2018年F1ドイツGPの木曜記者会見に出席したトロロッソ・ホンダのブレンドン・ハートレー
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ブレンドン・ハートレー、降格の”犠牲”を強いるホンダのPUアップグレードに懸念なし「性能が向上するなら歓迎」

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トロロッソ・ホンダのブレンドン・ハートレーは、エンジン性能が向上するのであればグリッド降格の対象となる新しいパワーユニット(PU)アップグレードの投入を歓迎するとして、来季レッドブル・ホンダの成功のために今年の自身のチャンピオンシップが”犠牲”になる事はやむを得ないとの認識を示した。

レッドブルのアドバイザーを務めるヘルムート・マルコは先日、来季パートナーであるホンダのエンジン開発を促進するために、姉妹チームのスクーデリア・トロロッソが今シーズンの選手権で犠牲を強いられる事を容認。僅かでもパワーの向上に寄与する開発であれば、ホンダはグリッド降格を科せられてでもレースウィークに持ち込むべきだと主張した。

この発言を受けてレッドブルのチーム代表を務めるクリスチャン・ホーナーは、長期的な観点に立てばレッドブルの利益はトロロッソの利益と一致するとして、ファエンツァのチームが一時的に代償を支払う可能性に言及。事実上、マルコと同様に年を隔てての”戦略的エンジン交換”を容認する考えを明らかにした。

ハートレーは内燃機関(ICE)・ターボチャージャー(TC)・MGU-Hの主要3コンポーネントの使用数が6基に、チームメイトのピエール・ガスリーも同4基に達しており、10戦を終えた段階でレギュレーションで許された年間上限3基を上回る数のエンジンを使用。これ以上の投入は即座に降格の対象となる。

原則として、選手権争いに大きな影響を与えかねないグリッド降格を容認し開発のためだけにエンジン交換を実施する事はあり得ない。コンストラクターズの順位一つで数億円以上もの分配金差が生じる事を考えれば当然と言える。だがレッドブル・リンク、シルバーストンと続く高速2連戦で明らかになった通り、ホンダエンジンはフェラーリやメルセデスに対して大きく遅れを取っており、来季レッドブルとの提携に向けて開発のピッチを上げる事が求められている。

レッドブル・ホンダ初年度のドライバーはマックス・フェルスタッペンとダニエル・リカルドの現コンビが継続される見通しであるが、”戦略的”という名目で今年後半にグリッド降格の損害をこうむる可能性があるのは彼らではなくトロロッソのルーキー達。だが、F1ドイツGP木曜記者会見に出席したハートレーは、最新PUの投入によって性能向上のメリットが得られるのであれば、進んで降格を受け入れるスタンスである事を明らかにした。

「アップグレードは常に計画されているし、その内の一つは既に投入された。他に幾つかが予定されている事は知ってるよ。(話題となっているアップグレードの投入に対して)プレッシャーを感じてはいないし、パフォーマンスが得られるならもちろん歓迎さ。トロロッソとホンダは一つのチームとして共に仕事に取り組み体系的に作業を進めており、全てが正しい方向に進んでる」

トロロッソ・ホンダは10戦を消化した現時点で19ポイントを獲得。コンストラクターズ8位につけているが、ホンダのスペック2エンジンが投入された第7戦カナダGP以降は4戦連続で1台がリタイヤ。ノーポイントのレースが続いてる。だが、ハートレーはホンダとの提携はシーズン当初から順調に機能しており、それは今も変わらないと主張する。

「バルセロナテストで初めてコースに出た瞬間から凄くポジティブだったよ。数多くの周回をこなし非常に好ましい形でパートナーシップをスタートさせる事ができた。トロロッソの全てのメンバーは、ホンダとの提携を良いチャンスと捉えてると思う。僕としても、トロロッソとホンダとのパートナーシップはポジティブな面しかないと考えてるしね」

イタリアに本拠地を置くトロロッソと英国拠点のレッドブルは共にオーストリアの大手飲料メーカー「レッドブル」が所有するF1チームだが、現在のF1ではチーム間のマシン売買を禁じており、車両的には両チームはほぼ別のチームである。

「同じ出前サービスを使ってはいるけど、トロロッソとレッドブルは基本的には全く別のチームなんだ。もちろん幾つかの点でクロスオーバーするところはある。パドックの他の何人かのドライバー達と同じ様にマックス(フェルスタッペン)とダニエル(リカルド)とは良い友達だしね」

「情報という観点で言えば、正確な量は知らないけど両チームの間で共有されているインフォメーションはさほど多くはないと思うよ。トロロッソはレッドブルと違うチームだし、マシン開発は風洞があるバイチェスターとファエンツァで全てトロロッソが行ってるしね」

度重なるアクシデントやエンジントラブルが一因となり、ハートレーは期待されていたようなシーズンを過ごせていない。昨年の第17戦アメリカGPでデビューして以降14戦をこなしたが、その内5回はリタイヤ。入賞は今年の第4戦アゼルバイジャンGPの10位のみとなっている。

「ホッケンハイムリンクでの久しぶりのレースを楽しみにしてるよ。森の中を駆け抜けるレイアウトだった昔とは違うけど、ここには歴史がありF1にふさわしいトラックだと思ってる。そうだね、僕は好きだよ」

「ここ数戦は不運なレースが続いてるけど、僕としては驚くほど楽観視してる。過去数ヶ月の悪いリザルトの大部分は僕のコントロール外で起きた事が原因だった。今も自分に力強さを感じているし闘志もある。今週末に向けて準備も万全だ」

「これまで見てきたように、3強チームの直後にあたる7番手から最後尾までは極めてタイトなバトルになってる。クルマやマシン開発からコンマ2秒を絞り出せればかなりのポイントが稼げるし、もしそれが出来なければポイントが得られないような状況だと言える。ミッドフィールドは大接戦だから、僕らはこれからの2日間で全てをまとめ上げ最高のゲームをしなきゃならない」

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