
ホンダ新スペックPU、「最大の弱点」にメス…その一方で浮上する“新たな懸念”
アストンマーティンとタッグを組むホンダ・レーシング(HRC)は今週末の2026年F1第12戦オランダGPで、今季唯一の大規模アップデートを施した新型パワーユニット(PU)を初めて実戦投入する。
HRCの折原伸太郎トラックサイド・ゼネラルマネージャー兼チーフエンジニアは、現行PUの「最大の弱点」を出力性能と位置づけ、新スペックではその改善を最優先したと明かした。一方、燃焼特性そのものが変わることで、今季序盤にドライバーを悩ませたドライバビリティの問題が再び浮上する可能性があることを示唆した。
アストンマーティンとのワークス提携初年度となる今季、ホンダは信頼性とパフォーマンスの両面で苦戦。開幕戦から11戦で計10度のリタイヤを余儀なくされ、コンストラクターズ選手権では10位に沈むなど、非常に厳しいシーズンを送ってきた。
一方、直近のハンガリーGPでは車体側に今季初の大規模アップグレードが投入され、中団上位争いに接近するなど、ようやく競争力の改善が見え始めた。その流れの中で、今度はPU側が大きな進化を迎える。
性能向上の裏にドライバビリティの懸念
Courtesy Of Honda Motor Co., Ltd
メディアの取材に応じる折原伸太郎(ホンダ・レーシング)、2026年6月28日(日) F1オーストリアGP決勝(レッドブル・リンク)
折原TGMはオランダのF1専門メディア『RacingNews365』とのインタビューで、スペック2の開発方針を次のように説明した。
「我々の最大の弱点は出力性能です。そのため、新しいスペックではエンジン性能の向上に重点を置きました。加えて、その燃焼特性に合わせてドライバビリティを最適化しています」
スペック2による具体的な出力向上幅は明かされていないが、折原TGMは社内目標を達成したとしたうえで、その成果に自信を示している。具体的な変更内容としては、燃焼速度を速めるためのプレチャンバーの変更、ピストン形状の見直し、フリクション低減を狙った潤滑系統の一部修正などが挙げられている。
だが今回のアップデートでは堅実な性能向上が期待できる反面、燃焼特性が従来仕様から変化することで、これまで一定の改善が見られたドライバビリティが再び懸念材料として浮上する可能性がある。今季序盤、アストンマーティン・ホンダの大きなアキレス腱となったのが、まさにこの領域だった。
特にエネルギー回生と密接に関わるエンジンブレーキの一貫性不足、さらにはダウンシフトおよびアップシフト時の不可解なエンジンのレスポンスは、フェルナンド・アロンソとランス・ストロールの双方から強い不満を招いた経緯がある。
copyright FORMULA 1
18番手を記録した予選を経てインタビューに応じるフェルナンド・アロンソ(アストンマーティン・ホンダ)、2026年5月2日(土) F1マイアミGP(マイアミ・インターナショナル・オートドローム)
折原TGMは「新型エンジンの燃焼特性は従来とは異なるため、ドライバビリティについては改めて最適化する必要があります」と説明した。一方で、「すでに多くの学びを得ており、ゼロから始めるわけではありません」とも語り、過去の改善プロセスが基盤になると強調した。
「まずパフォーマンスの改善に焦点を置き、そのうえでレース週末を通して継続的にドライバビリティの改善に取り組んでいきます」
なお折原TGMはハンガロリンクで、シーズン序盤のドライバビリティに関する問題の主因はMGU-Hの廃止にあったと説明している。MGU-Hは排気ガスを利用してエネルギーを回生する装置で、ターボの応答性を補う役割も担っていた。
双方向フィードバック体制で再最適化へ
Courtesy Of Honda Motor Co., Ltd
HRC UKの壁面に掲げられた「HONDA」のロゴ
スペック2の投入は、制御領域を含めた再調整プロセスの始まりを告げることになる。折原TGMは「ドライバーからの要求や指摘にどう対応するか、そして開発プログラムのどこに重点を置くか、それらのバランスを取ることが重要です」と語る。
ファクトリーでは来季に向けた新型のエンジンの開発が続けられる一方、現場ではドライバーのフィードバックをもとにスペック2の最適化が行われる。
点火タイミング、ラムダ(空燃比)、燃料噴射の制御、さらにはエネルギー・マネジメントのマッピングなど、ドライバビリティに直結するパラメーターは数多い。ホンダは、現場と開発拠点の双方向フィードバック体制で改善に取り組んでいく意向だ。
折原TGMは「ファクトリー側とも継続してコミュニケーションを取っています。ドライバーがラップタイムを縮めるうえで重要な項目があれば、それをファクトリーに伝え、ファクトリー側がその問題を解決するために対応します」と説明した。