鈴鹿サーキットのS字区間を駆け抜けるF1マシン、2022年10月8日F1日本GP FP3
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史上初の春開催、鈴鹿F1日本GPに与え得る影響…”鉄板”戦略に変化の可能性

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昨年大会から半年余りを経て、FIA-F1世界選手権が早くも鈴鹿サーキットに戻ってくる。例年はシーズン後半の9月・10月に行われてきたが、2024年のF1日本GPは史上初めて4月に開催される。

シーズン序盤の4月に日本でグランプリが開催されるのはこれが初めてではない。第1回パシフィックGPは1994年4月17日にTIサーキット英田(現:岡山国際サーキット)で開催された。ただし「日本GP」が桜咲く春に開催されるのは今回が初めてだ。

世界屈指のテクニカルコース、鈴鹿は、クルマとドライバーのみならずタイヤにも過酷な試練を突きつける。

路面の粗さから摩耗性が高く、S字や130R等の高速コーナーでは地面に対して水平方向の強烈な力がタイヤを襲う。タイヤの温度は上昇し、発生した熱がゴムの組成を変化させる事で性能が低下。いわゆるサーマル・デグラデーションによってパフォーマンスが低下する。

鈴鹿サーキットのS字を駆け抜けるマックス・フェルスタッペン(レッドブル)、2023年9月23日F1日本GP予選Courtesy Of Red Bull Content Pool

鈴鹿サーキットのS字を駆け抜けるマックス・フェルスタッペン(レッドブル)、2023年9月23日F1日本GP予選

そんなタイヤに厳しい鈴鹿に向けて公式タイヤサプライヤーのピレリは、最もハードなC1~C3コンパウンドをチョイスした。これは昨年大会と同じ選択だ。

鈴鹿では例年、2回のピットストップを行う2ストッパーがタイヤ戦略の主流となる傾向だが、春先の気候により今年は異例の1ストッパーが見られるかもしれない。

ピレリは、タイヤマネジメントに長けたドライバーであれば、コンディションによっては1ストップ戦略があり得ると見ている。

暑さが残る秋口とは異なり、4月5~7日の今週末は最高気温が20度以下程度と低い予想だ。ミディアム、ミディアム、ハードと繋いでマックス・フェルスタッペン(レッドブル)が優勝した昨年大会は気温27.1~29.2℃、路面温度36.2~43.9℃のコンディションだった。

鈴鹿サーキットの最終シケインで僚友ルイス・ハミルトンに先行するジョージ・ラッセル(メルセデス)、2023年F1日本GPCourtesy Of Pirelli & C. S.p.A.

鈴鹿サーキットの最終シケインで僚友ルイス・ハミルトンに先行するジョージ・ラッセル(メルセデス)、2023年F1日本GP

ブリヂストンの撤退に伴い、ピレリがF1にタイヤを独占供給し始めた2011年以降、1ストップ戦略で鈴鹿を制した例は2大会のみだ。

2017年は今や懐かしい”スーパーソフト”とソフトによる1ストッパーが主流となり、ルイス・ハミルトン(メルセデス)がトップチェッカーを受けた。

路面温度が40℃を超える過酷なコンディションながらも、序盤、立て続けにセーフティーカー(SC)とバーチャル・セーフティーカー(VSC)が導入された事でデグラデーションが僅かに軽減され、オープニングスティントが長くなった事が一因だった。

翌2018年もほぼ全車が1ストッパーを採用したが、以降は再びマルチストップがウィニング戦略となっている。

路面温度が低い場合、デグラデーションが低減される一方、タイヤを履き替えた直後のアウトラップやSC解除後のラップでタイヤを適切な温度に上げられるかどうかが大きな鍵となる。

これは同時に、鈴鹿でポジションを上げるための限られた有効手段であるアンダーカットが機能しにくくなる事を意味する。

チームのストラテジストが例年と異なる課題に対処しなければならないのは確かだ。

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