F1、2026年持続可能燃料への移行で求められる火災対策の見直し、市販車市場に還元するための仕組み
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持続可能な第2・3世代のバイオ燃料をベースとした新燃料への切り替えは環境負荷の軽減を目指す取り組みの一環だが、これと同時にF1には、ドライバーの装備やマシンに使われる素材など、火災安全対策の見直しが求められている。
2030年までのネット・ゼロ・カーボンを目指してF1は昨年、化石燃料90%と再生可能な「先進的サスティナブル・エタノール」を10%をブレンドした「E10」燃料を採用した。新規定が導入される2026年以降は100%持続可能な燃料に移行する。
引火性が高い新燃料
2026年導入予定の新燃料は従来のガソリン燃料と比較して引火性が高く、事故が発生した場合に火災がどの程度急速に広まるかについて影響を及ぼす可能性がある。
英「Autosport」によるとF1の最高技術責任者を務めるパット・シモンズは、エタノールの含有割合が増える事で、燃料の切り替えに際して安全基準を再考する必要がある事を認めた。
また、今年2月に行われたプレシーズンテストの際に、全F1チームにシールやゴムを供給している業者との間で、材料の適合性について話し合った事を明らかにした。
高濃度のバイオ燃料はシーリングやガスケット、ホースなどに劣化を生じるさせる可能性がある。そのため、材質や表面処理の変更が必要となる場合がある。
可燃性燃料を積んで時速300kmオーバーでレースをするF1と火災事故は切っても切り離せない関係にある。
古くは1976年のドイツGPでフェラーリのニキ・ラウダがクラッシュを喫してマシンが炎上。救出されたもののラウダは重度の火傷を負った。また1982年のカナダGPではリカルド・パレッティが火災事故の末に23歳という若さでこの世を去った。
最近では2020年のバーレーンGPでハースのロマン・グロージャンがスタート直後にバリアに激突。マシンが二つに割れて漏れた燃料に引火した事で燃え盛る炎に包まれた。幸いにも手の甲に火傷を負ったのみで事なきを得たが、火災事故の危険性が改めてクローズアップされた。
コスト高騰に繋がる開発を防ぐ仕組み
2026年導入の新燃料は「ドロップイン」燃料として開発が進められており、F1界を超えて環境負荷の軽減やエネルギー安全保障の向上に寄与することが期待されている。
ドロップイン燃料とは、既存のエンジンやインフラストラクチャーに対応する代替燃料のことを指す。化学的に似た構造や性質を持つため、燃料供給インフラやエンジンの改変なしに世界中の殆ど全ての市販車で使用する事ができる。
ただし市場に還元するためには、コスト高騰に繋がるような開発の道へと突き進まぬようチームをコントロールする事が必要となる。そのためのアプローチの一つが質量からエネルギー量へのシフトだ。
現在はレース中の燃料流量が1時間あたり100kgに制限されているが、2026年以降はエネルギー量を基準とした300MJ/hに制限される。
シモンズは「エネルギーに制限がかけられている状況であれば、そのエネルギーをパワーに変換する事が重要な要素となる。そうなれば極端な方向に駆り立てられる事はないだろう」と語った。