ニキータ・マゼピン、FIA-F2選手権 ARTグランプリ時代
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ハースF1、火消しに動く…不適切動画でニキータ・マゼピンに批判集中 シート喪失の憶測広がる

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“不適切動画”を巡り、ニキータ・マゼピンに対する批判やシート喪失の憶測が広がる中、ハースF1チームは23日(水)、21歳のロシア人ドライバーが来季F1デビューする事を改めて再確認するとの旨の声明を発表した。

ハースが2021年シーズンのドライバーラインナップとしてマゼピン起用を発表したその1週間後、ソーシャルネットワーク上に1本の動画が公開された。移動中の車内にてマゼピン本人が撮影したその映像には、自身が女性の胸を触る様子が映っており「彼女は最高だ」とのコメントが添えられていた。女性は中指を立て、その腕を払いのけようとしていた。

映像に映っていたと思しきアンドレア・ダルヴァルなる女性は後に、SNSを通して悪ふざけだったと釈明したが、セクハラ被害者が”ノー”と言い難い事は広く知られる事であり、これがセクハラであったのか性的暴行であったのか、それとも悪戯であったのかは、中立な第三者による調査・検証なくしては何も断定できず、現時点では明らかになっていない。

いずれにせよハースやF1、国際自動車連盟(FIA)は一件を非常に深刻に受け止め、マゼピン本人が謝罪するに至ったものの、SNS上では「#WeSayNoToMazepin」なるハッシュタグが流行。マゼピンの来季F1デビューに反対する声が高まっている。

また、テストドライバーを務めるピエトロ・フィッティパルディとマゼピンのSNSのプロフィールが相次いで変更された事などから、マゼピンに代わってフィッティパルディが来季シートを獲得するのではといった憶測も広がっている。

こうした状況の中、ハースは23日に次の声明を発表し、マゼピンが来年、ミック・シューマッハと共にF1デビューを果たす事を改めて強調した。火消しに動いたものと見られる。

「我々ハースF1チームはここに、2021年シーズンのFIA-F1世界選手権のドライバーとしてニキータ・マゼピンとミック・シューマッハを起用する事を再確認したい」

「ニキータ・マゼピンの行動に関する以前の声明(12月9日)で発表した通り、この件は現在チーム内部で処理されている。これ以上コメントする事はない」

マゼピン解雇のシナリオは非現実であり、ハースがこうした声明を発表する事に意外性はない。

具体的な金額は不明であるものの、ハースはマゼピンとの契約によって少なくとも二桁億円以上の資金を手にするものと見られる。マゼピンの父ドミトリーはロシア・ベレズニキに本拠地を置く多国籍化学企業、ウラルカリ社の創業者兼筆頭株主で、莫大な資産を背景に息子のレース活動を金銭面で全面的にバックアップしてきた。

更に契約は複数年に及ぶ大きなものであり、仮にマゼピンを解雇すればハースは資金繰り計画の再考を強いられるだけでなく、F1参戦継続の雲行きすら危ぶまれる。ビッグスポンサーの新規獲得なくしてマゼピンのシート喪失は起こり得ないと言えよう。

ただし、たとえ彼を解雇せずに幕引きとするにせよ、事が公になり大きな問題となっている以上、透明性は欠かせない。ハースは経緯を明らかにした上で、マゼピンに対してどのような処分を科したのかを明らかにすべきであり、F1とFIAも傍観者としての姿勢を改めるべきと言える。