ハンガリーテストに足を運んだファンに応えるロバート・クビサ
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グラフで振り返るF1ハンガリーテスト総合順位結果、シーズン後半戦の行方を占う

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ハンガロリンクで開催された2017年2回目となるF1インシーズンテストが終了した。10チームの走行距離の合計は9899km、地球4分の1周相当の距離を2日間で走った。自由なテストが許可されており、チームは空力相関やマシンバランス・ハンドリングのセットアップ、新しいエアロパーツ等を評価した。

残るは最終戦アブダビGP後に行われるポストシーズンテストのみ、今季のマシン開発に大きな影響を与える公式テストは、今回のハンガリーを以て全て終了となる。

後半戦の戦いはどう推移するのか?以下、8月1日(火)から2日間の日程で行われたテストの総合結果をグラフとともに振り返る。両日とも気温35℃路面温度50℃を超える厳しいコンディションとなった。

ドライバー別総合順位

21名のドライバーが参加、その内13人がレギュラーシートを持たない新人・若手ドライバーであった。レギュレーションでは、インシーズンテストの計4日間の内、その半分に当たる2日間で若手ドライバーを起用する事を義務付けている。

前回のシーズン中テストではメルセデスの2台が走行成績トップ2を独占していたが、今回はフェラーリ勢が上位を占め状況が逆転した。

最速ベッテルに迫ったマクラーレン、松下信治は最下位

ハンガリーテストを走ったランド・ノリス
© HondaRacingF1 初めてMCL32を走らせたノリス

全体で最速タイムを記録したのはフェラーリのセバスチャン・ベッテル、自らがハンガリーGPで叩き出したポールタイムには0.848秒届かない1分17秒124を刻んだ。0.261秒遅れて2番手にはマクラーレンの秘蔵っ子ランド・ノリスが、前評判を裏切らないパフォーマンスを見せ高い評価を得た。ジョージ・ラッセルを起用したメルセデスは10番手止まりだった。

3番手には初日にファステストを記録したフェラーリのシャルル・ルクレールがつけた。今回のパフォーマンスで、来季ザウバーシート獲得の憶測はより高まった。4番手にはマクラーレン・ホンダのストフェル・バンドーンが続いた。ホンダは新しいエンジンパーツを評価した。5番手キミ・ライコネンは「シャルルをサポートできて良かった」とベテランらしいコメントを発表した。

F1復帰を見据えるロバート・クビサはライコネンに次ぐ6番手タイムを記録、同じくルノーから出走した新人ニコラス・ラティフィを1.73秒上回った。6年ぶりの公式テストに参加したクビサは、今回のパフォーマンスには完全には満足していないと語り、来季F1復帰の可能性については明言を避けた。142周を走り身体的問題は皆無だったと笑顔を見せた。

最も遅かったのはザウバー勢、スウェーデン出身21歳グスタフ・マルジャが最速から4.104秒遅れの20番手、日本の松下信治が同4.874秒遅れの21番手であった。最下位に沈んだ松下だが、チームからは予選アタックのチャンスを与えられなかったと述べている。

結果だけを見ればフェラーリとマクラーレン・ホンダの1-2であるが、ノリスもバンドーンも共にウルトラソフトタイヤでのタイム計測であった一方、フェラーリ勢はスーパーソフトタイヤを履いていた。両コンパウンドのギャップは0.3秒程と考えられる。

日本のスーパーフォーミュラに参戦しているピエール・ガスリー(レッドブル)は15番手、ショートランは行わず空力テストとロングランに時間を費やした。

最多周回数はハースF1、フェルッチが218周

サンティノ・フェルッチ
© HaasF1Team サンティノ・フェルッチ

最も多く走ったのは、ハースF1のテストを2日間共担当したサンティノ・フェルッチで218周、これにメルセデスのジョージ・ラッセルが209周で続いた。うだるような暑さの中、2人は共に880km以上の距離を走破した。メルセデスは最終日の終盤に油圧を失うトラブルに見舞われたものの、ラッセルはロングランに集中しマイレージを稼いだ。

