
メルセデス:ノリスの追撃、2-3を諦めてボッタスとハミルトンの順位を入れ替えた理由
メルセデスAMGペトロナスF1チームはF1第9戦オーストリアGP決勝レースでバルテリ・ボッタスが2位表彰台に上がる活躍を示した一方、ルイス・ハミルトンはマシンダメージの影響もあり4位フィニッシュに留まった。
マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)の背中が遥か彼方に消え去った後に迎えた第2スティント。メルセデス陣営はハードタイヤに履き替えたボッタスに、ターン10の縁石を避けて走行するよう指示を飛ばした。ハミルトンがそこでダメージを負った可能性があると判断したためだ。
2番手を走行していたハミルトンはレース中盤になると失速。チームメイトやランド・ノリス(マクラーレン)の追撃を受け始めた。そして予定していた1ストップをやり抜く事ができずに2ストップへと切り替え、優勝したフェルスタッペンから46秒落ちの4位という結果に終わった。
ハミルトンのマシンダメージについてエンジニアリング・ディレクターを務めるアンドリュー・ショブリンは、ピットに入る直前の29周目の終わりに発生したものとの見方を示し、損傷によるダウンフォース低下に伴うタイムロスを1周あたり「0.6~0.7秒」と試算した。
ただ問題はペースダウンというよりも、むしろタイヤへのダメージの方が深刻だったようだ。
当初メルセデスはノリスの追撃を受けるボッタスに対して手負いのハミルトンを追い抜くなと指示していたものの、ハミルトンのタイヤが最後まで保たないと判断すると一転。チームオーダーを出して52周目に両者の順位を入れ替えた。
ノリスの前に突き出されたハミルトンはその後、ノリスに対して為す術もなくオーバーテイクを許し、4番手に後退した後にフリーストップを利用して2回目のタイヤ交換に動いた。
なおこのチームオーダーに関してトト・ウォルフ代表は、当初はボッタスをハミルトンの後ろに待機させるつもりであった事を認めた上で、ハミルトンとノリスとの間にボッタスを置いておいても2-3番手を守り抜くことは「不可能」と判断したのだと説明した。
ショブリンによるとダウンフォースの損失はリア側に偏っていたとの事で、マシンバランスが悪化した結果、リアタイヤばかりがスライドする状況に陥っていたようだ。
ここで、ハードタイヤに履き替えた後のハミルトンとボッタスのアウトラップを除く最初の4周、つまり各々の第2スティントの2周目から5周目までのラップタイムを見てみる。
ラップ | ハミルトン | ボッタス |
---|---|---|
2 | 1:09.194 | 1:09.325 |
3 | 1:09.235 | 1:08.689 |
4 | 1:09.171 | 1:08.730 |
5 | 1:09.269 | 1:09.017 |
ハミルトンの平均ラップタイムは1分9秒217、対するボッタスは1分8秒940と、両者の差は0.277秒だった。
次にハミルトンが2回目のピットストップに入る直前の4周、第2スティントの18周目からの4周分のラップタイムを見てみる。
ラップ | ハミルトン | ボッタス |
---|---|---|
18 | 1:09.046 | 1:09.412 |
19 | 1:09.023 | 1:08.833 |
20 | 1:09.043 | 1:08.962 |
21 | 1:10.286 | 1:08.776 |
ハミルトンの平均ラップタイムは1分9秒349で、対するボッタスは1分8秒995と、両者の差は0.353秒だった。なおハミルトンと順位を入れ替えた後もボッタスのペースはさほど変わっていない。
確かにデグラデーションはハミルトンの方が大きい。一方でノンダメージのボッタスと手負いのハミルトンのギャップは精々0.35秒程で、ショブリンの言う「0.6秒」には至っていない。残りの0.25秒は両者の潜在的なペース差という事なのだろうか。
いずれにしてもハミルトン本人はダウンフォース不足を実感していたようで「リアウイング(のフラップ)を2、3段階下げたような感じだった」と明かし、ダメージがなければ2位は確実だったと主張した。
この日のレースを終えて、ドライバーズ・ランキングにおけるフェルスタッペンとハミルトンとのポイント差は優勝1回分以上に相当する32点に達した。また、コンストラクターズ・ランキングにおけるレッドブル・ホンダとのポイント差も4点広がり44点に達した。
その差は少しずつであるものの着々と拡大しているが、これに焦るか否かは考え方次第だ。2021年シーズンのカレンダーにはまだ14戦が残っている。ファステストラップやスプリント予選のポイントを含めれば、理論上獲得可能なポイントは631ポイントある。
トト・ウォルフ代表は「チーム内の士気は高く、先週末よりもレースペースは改善した」として「ダメージリミテーションの週末としては悪くなかった」と述べ、チャンピオンシップでのポイント差は「1回のDNFで入れ替わる程度」であるとして、逆転タイトルの可能性は十二分に残されているとの考えを示した。