2017年F1バーレーンテスト総合結果とグラフ分析:ホンダのコメントで振り返る2日間のシーズン中テスト

トップタイムを記録したルイス・ハミルトンcopyright fia.com

4月18日、19日の2日間の日程で行われたF1公式バーレーン合同テストが終了した。総合タイムと周回数のデータを中心にグラフを用いながら以下に分析、今季初となったインシーズンテストを振り返る。

バーレーンテスト総合結果

2日間とも晴天に恵まれたバーレーン・インターナショナル・サーキット。一人あたり平均77周を走行し、最多周回数はボッタスの143周、最小周回数はマクラーレン・ホンダのオリバー・ターベイの17周となった。

最速・最多周回はメルセデスのボッタス


©MercedesAMGF1

最多周回数を記録したボッタスは最得タイムもマーク。3戦を終えてフェラーリにリードされている昨年のディフェンディング・チャンピオンだが、今回のテストではしっかりとデータ取りを完了。メルセデスはロングランでのタイヤ管理に苦しんでおり、今回のテストではこの辺りの改善を主たる目的にテストプログラムを組んできたと思われる。唯一とも言えるこの弱点が克服されるのかどうか、次戦ロシアGPに注目したい。

レギュレーションで義務付けられている若手テストを実施したのは、フェラーリ、トロ・ロッソ、マクラーレン・ホンダ、フォース・インディア、ウィリアムズの5チーム。

Pos Driver Team Time Gap Laps
1 バルテリ・ボッタス メルセデス 1:31:280 143
2 ルイス・ハミルトン メルセデス 1:31:358 0.078 97
3 セバスチャン・ベッテル フェラーリ 1:31:574 0.294 64
4 カルロス・サインツ トロロッソ 1:31:884 0.604 68
5 アントニオ・ジョビナッツィ フェラーリ 1:31:984 0.704 93
6 ストフェル・バンドーン マクラーレン 1:32.108 0.828 81
7 ケビン・マグヌッセン ハース 1:32:120 0.840 88
8 エステバン・オコン フォース・インディア 1:32.142 0.862 60
9 ダニール・クビアト トロロッソ 1:32:213 0.933 61
10 ゲイリー・パフェット ウィリアムズ 1:32:253 0.973 126
11 セルゲイ・シロトキン ルノー 1:32:287 1.007 90
12 ダニエル・リカルド レッドブル 1:32:349 1.069 45
13 ロマン・グロージャン ハース 1:32:452 1.172 86
14 フェリペ・マッサ ウィリアムズ 1:32:509 1.229 55
15 ピエール・ガスリー レッドブル 1:32:568 1.288 65
16 ニコ・ヒュルケンベルグ ルノー 1:33:624 2.344 73
17 ランス・ストロール ウィリアムズ 1:33:729 2.449 35
18 ショーン・ゲレール トロロッソ 1:33:885 2.605 78
19 アルフォンソ・セリス フォース・インディア 1:33.939 2.659 71
20 パスカル・ウェーレイン ザウバー 1:34:462 3.182 91
21 マーカス・エリクソン ザウバー 1:34:550 3.270 106
22 セルジオ・ペレス フォース・インディア 1:35:015 3.735 70
23 オリバー・ターベイ マクラーレン 1:35.011 3.731 17

2016年のGP2王者にして今季スーパーフォーミュラに参戦するピエール・ガスリーは、2日目にレッドブルのテストを担当。「素晴らしい経験だったよ。慌ただしくプログラムを消化しなきゃいけなかったから大変だったけど、今年のF1マシンには本当に驚いた」とテストを振り返ってコメントを発表した。ガスリーは今週末のスーパーフォーミュラ開幕戦を心から楽しみにしている、とも語り、テストを終えると同時に日本へとんぼ返りした。

チーム別総週回数

最も多くの周回を重ねたのはメルセデス。240周を走破し1,296kmを走りきった。2番手はウィリアムズ、3番手にはトロ・ロッソが続き、2日目に電気系統のトラブルに見舞われたフェラーリは、下から3番目に走行の少ないチームとなった。

Pos Team Lap(周) Distance(km)
1 メルセデス 240 1296
2 ウィリアムズ 216 1166
3 トロ・ロッソ 207 1118
4 フォース・インディア 201 1085
5 ザウバー 197 1064
6 ハース 174 778
7 ルノー 163 880
8 フェラーリ 157 848
9 レッドブル 110 594
10 ホンダ 98 529

1日目のテストをほぼ棒に振ってしまったマクラーレン・ホンダはさて置き、レッドブルがブービー賞。初日午後にはパワーユニットのトラブル、2日目には機械的な問題が発生してしまったのが大きく響いた形となった。レッドブルは今回のテストで、空力のテストとロングランを重視したプログラムを用意していた。

攻撃的なセットアップを試したマクラーレン・ホンダ

マクラーレン・ホンダは1日目のテスト開始早々にERSの水漏れが発生、その日は僅か17周の走行に留まったものの、2日は午前9時のテスト開始から順調に走行を重ね、午前中だけで56周を走破、一日を通してコンスタントに走行を行い計81周を計上した。

今回のテストでは、車体のセットアップとハンドリング設定の組み合わせ、空力データのシミュレーション、パワーユニットのドライバビリティと信頼性、の3つの柱を重点にテストプログラムが組まれており、2日目は予定されていた全てのプログラムを消化している。


©fia.com 初日を担当したオリバー・ターベイ

2日目のテスト終了後、マクラーレンのレースディレクターを務めるエリック・ブーリエは「今日は、信頼性の面ですべてのものが完ぺきに機能した」と語り、今までよりも攻撃的なセットアップで走行し膨大なデータを収集することができたと述べた。

ホンダF1のチーフエンジニアを務める中村聡によると、MGU-Hに関する一連の問題ついてはまだ分析中であるとしながらも、テストでは暫定的な対策を施したという。2日目の走行で対策の方向性が明確になってきたとし、最悪の時は脱しつつあるとの考えを示している。また、かねてから問題が指摘されているドライバビリティや振動の問題に関しても、セッティングの調整により進歩が確認された。

ロシアGPまでは1週間しかないだけに、次戦で大幅な改善があるかと言えば現実的には難しいであろうが、少なくともテスト最終日をポジティブに終えることができたのは朗報である。

パワーユニット別総周回数

Pos Power Unit Lap(周) Distance(km)
1 メルセデス 657 3547
2 フェラーリ 528 2690
3 ルノー 480 2592
4 ホンダ 98 529

パワーユニット別の総周回数ではメルセデスが657周を走りトップに、フェラーリとルノーはほぼ同程度の走行距離を稼いだ。1チームへの独占供給となっているホンダは、メルセデスの7分の1程度の走行距離に甘んじた。ホンダ以外のサプライヤーは各3チームずつにパワーユニットを供給している。

走行距離の多さは、パワーユニットの信頼性と改善効率に比例してくるため、ホンダとしては一刻も早く第二チームへの供給を行いたいところである。現実味帯びる”ザウバー・ホンダF1チーム”の発表が期待されているが、もしこの新しいチームが来季からF1を走ることになるのであれば、遅くとも第5戦スペインGPまでには公にされる事になるだろう。パワーユニットサプライヤーには、来季のPU供給先を発表する義務があり、デッドラインが設けられている。

あるいは、フォース・インディアの株式の半分近くを所有しているチームオーナーのビジェイ・マリヤが逮捕されたこともあり、ホンダとフォース・インディアの動向に注目してみるのも面白いだろう。

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