英国シルバーストンのファクトリー内で本格稼働を開始したアストンマーチンF1チームの最新鋭の風洞 (2)
Courtesy Of Aston Martin Lagonda Limited

もうコートを着る必要なし!アストンの新風洞、F1開発を劇的に変える?知られざる利点とニューウェイ関与の可能性

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アストンマーチンは、2025年および2026年シーズンのマシン開発を加速させるため、AMRテクノロジーキャンパス内の新たな風洞施設を遂に稼働させた。このプロジェクトは長年にわたる計画のもとに進められ、2024年後半に試運転が行われた後、校正作業を経て本格的な運用が開始された。

英国シルバーストンを本拠とするこのチームはこれまで、約15年間にわたりメルセデスの風洞施設(ブランズハッチ)を利用していた。しかし、新たに自社風洞を導入することで、より効率的で一貫した開発プロセスを確立し、競争力の向上を目指すことが可能となる。

最新技術を搭載した新風洞のメリット

今回導入された風洞は、F1で標準的に使用される60%スケールモデルに対応。最新の測定システムの導入により、実車とCFD(数値流体力学)データとの比較が高精度で可能となった。これにより、空力性能の最適化が加速すると見られている。

しかし、新風洞の利点はこれだけではない。

チーム代表のアンディ・カウエルはF1オーストラリアGPの初日、「すべての設備が一か所に集約されているのも大きな利点だ。今では、エアロダイナミストたちは風洞に行くためにコートを着る必要すらなくなったよ!」と冗談交じりに語った。

「以前は、風洞モデルをバンに積み込み、デコボコした幹線道路を走って運び、到着したときに状態が変わっていないことを願うしかなかった。しかし今は、そうした心配をすることなく、施設内で直接作業できる」

メディア対応するアストンマーチンのアンディ・カウエル代表、2025年3月13日F1オーストラリアGPCourtesy Of Aston Martin Lagonda Limited

メディア対応するアストンマーチンのアンディ・カウエル代表、2025年3月13日F1オーストラリアGP

新施設内には、最新のアディティブ・マニュファクチャリング(積層造形)装置や、風洞モデルの製作エリアが併設されており、設計から試験までのプロセスを一箇所で完結できる。これにより、開発サイクルの短縮が可能となる。

「エアロダイナミストたちは常に、サーキット上の挙動、風洞試験の結果、CFDの3つの要素をどう結びつけるかという課題と向き合っている。この新しい風洞は、そうした空力の流れや物理的な特性をより深く理解するための優れた手段を提供してくれるはずだ」とカウエルは強調した。

英国シルバーストンのファクトリー内で本格稼働を開始したアストンマーチンF1チームの最新鋭の風洞 (1)Courtesy Of Aston Martin Lagonda Limited

英国シルバーストンのファクトリー内で本格稼働を開始したアストンマーチンF1チームの最新鋭の風洞 (1)

2026年に向けた開発とニューウェイ関与の可能性

アストンは現在、ホンダとの新たなパートナーシップが開始される2026年の新レギュレーション対応に向けた開発に注力している。しかし、2025年型マシンの競争力向上も視野に入れており、新風洞の使用時間の一部は現行マシンの改良にも割り当てられる。

さらに、伝説的なF1エンジニアであるエイドリアン・ニューウェイが2025年型マシンの開発に関与する可能性もある。

「エイドリアンは現在、2026年のプロジェクトに集中しているが、シーズン序盤の数戦を経て、2025年型マシンの強みや課題を明確にできれば、一部の開発調整に携わってくれるだろう」とカウエルは説明した。

「我々は新風洞をはじめ、さまざまな最新設備を活用しながら、チーム全体で最速のマシンを作り上げることにフォーカスしている」

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