逆に少なかったのは、2日目の午前のみステアリングを握ったセバスチャン・ベッテル(フェラーリ)の40周。ドライバーは1日あたり平均90周を走破した。

Pos Driver Team Time Gap Laps
1 セバスチャン・ベッテル フェラーリ 1:17:124 40
2 ランド・ノリス マクラーレン 1:17:385 0.261 91
3 シャルル・ルクレール フェラーリ 1:17:746 0.622 98
4 ストフェル・バンドーン マクラーレン 1:17:834 0.710 72
5 キミ・ライコネン フェラーリ 1:17:842 0.718 60
6 ロバート・クビサ ルノー 1:18:572 1.448 142
7 バルテリ・ボッタス メルセデス 1:18:732 1.608 155
8 カルロス・サインツ トロ・ロッソ 1:18:850 1.726 68
9 ダニール・クビアト トロ・ロッソ 1:19:116 1.992 54
10 ジョージ・ラッセル メルセデス 1:19:231 2.107 209
11 ルーカス・アウアー フォース・インディア 1:19.242 2.118 103
12 ニキータ・マゼピン フォース・インディア 1:19.692 2.568 100
13 ランス・ストロール ウィリアムズ 1:19:866 2.74 138
14 ニコラス・ラティフィ ルノー 1:20:302 3.178 54
15 ピエール・ガスリー レッドブル 1:20:337 3.213 107
16 ショーン・ゲラエル トロロッソ 1:20:341 3.217 101
17 ルカ・ギオット ウィリアムズ 1:20:414 3.290 161
18 サンティノ・フェルッチ ハース 1:20:994 3.870 218
19 マックス・フェルスタッペン レッドブル 1:21:228 4.104 58
20 グスタフ・マルジャ ザウバー 1:21:503 4.104 108
21 松下信治 ザウバー 1:21:998 4.874 121

バルテリ・ボッタス(メルセデス)は18年型ピレリタイヤのテストを担当していたため参考扱い、以降のデータからはボッタスを除外して集計する。

チーム別総週回数

ランス・ストロールとルカ・ギオットの若手コンビで挑んだウィリアムズが、頭ひとつ飛び抜る299周を走り最多周回数を記録した。イタリア出身22歳のギオットは、1日としては最も多い161周もの距離を走りきった。2番手には新人2人体制で挑んだザウバーが続いた。バーレーンテストで最多周回を刻んだメルセデスは、5位に終わった。

レッドブルとマクラーレン・ホンダはトラブルに見舞われ、思ったように周回を稼げなかった。マクラーレンはウィリアムズの半分強ほどの距離に留まった。ザウバーとの契約が白紙撤回されたことで、ホンダの第2のエンジン供給先として名前が上がっているトロ・ロッソは、ルノーPU勢としては最多の223周を走り3番手につけた。

開発速度を落とすことが許されない上位勢ほどアグレッシブなパーツやセットアップを持ち込み、走行距離が限定的となる傾向が見られた。

Pos Team Lap(周) Distance(km)
1 ウィリアムズ 299 1311
2 ザウバー 229 1004
3 トロ・ロッソ 223 978
4 ハース 218 956
5 メルセデス 209 916
6 フォース・インディア 203 890
7 フェラーリ 198 868
8 ルノー 196 859
9 レッドブル 165 723
10 ホンダ 163 715

パワーユニット別総周回数

前回トップのメルセデスはパワーユニット別周回数でも陥落、フェラーリ勢とルノー勢の先行を許した。ハースとザウバー擁するフェラーリ勢が計645周を走り最多周回数を記録した。シーズン前テストでは距離を伸ばせなかったルノー勢が2番目に多くの距離を走った。

供給先がマクラーレンのみのホンダは定位置となる最下位につけた。深刻なトラブルではなかったものの、初日テストでパワーユニット周りにオイル漏れが発生していた事が影響した。前回のバーレーンテストと比べるとトップとの周回数の差は大きく縮小し、追い上げの状況が反映された形となった。

Pos Power Unit Lap(周) Distance(km)
1 フェラーリ 645 2828
2 ルノー 584 2560
3 メルセデス 556 2438
4 ホンダ 163 715

後半戦は、8月25日金曜から開催される第12戦F1ベルギーGPで幕を開ける。