メルセデスのルイス・ハミルトンとレッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペン、2021年F1アブダビGPとサウジアラビアGPにて
Courtesy Of Daimler AG / Red Bull Content Pool

F1、ポイント剥奪をチラつかせてフェルスタッペンとハミルトンに警告…物議のアブダビ最終決着に先手

  • Published:

FIAレースディレクターを務めるマイケル・マシはマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)とルイス・ハミルトン(メルセデス)によるタイトル最終決戦を前に、チーム及びドライバーに対してスポーツマンシップに則ったレースをするよう強調した。

違反したと見なされれば、ポイントの剥奪やレース出場停止などの重い処分が下される可能性がある。

もとよりFIA国際スポーティング・コードはドライバーとチームに公正なレースを義務付けているものの、繰り返される物議のインシデントを経てマシは、敢えてこれを繰り返した。

F1第22戦アブダビGPの開幕を翌日に控えた9日(木)、マシはイベントノートの中で「FIAインターナショナル・スポーティング・コードに詳述されている各種要件に留意すること。特に、以下の条文について注意を喚起する」と記した。

「第9条15項1 ー 競技参加者は、当該競技参加者に代わって競技あるいは選手権に、直接的あるいは間接的に、参加あるいは関連のサービスを提供する、特にその従業員、ドライバー、メカニック、コンサルタント、サービス提供者または同乗者を含む一切の者、並びに競技参加者が指定エリアに立ち入りを許可した一全ての者の行為または不作為に対し責任を有する事」

「第12条2項1、規則違反 ー 競技における公平性の原則の侵害、スポーツマンシップに反する行為、スポーツ倫理に反する方法で競技結果に影響を与えようとする行為」

「第12条4項5 ー FIAが管轄する全ての選手権、カップ、チャレンジ、トロフィー、またはシリーズについて、スチュワードは以下の罰則を決定できる。1つまたは複数の競技会に対する資格停止、選手権/カップ/チャレンジ/トロフィー/シリーズのポイント剥奪」

「第12条4項5a条 ー 例外的な場合を除き、ポイントの剥奪は競技参加者とドライバーとを分けて行うことはできない」

無論、フェルスタッペンのリアにハミルトンが衝突した前戦まで、こういった内容が強調される事はなかった。第9条15項1と第12条4項5a条は「ドライバーをきちんと管理しろ」との意味合いで、特にレッドブル・ホンダとメルセデスに向けたものと言える。

マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)のリアに衝突するルイス・ハミルトン(メルセデス)、2021年12月5日F1サウジアラビアGP決勝レースにてCourtesy Of Red Bull Content Pool

マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)のリアに衝突するルイス・ハミルトン(メルセデス)、2021年12月5日F1サウジアラビアGP決勝レースにて

両者はヤス・マリーナ・サーキットでのタイトル決定戦を前に同一ポイントで並んだ。これはエマーソン・フィッティパルディがクレイ・レガツォーニを55点対52点で下した1974年シーズン以来、実に47年ぶりの事だ。

フェルスタッペンとハミルトンは前戦サウジアラビアGPを含めて今年、3回に渡ってクラッシュを演じており、ヤス・マリーナ・サーキットでの日曜のシーズンフィナーレが事故による結末を迎えるのではとの懸念が高まっている。

ハミルトンの8勝に対してフェルスタッペンは9勝を挙げているため、仮に両者クラッシュでアブダビGPをリタイヤすればフェルスタッペンがタイトルを獲得する事になる。

物議を醸すようなコース上の衝突に関してはこれまで同様、F1アブダビGPの4名のレーススチュワードが裁定を下す事になる。マシが個別の決定に関与することはない。

ワールドチャンピオンシップを争う最終戦でのタイトルランナー達によるインシデントには幾つかの前例がある。

1997年シーズンでは、最終戦ヨーロッパGPでミハエル・シューマッハがジャック・ビルヌーブに突っ込んだ。シューマッハはこのドライビングが裏目に出てリタイアを喫し、ビルヌーブが逆転のタイトルに輝いた。FIAはシューマッハをドライバーズランキングから除外した。

また1994年は最終戦オーストラリアGPでデイモン・ヒルと衝突したシューマッハがリードを守りきりタイトルを獲得しているが、これに関してはペナルティや処分が科される事はなかった。

1990年の最終日本GPではアイルトン・セナとアラン・プロストがオープニングラップのターン1で相討ちを喫した。スチュワードはレーシングアクシデントとして処理し、セナが2度目のタイトルを獲得した。セナは後に、ターン1に向けて先行されたらプロストに突っ込むつもりだったと認めている。

F1アブダビGP特集