”フランケンシュタイン”の如きアプグレ版メルセデスW14、大手術の内容とその成果…前向きな感触を掴んだハミルトン
メルセデスは伝統のモンテカルロで、サイドポッド、フロア、フロントサスペンションを一新した待望のアップグレード・パッケージを投入。ジョージ・ラッセルはF1モナコGPの初日プラクティスで終始、苦戦し続けたが、ルイス・ハミルトンは上位に顔を覗かせポジティブな感触を掴んだ。
「モナコは本当に独特なサーキットだから、アップグレードや変更を評価する場所ではない」とラッセルが指摘するように、その成果を測るには来週末のスペインGPを待つ必要があるものの、FP1で3番手、FP2で6番手をマークしたハミルトンはW14の改善を感じ取っている。
「ドライブしていて本当に楽しかったし、素晴らしい1日になった。アップグレードを評価する段階にはないけど、クルマは全体的にいい感じだった」とハミルトンは語る。
「望んでいたほどトップに接近できなかったのは少し残念だけど、改善を実感したのは確かだ。この調子で少しずつタイムを削っていって、クルマからもっと絞り出せるものがあるかどうか確認していきたい」
「これが前進に向けたプラットフォームである事を願うよ」
エンジニアリング・ディレクターを務めるアンドリュー・ショブリンもまた「ここでのラップタイムからアップデートを評価するのは難しいが、現時点で目にしているものから判断する限り、全てが期待通りに機能していると思う」と語った。
悪しき流れを変えるための礎となる事が期待されている今回の大規模改良だが、見方を変えれば妥協の産物とも言える。
いわゆる”ゼロポッド”は消滅し、サイドポッドは水平方向に張り出したトレンディーなフォルムに変貌したが、突貫工事であるがゆえにポッド内部に格納したいサイドインパクト構造は今も相変わらずウィングレットとして取り残されており、アンダーカットは限定的だ。
元F1ドライバーのマーティン・ブランドルは「クルマというものは完全なコンセプトに基づいて作られる。その点において懸念がある」として、アップグレード版のW14を「フランケンシュタインのようなもの」と評した。
外観上の最大の変化はサイドポッドだが、サイドポッドはグランドエフェクトカーにおいてパフォーマンスを生み出すエリアではない。
メルセデスは新型フロアから最大限のダウンフォースを引き出すべく、姿勢制御のためにフロント・サスペンションを再設計した。これはレッドブルからヒントを得たようなレイアウトとなっている。
度々タイムシートの上位に名前を並べたハミルトンとは対照的に、ラッセルはFP1でトップから1.6秒遅れの15番手、FP2では同コンマ7秒遅れの12番手に留まった。メルセデスは進むべき方向性を見定めるべく、ラッセルとハミルトンに異なるセットアップを与えていた。
ラッセルは「クルマの素地が良い事は分かっている」「レッドブルは少しばかり別のリーグにいる」として、今週末の目標はフェラーリとアストンマーチンと争うことだと説明した。
初日のハミルトンを見る限り、非現実的な目標であるとは思えないものの、メルセデスは予選に弱く決勝に強いところがある。
絶対に抜けないとの枕詞があるかどうかはさておき、モンテカルロ市街地コースは兎に角、オーバーテイクが難しいため、予選結果がレース結果に大きな影響を与える。
対照的にマクラーレンやハース、アルピーヌはしばしば予選の方が速く、決勝で後退する傾向がある。今週末がそうなれば、メルセデスは失望とともにモナコを後にするかもしれない。
ラッセルはもしそうなった場合「翌週にクルマをグローバルに再評価しなければならなくなる」と指摘した。