F1:人工知能を使ったタイヤパフォーマンス分析が国際映像に登場、その仕組みとは?
F1メキシコGP、否、正確には鈴鹿サーキットで行われたF1日本GPで、タイヤに関する新たなTVグラフィックが初登場した。「タイヤパフォーマンス・グラフィック」と呼ばれるこの新たな仕組みは、どの様に導き出されたものなのだろうか?
F1はAWSと提携して「F1 Insights」と呼ばれる様々な分析情報をリアルタイムで計算。これを、レース映像と合わせて、テレビ及びストリーミング視聴者に提供している。分析にはディープラーニングが用いられており、過去65年間に蓄積されたレースデータが活用されている。
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これまでは、ピットストップによる順位変動の確率の予想や、エイペックスでのコーナリング速度を提供してきたが、今回新たなインサイトが加わった。これは、特定マシンのタイヤパフォーマンスを、4輪毎にリアルタイムでパーセンテージ表示するもので、新品タイヤを100%として、性能が劣化するにつれて0%へと変化する。
F1の説明によると、この分析データは、タイミングデータ(ドライバー毎のラップタイムやセクタータイム、およびミニセクタータイム等)及びテレメトリーデータの分析並びに、タイヤの性能劣化に伴うラップタイムの損失推定値と、各タイヤへの負荷を計算して生成される。
タイヤ公式サプライヤーのピレリは、この新たな取り組みに関与しておらず、日本GPへの試験導入に際しては通知すらされていなかったようで、その正確性に疑問を投げかけるとともに不満をもらしていた。それもあってか、メキシコGPの決勝レースを前に、F1から説明がなされた。
表示されるパーセント値は、当該スティントの中で、どれだけのタイヤパフォーマンスを使い果たしたのかの推定値であり、タイヤの実際の摩耗レベルを表示するものではないとの事だ。つまり、走行によって実際にタイヤからすり減ったラバーの量とは無関係であり、デグラデーションによるタイヤパフォーマンスの推定損失値だという。
F1側は、この新たな仕組みの導入について、ピットストップタイミングの予測や、バトル中の2台のマシンのパフォーマンス差の原因分析、また、そのバトルの勝敗予想など、視聴者に対して視聴の視点を増やす取り組みの一環だと説明する。
この新しいデータは各放送局にも直接配信されており、番組の解説者が、視聴者への解説のための指標として利用する事も可能となっている。
開発段階の映像