ルイス・ハミルトン「単なるレーシングドライバーとして記憶されたくない」
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メルセデスのルイス・ハミルトンは史上最高のF1ドライバーの一人としての名声を得るだけでなく、人種差別を含む社会問題に貢献した人物として人々に記憶されたいと考えている。
36歳のイギリス人ドライバーは71年に及ぶF1史において誰よりも多くのレースで勝利し、表彰台に立ち、そしてポールポジションを獲得してきた。だが曰く、目指しているのはレーシングドライバーとしての栄誉ではない。
ハミルトンは、人々が将来的にレーシングドライバーとしての自身を記憶に留めてくれれば「万事良し」とする一方で、多様性と平等性を掲げた自身のコース外の活動によって世界が変わる事を願っている。
ハミルトンはBBC Sportとのインタビューの中で「単にレーシングドライバーとして記憶されたいと思った事は一度もない」と語った。
「良いドライバーとして記憶に残ればそれはそれで万事良しだけど、僕がここで過ごす時間は、人々に影響を与え、そして手助けするためにあるのだと思っている」
ハミルトンは2020年に米国ミネソタ州ミネアポリスで起きた白人警官によるジョージ・フロイド殺害事件を機に、各グランプリ前のセレモニーで膝を立てるなど「#BlackLivesMatter」キャンペーンの先頭に立ってきた。
英国ロンドンのハイド・パークにて行われた「Black Lives Matter」のデモに参加し、F1トスカーナGPでは、同じように警察官に銃で撃たれて死亡した26歳の救急救命士の事件に抗議するメッセージ「ブレオナ・テイラーを殺した警官を逮捕せよ」をプリントしたTシャツを着用した。
そして「陳腐な決まり文句を並べ、見せかけのポーズを取る時代」は終わったとして、その後、具体的な活動に着手。モータスポーツ界における多様性確保を目指すべく英国王立工学アカデミーと共同で”ハミルトン・コミッション”を立ち上げ、個人資金30億円を投じて慈善団体「Mission 44」設立した。
米タイム誌は2020年の「世界で最も影響力のある100人」にハミルトンを選出した。
ハミルトンは「僕らには皆、同じ血が流れており、誰もが平等な機会を欲している。今のモータースポーツ業界では4万人が雇用されているが、黒人の割合は僅か1%に過ぎない」と語る。
「僕がこのコミッションを立ち上げたのは、何が障害になっているのかを実際に突き止め、解消すべく取り組むためだ」
「黒人コミュニティは言わずもがな僕のバックグラウンドだ。だからハミルトン・コミッションではそれに焦点を当てたんだ」
7度のF1ワールドチャンピオンは世界タイトルの獲得数で史上最多のミハエル・シューマッハに並ぶ。今年、マックス・フェルスタッペンの挑戦を退ければその勝ち星は前人未到の8度に及ぶ事になるが、機会均等と平等・多様を目指す取り組みはまだ始まったばかりだ。