ホンダF1:フランスGPでPUアップグレードを予定も、本命の大規模改良エンジンはイタリアGPまでお預け
レッドブル・レーシングのモータースポーツ・アドバイザーを務めるヘルムート・マルコが、21日に開幕を迎えるF1第8戦フランスGPで、ホンダが今季2度目のアップグレードを投入すると明らかにした。だが、それは序列を逆転させるほどの大規模なものではなく、本命は9月の第14戦イタリアGPに持ち込まれるようだ。
ホンダF1は、高速のバクー市街地コースで開催された第4戦アゼルバイジャンGPで、ライバルに先駆けて今季2世代目の”スペック2″エンジンを投入。レッドブルとトロロッソの計4台全てが、レギュレーションで定められた年間上限数に後一つと迫っている。
1.6リッターV6ハイブリッド・ターボ導入6年目の今年は、年間3基までの内燃エンジン=ICEの使用が許可されているが、これを越える交換を実施した場合はグリッド降格ペナルティが科せられる。そのため、仏ポール・リカールと伊モンツァの両方で新エンジンの封を切る場合、ホンダ勢はエンジン全開率80%の欧州最終ラウンドで後方スタートを切る事になる。
© Pirelli / カレンダー最大のエンジン全開率を誇る超高速のモンツァ・サーキットでは、最高速度は時速357kmにも達する
ヘルムート・マルコはハイブリッド時代幕開けを告げた2014年当初から、ルノーのF1パワーユニットはメルセデスよりも80馬力劣ると語り、搭載エンジンの馬力に不満を述べていた。その後レッドブルはパワフルなエンジンを求め続け、今季より日本のエンジンサプライヤーと契約を交わした。
レッドブルはホンダとメルセデスの現在の状況をどのように評価しているのだろうか?こう問われたヘルムート・マルコは、独speedweekとのインタビューの中で「まず第一に、我々はホンダの信頼性に非常に満足している」と切り出し、次のように続けた。
「パワーに関しては遅れを取っているが、ポール・リカールで新型エンジンが導入される。ただし、これは必ずしも大きなステップアップではない。大幅に改善されたエンジンはモンツァに持ち込まれる事になっている」
「ホンダは追い上げてきているが、それがどの程度かは聞かないで欲しい。日本では昼夜を問わずテストが行われている」
© circuitpaulricard / 青と赤のコントラストが美しいポール・リカール・サーキット
ホンダF1の田辺豊治テクニカル・ディレクターはモントリオールの週末に、具体的な数字を口にすることは拒否しながらも、依然としてメルセデスやフェラーリとの間にギャップがある事を認め「次のステップのエンジン導入の時期を検討中」とコメント。ただし、具体的な時期についてはレッドブルとスクーデリア・トロロッソの両チームが関わる話だとして、言及を避けていた。レッドブル側からのリークの背景には、ホンダにプレッシャーをかける意図があるのかもしれない。
ホンダはパワーユニットの開発段階を表すために、”スペック〇〇”というラベリングでこれを区別している。既にスペック2が実戦投入されている事から、次に投入される最新型エンジンがスペック3となる見込みだが、ヘルムート・マルコの言うようにアップデートが小幅な性能改善に留まるものであるならば、フランスで持ち込まれるのが「スペック2.5」、そしてイタリアで投入されるのが「スペック3」となる可能性がある。
ホンダエンジン勢は、今季初のパワーサーキット戦となった第7戦カナダGPでマックス・フェルスタッペンが最上位5位を獲得するも、本人は「例え3番グリッドからスタートしていたとしても、5位止まりだったと思う」と語り、シルバーアローと跳馬とは勝負にならなかったとの認識を示した。
リザルト的にはホンダ勢4台のうち3台が入賞しており体裁は悪くないものの、ライバルメーカーのルノーはスペック2エンジンをフル稼働させ、ワークスのダニエル・リカルドとニコ・ヒュルケンベルグが6位と7位でダブルポイントを獲得。パワーセンシティビティが高いジル・ビルヌーブ・サーキットでホンダ以上の存在感を示していた。