FIA、改定「ドライビング基準ガイドライン」作成…2025年にF1含む全カテゴリで施行…レース裁定・若手訓練に
国際自動車連盟(FIA)はベテランドライバーらの協力を得て、「草の根レベルから世界選手権」に至るまで、あらゆるレースに適用される新たな「ドライビング基準ガイドライン(Driving Standards Guidelines)」を作成した。
これは若手ドライバーのキャリア教育や、レース裁定に係るオフィシャルやスチュワードを支援するための初の世界標準で、世界モータースポーツ評議会(WMSC)の承認を経た後、2025年1月1日よりFIA国際競技規約の付録Lに統合され、運用される事になる。
F1や世界耐久選手権(WEC)、フォーミュラE世界選手権など、数々のチャンピオンシップを統括するFIAは過去1年間に渡って、経験豊富な現役および元ドライバーで構成されるFIAドライバー委員会および、オフィシャル、スチュワードらの協力を経て、本文書の作成に向けて分析・協議を行ってきた。
本ガイドラインはディフェンスやオーバーテイクなどのドライビング方法から、トラックリミット、黄旗、セーフティーカーによる再スタートの手順まで、幅広い多くの重要なトピックをカバーしており、初めて国際ライセンスを取得する若手ドライバーのトレーニングにも活用される予定だ。
2022年4月に発行された現行のガイドラインはA4サイズで1枚半ほどの些細なもので、6項目のみが掲載されている。更新版とは異なり、FIA国際競技規約に含まれるものではなく、文字通りのガイドラインという位置づけだ。
本文書の作成に協力したと見られる2度のF1ワールドチャンピオン、フェルナンド・アロンソ(アストンマーチン)は「モータースポーツ全体でドライビング基準を推進する事は非常に重要だ」と述べ、その意義を強調する。
「23年に渡るレースキャリアを通じて僕は、様々なカテゴリーとコースでレースをしてきた。バトルに際しては熾烈な競争を繰り広げるレーサー同士の理解とリスペクトが必要だ。アタックやディフェンスの方法、ルールの解釈における一貫性が求められる」
「現役世代だけでなく、将来的にプロを目指して技術を学んでいる若手レーサーのためにも、僕はクリーンなドライビングを推進したいと考えている。誰もがレースを楽しみつつも、それをフェアに行う責任がある。FIAの新しいドライバー基準ガイドラインは重要なものになるだろう」
元F1ドライバーでアロンソのかつてのチームメイト、4度のWECチャンピオンであるブレンドン・ハートレー(トヨタ)も、カテゴリーを横断する共通ガイドラインの存在が重要だと考えている。
「耐久レースドライバーの多くはWECに加え、世界中の様々なシリーズやレースに参戦しているから、普遍的なガイドラインの存在は特に重要だ」とハートレーは語る。
「それによって僕らはどこでレースをしても、ドライバー間で同じリスペクトを期待できるだけでなく、レースの方向性やスチュワードシップ、トラックリミットなどに関して同じアプローチを期待することができる」
FIAが統括するチャンピオンシップは世界選手権だけで7つ、全て含めると39に及ぶ。
ドライバー委員会の委員長を務めるローナン・モーガンは「FIAは世界中の様々な選手権を統括しているため、それらすべてを一貫して監視することは複雑なタスクとなり得る。新しいドライビング基準ガイドラインの背後にある目的は、これらの選手権のプロトコルを合理化し、標準化することにより、オフィシャルによる決定の基礎を形成することにある」と語る。
「我々はオーバーテイクを奨励しつつも危険なディフェンスを抑制し、これまで混乱を引き起こしていた可能性のある”グレーエリア”を最小限に抑えたいと考えている」