容赦ないドライバー人事… レッドブルとヘルムート・マルコを「悪役」と見做すのは誤り、とアルボン
アレックス・アルボンはレッドブル・レーシング並びにチームのモータースポーツ・アドバイザーを務めるヘルムート・マルコを「悪役」と見做すのは実態とかけ離れた誤った見方だと主張する。
ミルトンキーンズとファエンツァのチームのドライバー人事権を一手に掌握するヘルムート・マルコとレッドブルはこれまで、シーズン途中でさえ所属ドライバーを切り捨て、あるいは降格させる非情な決断を下してきた。その容赦ない様はメディアやファンから鬼の如く受け止められている。
近年では2019年のピエール・ガスリーが記憶に新しい。トロロッソで有望な活躍を示した若きフランス人ドライバーはダニエル・リカルドの後任としてシーズン開幕時にシニアチームへと引き上げられたものの、期待されていたようなマックス・フェルスタッペンに張るパフォーマンスを残す事ができず、僅か12戦で古巣への出戻りを命じられた。
レッドブルは過去にも同じように、ジュニアドライバーに成長のための十分な期間やマシンに慣れるための時間を与えていない等として批判を浴びてきた。
そんなガスリーの降格によってチャンスを得てレッドブル・レーシング入りを果たしたアルボンは、ガスリーより多くの時間的余裕を与えられたものの一貫して好成績を積み上げる事はできず、最終的に1年半を経てセルジオ・ペレスにシートを奪われる事となった。
25歳のタイ人ドライバーは今年、開発兼リザーブドライバーという裏方としての役割で以てチャンピオンシップ争いを戦ってきた。それは最前線から一歩離れた場所からチームを観察する機会を得たという事でもある。
アルボンはポッドキャスト「F1 Nation」の中で、メディアではヘルムート・マルコが「悪役」であるかのように描かれる事があるとした上で、それは「誤解」であり「基本的にはそんなことはない」と否定した。
アルボンはレッドブルがドライバーに高いハードルを課している事は認めるものの、それはタイトル争いを宿命付けられたトップチームとしての”性”であり、容赦のないドライバー人事は首脳陣が無慈悲である事を意味するわけではないと主張する。
「思うにヘルムートは世界的に見て最も悪い役割を担っているのかもしれないけど、それは(彼自身がどうであるかという事ではなく)単にレッドブル自体に由来するものなんだと思う」
「まず第一にレッドブルは勝利を目指しているチームであり、ドライバーに良い結果を期待してるって事を理解しなきゃならない」
「それは勝利なくして安堵なしというチーム文化から来るものであって、彼らはそうあるべきだと考えているんだ」
「特にレッドブル、フェラーリ、メルセデスというトップ3チームは、そんな風に(自分達とドライバー達に)期待するものだ」
「もちろん、トップチームでの経験が不足しているドライバーにとっては厳しいものがあるけど、それが現実なんだ」
レッドブルは2005年の初参戦以降、2005年、2006年、2016年、そして2019年の4回に渡ってシーズン途中でドライバーを交代している。いずれもパフォーマンスや成績を優先しての交代だ。
一方、同じ期間にメルセデスは2020年に1度、成績不振が続けばイタリアメディアの激しいバッシングが浴びせられるフェラーリは2009年に1度、シーズン途中でドライバー交代をしているが、こちらはいずれもレギュラードライバーの怪我や病気を理由とするものだった。
アルボンの後任として今季RB16Bを駆るペレスは、前任2名と同じようにフェルスタッペンに匹敵する程の成績を残せておらず、チームから大きなプレッシャーを掛けられているように思われるが、アルボンはレッドブル内部にはそうした風潮は存在しないと説明する。
「これをしなければならない。これができなければ終わりだ。荷物をまとめろ。みたいな事はないんだ」
「チームが望んでいるのは2台が揃って良い結果を出す事であって、パフォーマンスが発揮てきていないドライバーにプレッシャーをかける事はないよ。何故ならメディアがまず先に重圧を掛けてくるからね」
アルファタウリ・ホンダから今季F1デビューを飾った角田裕毅もまた、ヘルムート・マルコが厳しい指導スタイルで接してくる事を認めつつも、それは単に厳しいわけではなく、優しさの裏返しだと語っている。