鬼才ニューウェイの側近マーシャルのマクラーレン移籍はレッドブルF1の弱体化に繋がるか?
空力の鬼才エイドリアン・ニューウェイの側近として、数々のチャンピオンマシンの開発に多大な貢献を果たしてきたチーフ・エンジニアリング・オフィサーを務めるロブ・マーシャルのマクラーレン移籍は、レッドブルにとって一体どれほどの打撃となるのだろうか?
ジェームス・キーの離脱を含む技術チームの大規模再編に取り組んでいた英国ウォーキングのチームは第8戦スペインGPを前に、エンジニアリング&デザイン部門のテクニカルディレクターとしてマーシャルと契約した事を明らかにした。ガーデニング休暇を経て2024年1月1日付で業務を開始する。
マーシャルはカーディフ大学で機械工学を専攻した後、ロールス・ロイスの航空宇宙産業部門で社会人生活をスタートさせたが、1994年にレース・エンジニアとしてベネトン・フォーミュラに転職。モータースポーツに転向した。
出世街道を歩むマーシャルはルノー買収以降もエンストンのチームに籍を置き、最終的にメカニカルデザイン責任者に就任。2005年には独創的なマスダンパー・システムの開発に関与し、フェルナンド・アロンソとルノーに初のドライバーズ&コンストラクターズ・タイトルをもたらした。
2006年にレッドブルに移籍すると、チーフデザイナーという立場でニューウェイと協業。2010~2013年にかけてセバスチャン・ベッテルに4度の世界タイトルをもたらしたチャンピオンマシンの開発に貢献すると、2016年にエンジニアリング部門のトップに昇進した。
レッドブルはグランドエフェクトカー時代のF1で支配的な強さを誇っている。技術部門の要であるマーシャルのマクラーレン入りはレッドブルの弱体化に繋がるのだろうか? クリスチャン・ホーナー代表によると、その可能性は低そうだ。
マーシャルについてホーナーは、2009年から2013年にかけてのKERS搭載車両の開発においてギアボックス内にバッテリーを格納するなど、メカニカル面で多大な貢献を果たしてきた事に触れて「レッドブル・レーシングを作り上げる上で重要な役割を担ってきた人物だ」と語った。
ただ、その一方で「彼はチーム内で重要な役割を果たしてきたが、近年は他のプロジェクトに移っており、F1のメインストリームには立っていない」とも述べ、離脱の影響が限定的である事を仄めかした。
それでもなお、これほどのキープレイヤーをライバルチームに取られるのはレッドブルとしても避けたいところだろう。ただホーナーは長年の戦友であるマーシャルの意向を尊重した。
ホーナーは「17年を経て彼はマクラーレンからとびっきりのオファーを貰った。契約期間は残っていたが、彼はF1に戻りたいと熱望していた。だから彼と合意し、ザク(ブラウン、マクラーレンCEO)と契約交渉を行ったんだ」と述べ、「彼はいいヤツなんだ」と付け加えた。
直接的なダメージがないとしても、間接的にそうであるかはまた別の問題だ。
55歳のイギリス人エンジニアについてザク・ブラウンは「エイドリアン・ニューウェイはロブについて素晴らしいことしか言わない。エイドリアンは誰もが知る人物だ。そんな彼はロブに太鼓判を押してくれた」と語った。
近年、レッドブルを離れた重鎮はマーシャルに限らない。
空力部門のトップを務めていたダン・ファローズは昨年の4月にアストンマーチンに移籍した。また今年3月には、元チーフ・オペレーション・オフィサーのジェイン・プールがシニア・アドバイザーとしてメルセデスに加わった。