ガレージ内でエンジニアと話をするスクーデリア・フェラーリのセバスチャン・ベッテルcopyright Ferrari S.p.A.

絶えぬ引退と移籍の噂…セバスチャン・ベッテルが不振から脱却できない理由

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V8時代に4連覇を成し遂げ、レッドブルと共にF1を支配したセバスチャン・ベッテルは今年、新入りのシャルル・ルクレールが才能を開花させ2勝を挙げる一方、13ヶ月もの長きに渡って勝ち星から見放されており、引退や移籍の噂が絶えない。

ルクレールはベルギーGPでキャリア初勝利を挙げると、その1週間後にはフェラーリの地元イタリアGPで、マラネロに2010年以来の優勝をもたらした。対照的にベッテルは、レース序盤にアスカリシケインでスピンを喫し、コース復帰の際にランス・ストロールと接触。危険行為とみなされ、罰則の中で最も重いストップ&ゴー・ペナルティを科された上に、ペナルティポイントの加算によって出走停止処分まで後3ポイントに迫っている。

成績不振の原因として、プレッシャーによる精神面の課題を挙げる者も多いが、4度のF1ワールドチャンピオンは既にキャリア末期だと主張する者もいる。ベッテルはこのままルーキーに敗れ続け、再び表彰台の頂点に立つことなくヘルメットを置くことになるのだろうか?

復調のためにはチーム側の関与が必要

「メンタル面が原因だとは思わない。もっと技術的な問題だ」と語るのは元F1ドライバーのファン・パブロ・モントーヤだ。

かつて暴れん坊と呼ばれたコロンビア人ドライバーは、ドイツメディアとのインタビューの中で「ベッテルを責めても問題は何も解決しない」と主張。「問題の原因は”理解”に関する事で、何が起きているのかを見つけ出せる人物を側に置くことが必要だ」と語り、チーム側の積極的な関与なくしてベッテルのカムバックは難しいとの考えを示した。

フェラーリ黄金期の立役者であるロス・ブラウンもモントーヤの意見に賛同。「ベッテルがF1を代表する偉大なドライバーである事は疑いないが、この厳しい状況の中でカムバックするためにはチームのサポートが必要」と語り、マシン開発と並行してマッティア・ビノット代表が最優先で対処すべき課題だと主張した。

インディーカーに参戦しているファン・パブロ・モントーヤ
© Indycar、ファン・パブロ・モントーヤ

ベッテルのミスが立て続けに起こっている理由についてモントーヤは「ルクレールは上手く順応しているけど、思うにベッテルは、クルマや今年のタイヤが好みじゃないんだろう。ベッテルはクルマを快適に感じていないにも関わらず、ルクレールと同じように速く走る事を求められるため、ミスを犯す事になる。ミスというものは、クルマに満足できていない状態で攻めた場合に発生するものだ」と語った。

ベッテルが対処しあぐねている今季型F1マシン「SF90」の特性とは何なのだろうか?

リアエンドが不安定なSF90

ベッテルがマシンの扱いに手こずるシーズンは今年で2度目だ。2014年には、新しく導入されたV6ハイブリッド・ターボエンジンの特性と、ブレーキ・バイ・ワイヤーによるブレーキフィールに苦しみ、チームに新たに加入したダニエル・リカルドの後塵を拝した。今年の問題はエアロバランスだが、5年前と同じように新しいチームメイト相手に遅れを取っている。

2010年ぶりのモンツァでの優勝に歓喜するスクーデリア・フェラーリの面々
© Ferrari S.p.A.、2010年ぶりのモンツァでの優勝に歓喜するスクーデリアの面々。ベッテルはガッツポーズのルクレールの脇で下を向く

前半戦の中で度々「リアがないように感じる」と語っている通り、ベッテルはリアエンドに安定性を求めるタイプだ。その一方でルクレールは、リアがルーズ気味の方が自信を持って全開までプッシュできる。

フェラーリはSF90のアンダーステア特性を改善すべく、フロント側のダウンフォース増強のための開発を続けているが、これはベッテルにとって苦痛を増やす悩みのタネにしかならない。

ベッテルが不安定なリアを嫌っている事は、レースペースの変化からも読み取れる。今年のベッテルは、レース序盤でのペースではルクレールに勝るものの、燃料が少なくなる終盤はペースが落ちる傾向にある。燃料が減りクルマが予選のコンディションに近づくとリアが滑り始めるためだ。ベッテルはリアが安定している状態ではSF90をコントロール出来ているのだ。

変更すべきはスタイルではなく車体

ベッテルはこの苦境を乗り越えるために何をすべきなのか?

ドライビングスタイルを変えるのも一つの手だが、ベッテルは既に確立されたドライバーだ。モントーヤは個人的な経験から「マシンのドライブ方法を変えても速く走れるが、以前ほどの速さには達しないし、変える事自体が複雑すぎて難しい」と説明。実際、RB15へと適応すべくドライビングスタイルを変えたピエール・ガスリーは、徐々に状況を好転させたものの、チームメイトには全く及ばずトロロッソへと出戻る事となった。

モントーヤは「ドライビングスタイルを変えるのではなく、マシンを自分の運転スタイルに合わせ込む方が良い」と語り、積極的にエンジニアリングチームに働きかけ、自分好みのマシンへと調整していくようアドバイスした。