホンダと共に歩んだ悲惨な3シーズンを経て、2018年にレーシングディレクターのエリック・ブーリエに代えてジル・ド・フェランを起用。2019年にはトロロッソからジェームス・キーを引き抜き、更にWECポルシェの3連覇の立役者であるアンドレアス・ザイドルをチーム代表に据えるなど、組織体制に大鉈を振った。

スクーデリア・トロロッソのフランツ・トスト代表とジェームズ・キーCourtesy Of Honda

スクーデリア・トロロッソのフランツ・トスト代表とジェームズ・キー

新風吹き込まれたウォーキングのチームは2018年にコンストラクター6位を獲得すると、2019年には4位を、そして昨年は飛躍的な進歩を遂げて2回の表彰台に上がり計202ポイントを獲得。ジェンソン・バトンとルイス・ハミルトンのラインナップで臨んだ2012年以来、8年ぶりのチーム選手権3位に返り咲いた。

2020年型「MCL35」はティム・ゴスの後任としてマクラーレンに移籍したキーが初めて手掛けたマシンだった。

とは言えザイドル代表曰く、アウトウォッシュ効果をより重視してレーキ角を拡大させた「MCL35」は前期型「MCL34」の多くが持ち越されたマシンであり、キーの代表的な仕事と呼ぶにはあまり相応しくないかもしれない。

キャリア初の表彰台を喜ぶマクラーレンのランド・ノリスとそれを祝福するカルロス・サインツ、2020年F1オーストリアGPcopyright McLaren

キャリア初の表彰台を喜ぶマクラーレンのランド・ノリスとそれを祝福するカルロス・サインツ、2020年F1オーストリアGP

競争力というものは相対的なものであり、変更点は多岐に渡る。何が躍進の理由かを特定する事は簡単な事ではないが、2006年のミッドランド、2007年のスパイカー時代にキーと共に仕事をした経験を持つアルバースは、マクラーレン復活の重要な立役者をチーフデザイナーのキーと見ている。

アルバースはオランダのFormule1とのインタビューの中で「非常にパワフルな男というわけではないが、そんな事は問題じゃない。マシンの出来が全てだ。才能のある天才だと思う。彼は今後もテクニカルディレクターとして間違いなく成長し続けるだろう」と語った。

アルバースは、当面の間はキーがマクラーレンに留まると予想する一方「気になって仕方がないね。もっと多くの予算と人員があれば、一体彼は何を成し遂げるだろうか?いろいろ考えてしまう」と述べ、かつての同僚が潤沢な予算を持つトップチームのいずれかで仕事をする姿を見たいと漏らした。

トップチームとは言わずもがな、フェラーリ、メルセデス、レッドブル・ホンダの3チームの事だ。

シモーネ・レスタはフェラーリからハースへ出向しているが、メルセデスにはジェームズ・アリソンが、そしてレッドブルにはグリッド屈指の天才デザイナー、F1界の至宝とまで称されるエイドリアン・ニューウェイがいる。

険しい表情を浮かべるレッドブル・レーシングのエイドリアン・ニューウェイ、2020年F1バルセロナテスト3日目copyright Red Bull Content Pool

険しい表情を浮かべるレッドブルのエイドリアン・ニューウェイ、2020年F1バルセロナテスト3日目

一見すると入り込む余地はないように思われれるが、アルバースはキーがレッドブルに移籍する可能性を信じている。

「エイドリアン・ニューイは既に終わりかかっている。レッドブルは将来に向けてチームの再構築をスタートさせる必要がある。私はキーがニューイに代わる存在になると見ている」とアルバースは語った。

鬼才エイドリアン・ニューウェイの終焉は、2019年のレギュレーション変更以降に囁かれ初めたもので決して目新しいものではない。

この年、F1と国際自動車連盟(FIA)はオーバーテイク促進を目標に、フロントウイングの幅と高さを増加させると共に、複雑なパーツ類が所狭しと並べられていたエンドプレートに制限を加えた。

2019年F1のレギュレーションによるフロントウイングの変化copyright Formula1 Data

2019年F1のレギュレーションによるフロントウイングの変化

2019年 F1レギュレーション

ミルトンキーンズのチームは伝統的にハイ・レーキ(車両を側方から見た際の傾斜がキツイ)コンセプトを貫いているが、2019年のルール変更以降、レッドブルのマシンは速度やヨーイング、ステアリングなどの各変数に対して脆弱で、安定的にダウンフォースを発生させることが出来ていない。

その一方、レッドブルの対極的コンセプトを掲げるメルセデスは圧勝ゲームを続けている。

ロー・レーキが最適解と考えるメルセデスは、2019年をチャンスとして更にパフォーマンスを引き上げ、2014年のV6ハイブリッド導入以降続く無敗神話を紡ぎ続けている。

ハイ・レーキと同等レベルのピークダウンフォースを得るためには、より大きなフロアが必要となる。メルセデスがロングホイールベースを採用するのはそのためだ。

2020年シーズンのレッドブル・ホンダの総獲得ポイントはメルセデスの約半分となる56%で、規約が変更された初年度の2019年は68%であった。これは2018年の87%、2017年の78%と比べると著しく低い。

ただしこれを以て”ニューウェイ時代”の終わりと決めるのは早計だ。

マクラーレン同様にレッドブルは、2018年から2019年にかけてホンダとパワーユニット供給契約を締結し、チームのムードメーカーでありグリッドの中でも高い評価を受けていたダニエル・リカルドを失う等、多くの変数が変化した。

とは言え、新規約施行から3年目を迎える今年、レッドブル・ホンダが軌道修正出来なければ、アルバースが主張するようにニューウェイ終焉説が広く認められる事になるかもしれない。