ゲルハルト・ベルガー
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アイルトン・セナに匹敵するドライバーはルイス・ハミルトンただ一人、とベルガー

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元F1ドライバーのゲルハルト・ベルガーは、F1の歴史において神格的な立ち位置を築いているアイルトン・セナと肩を並べるドライバーは、ルイス・ハミルトンしかいないと考えている。

今年の8月で還暦を迎えるベルガーは、1990年にアラン・プロストの後任としてマクラーレン・ホンダに移籍。92年までの3シーズンに渡って、アイルトン・セナのチームメイトとして務め親交を深めてきた。

「いつも皆にこう聞かれるんだ。”このドライバーはセナと比較してどうだ?”ってね」とベルガー。「その質問に対して私は毎回、”アイルトンに匹敵するドライバーなんて見たことないよ”って答えてきた。でも、ルイスは私が初めてアイルトンと同じ水準にいると思ったドライバーなんだ」

1000グランプリを誇る長きF1の歴史において、アイルトン・セナは最も偉大なドライバーだと考えられている。1994年の第3戦サンマリノGPでのクラッシュによって亡き人となったセナは、出走161戦、優勝41回、ポールポジション64回を数え、1988年、90年、91年の3シーズンで世界タイトルを獲得した。

アイルトン・セナ
creativeCommonsKarpouzi、アイルトン・セナ

セナを「自身のヒーロー」と公言するルイス・ハミルトンは、出走232戦、優勝75回、ポールポジション84回を数え、計5回のドライバーズチャンピオンシップを制しており、記録としてはセナを上回っている。だがベルガーは、”偉大”である事を計るための物差しは、統計ではないと語る。

「私にとっては自分が目で見て感じる事の方が大切だ。これまでにネルソン・ピケやニキ・ラウダ、アラン・プロストやミハエル・シューマッハといった偉大なチャンピオンが何人も誕生したが、彼らを唯一上回っていたのがアイルトンだった」

「そして今、私はルイスが彼と同じリーグにいると見ている」

ベルガーは何故ハミルトンをセナと同格に見ているのだろうか? 誰に対しても明るく振る舞い、人望の厚いオーストリア人は、ミスの少なさと忍耐強さ、そして圧倒的な速さを理由に上げた。

「彼は上手くゲームを支配しており、現時点では無敵と言える」とベルガー。「確かに、彼には最高のマシンとベストなエンジンがあるが、彼自身もまた最高であり、現時点での最高のドライバーだと言える」

ベルガーはハミルトンをシューマッハやプロスト以上だと絶賛するものの、カリスマ性やパーソナリティを考慮すると、セナが歴史上最も偉大なドライバーだと考えている。

「直接比較すると、やはりアイルトンがこのゲームの勝者だろう。何故ならば、アイルトンは魅力的な男であり個性的なドライバーだったからだ。それに、命を落とした人物は、我々の心の中で伝説として生き続け、特別な存在になるものだ」

「だが、パフォーマンスの点に限って言えば、ルイスはポールポジションを量産し、レースで勝ち続けている。そう、アイルトンと同じようにね」

メルセデスのルイス・ハミルトン、2018年F1バーレーンGP表彰台にて
© Mercedes-Benz Grand Prix Ltd.

V6ハイブリッド時代を圧倒するメルセデスのマシンを持つハミルトンは、最年少ワールドチャンピオン記録や歴代最多ポールポジション記録など、あらゆる歴史を塗り替えてきた。残されたレコードは、ミハエル・シューマッハが持つ7度のタイトルと91回という勝利数のみだ。

現行のF1レギュレーションは2020年まで有効であり、シルバーアローは少なくとも後2年間は、チャンピオンシップ争いの本命に数えられる可能性が高い。ベルガーは、ハミルトンがシューマッハの記録を打ち破る可能性は十分にあると考えている。

「特に大きな問題がなく、この勢いが続けば、ルイスは今後2、3年はチャンピオンシップを争う立場に留まり続けるだろう。そうなれば当然、そのチャンスはある」

7冠のシューマッハは2013年のスキー事故で頭部に深刻な外傷を負い、現在もその容態は明らかにされていない。ベルガーは、シューマッハの記録が歴史から消えてしまう可能性がある点について、複雑な心境を覗かせる。

「あれほど悲劇的な事があったわけだから、ミハエルの成功が守られて欲しいという思いはある。彼の記録がなくなってしまうのは本当に寂しい」とベルガー。「ただそういった事を除外して考えれば、ルイス・ハミルトンは私が見てきた中で、本当にスペシャルなF1ドライバーだ」