F1のCEOを務めるステファノ・ドメニカリ、2021年5月22日F1モナコGP
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F1:注目集めるドメニカリのプラクティス走行「中止」発言

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F1のステファノ・ドメニカリCEOが発した衝撃的な一言が注目を集めている。2023年のMotoGP開幕戦、ポルトガルGPでチェッカーフラッグを振った57歳のイタリア人マネージャーは、フリー走行の廃止を検討しているとも受け取れるコメントを口にした。

ポルトガルで地元局「Sport TV」のインタビューに応じたドメニカリは「私はフリー走行セッション中止の信奉者だ。あれはエンジニアにとっては有益だが、世間一般には好まれない」と語った。

レースウィークに3回に渡って行われているF1の伝統的なプラクティスは廃止されるのだろうか? 否、昨年9月の伊紙「コリエーレ・デラ・セラ」での発言を踏まえると、その真意は別のところにあると言える。

予てからフリー走行は1回に留めたいと口にしていたドメニカリは昨秋、週末の全てのセッションは選手権争いに直接影響を及ぼす必要があると主張し、フリー走行でのポイント付与や、FP3をリバースグリッド制のスプリントレースに置き換えるなどのアイデアを披露した。

リバティメディア体制下でF1は週末のフォーマット改革を推し進めてきた。フリー走行は90分から60分へと削減され、スプリントレースが導入された。背景にあるのは予選と決勝を除くセッション、つまりフリー走行の視聴率および観客数の低さにある。

F1が目指しているのは従来型のフリー走行を1回に抑え、他の2回のプラクティス・セッションをファンにとってより魅力的なものに改定することにある。

そもそもプラクティスの全廃止はインシーズンテストが姿を消した今のF1において、そのDNAを揺るがしかねないシナリオであり、ドメニカリの脳裏にない事はほとんど明らかだ。

F1はドライバーによる腕の競い合いという以上に、各チームの技術開発競争の場という側面が強い。テストが禁止される中、フリー走行はチームにとってマシン開発、タイヤ、セットアップのための貴重なデータ収集の場として機能している。

誤解を恐れずに言えば、テスト、プラクティスが完全に姿を消した場合、F1は存続し得ない。無論、現実を完全にシミュレートできる技術が生まれれば、この限りではないだろうが、少なくとも今はそのような状況にない。