ジョージ・ラッセル(メルセデス)、ピエール・ガスリー(アルピーヌ)、ニック・デ・フリース(アルファタウリ)、ニコ・ヒュルケンベルグ(ハース)、ローガン・サージェント(ウィリアムズ)、2023年3月30日F1オーストラリアGP木曜記者会見にて
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話題の”F1フリー走行削減方針”、全面的に支持するドライバー達

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F1のステファノ・ドメニカリCEOが、一つの週末に行われるプラクティスを将来的に削減する考えを示している事についてドライバー達は、3回ものフリー走行は不要だとして支持する立場を明確にした。

ポルトガルでのMotoGP開幕戦でチェッカーフラッグを振った事以上に「私はフリー走行セッション中止の信奉者だ。あれはエンジニアにとっては有益だが、世間一般には好まれない」とのドメニカリの発言は大きな注目を集めた。

モハメド・ベン・スレイエムFIA会長とF1のステファノ・ドメニカリCEO、2022年FIA-F1世界選手権第14戦ベルギーGPにてCourtesy Of Alfa Romeo Racing

モハメド・ベン・スレイエムFIA会長とF1のステファノ・ドメニカリCEO、2022年FIA-F1世界選手権第14戦ベルギーGPにて

2008年から2014年4月までスクーデリア・フェラーリのチーム代表を務めた経験を持つ57歳のイタリア人マネージャーは以前からプラクティスの削減に前向きで、フリー走行でのポイント付与や、FP3をリバースグリッド制のスプリントレースに置き換えるなどのアイデアを披露してきた。

F1は従来型のフリー走行を1回に抑え、他の2回のプラクティス・セッションをファンにとってより魅力的なものに改定する事を目指している。

3回ものプラクティスは不要

F1第3戦オーストラリアGPの開幕を翌日に控えた3月30日(木)、GPDA(F1ドライバー組合)のディレクターを務めるジョージ・ラッセル(メルセデス)は、週末に3回のプラクティスは必要だと思うかと問われると「答えはノーだ」と返した。

「もちろん、練習を重ねれば重ねるほどスピードを上げられるし、クルマにも慣れるけど、F1がF3やF2の3倍の練習量をこなすというのは、どうかと思う。彼らの方こそ、もっと多くのプラクティスに取り組むべきだ」

「僕は当初、スプリントレースには賛成じゃなかったんだけど、実際にやってみると…2年間で6回、9回、それ以上だっけ? 結構楽しんでるんだよね。それにエンターテイメントという観点で言っても、金曜に変化を起こすのは誰にとっても不可欠なことだと思う」

アルバート・パーク・サーキットのパドックを歩くジョージ・ラッセル(メルセデス)、2023年3月30日F1オーストラリアGPCourtesy Of Mercedes-Benz Grand Prix Ltd.

アルバート・パーク・サーキットのパドックを歩くジョージ・ラッセル(メルセデス)、2023年3月30日F1オーストラリアGP

隣に座っていたピエール・ガスリー(アルピーヌ)は「僕もジョージに賛成だ」と述べ、「少なくともドライビングという点で言えば、3回も必要ないのは間違いない」と続けた。

「クルマの細部にまで突き詰めてマシンバランスを調整できるのは好ましい事ではあるけど、概して言えば、1回、最大でも2回あれば十分だと思う」

「自分たちがやっていることに対して常に疑問を持ち、どうすればフォーマットをより良いものに改善できるかを検討する事は良いことだと思う」

一つのレースウィークに90分間のフリー走行を3回こなす必要があった時代を知るベテランドライバー達と同様に、ルーキーのニック・デ・フリース(アルファタウリ)も賛成の立場を明らかにした。

「ピエールやジョージと同じ見解だ。僕から言えるのは、何某かの変更というのは誰にとっても平等だということだ。僕らは実際、ジュニアシリーズを通してプラクティスが1回だけという状況に慣れているし、もっと少なくてもいいと思う」

同じく新人のローガン・サージェント(ウィリアムズ)も「3回というのは間違いなく多い。特に週末が始まるや否や、すぐにリスクを取って走らなきゃならないF2からの昇格組にとってはね」と意見した。

「ルーキー的には2回だろうが3回だろうが気にしないけど、3回必要だとは思わない。まあ、3というのは好きな数字ではあるんだけどね!」

ニコ・ヒュルケンベルグ(ハース)は「今は十分な量のプラクティスをこなしているけど、ジョージが言ったように、F2の時は30分のみで予選に投げ込まれる状況だった。でも本当に楽しかった。個人的な好みと意見の問題だね。時間をかけて議論していけば良いんじゃないかな」と付け加えた。

伝統的プラクティスの全廃止には否定的

一方でラッセルは、現行方式のプラクティスを全て廃止とし、その代わりに何らかのポイントが与えられるセッションに置き換えるというアイデアに対しては否定的な見解を示した。

昨今のF1ではテストが厳しく制限されている。インシーズンテストは廃止され、シーズン中に行われるタイヤテストではピレリの指示に従って走らなければならず、新しいパーツを試したりする事はできない。

ラッセルは、フリー走行という場は「先を見据えてクルマを調整するため」の時間であり、ドライバー的にもチーム的にも「1回のセッションで十分」だと主張した。

ただ、その1回に関しては伝統的なフォーマットを継続すべきであるとして「ポイントを含めた何らかの報酬が与えられるものになると、新しいことを試す可能性が低くなる」と付け加えた。

アルバート・パーク・サーキットに集まったファンと交流するジョージ・ラッセル(メルセデス)、2023年3月30日F1オーストラリアGPCourtesy Of Mercedes-Benz Grand Prix Ltd.

アルバート・パーク・サーキットに集まったファンと交流するジョージ・ラッセル(メルセデス)、2023年3月30日F1オーストラリアGP

現地入り遅延を提案するラッセル

週末のレースフォーマットと同じように議論の的になっているのは拡大の一途を辿るF1カレンダーだ。中国GPのキャンセルがなければ今年は24戦が行われる計画だった。

F1は国内競技ではなく世界を転戦するグローバルサーカスだ。ドライバー以上にチームスタッフの負担は大きい。

「完璧なウィークエンド」についてのアイデアを求められたラッセルは「スプリントが採用される週末最初のセッションを少し遅らせるというのはどうだろう」と提案した。

「F1では2~3千人もの人々が世界中を旅している。最初のセッションを金曜の午後から夕方にかけて行えば、チームのプレッシャーを軽減できるんじゃないかと思うんだ」

「金曜の午前に最初のセッションが行われる場合、木曜には現地に入っていなきゃならない。そうなると多くのレースでは、水曜に飛行機に乗る必要がある」

「1年間に24回のレースが行われる場合、約1ヶ月は自宅のベッドで寝れるって事だ。これは、このサーカスに関わる全ての人にとって凄く大きなことだと思う」

隣に座っていたガスリーは「ジョージのアイデアは素晴らしいと思う。流石、GPDAのディレクターだね!」と支持した。

ドメニカリはドライバーの意見に耳を傾ける事に対して「信じられないほどにオープン」だとしてラッセルは、カレンダーの持続可能性に関しては多くの議論が行われており、今後数年以内に改善されるはずだと語った。

アルピーヌのジャック・ドゥーハンとプロサーファーのジャッキー・ロビンソン、ピエール・ガスリーとエステバン・オコン、2023年3月Courtesy Of Alpine Racing

アルピーヌのジャック・ドゥーハンとプロサーファーのジャッキー・ロビンソン、ピエール・ガスリーとエステバン・オコン、2023年3月

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