報道陣の取材に応じるアストンマーチンのマイク・クラック代表、2023年7月6日F1イギリスGPの舞台シルバーストン・サーキットにて
Courtesy Of Aston Martin Lagonda Limited

今更何を言う…ホンダF1と提携のアストン、出力比変更に反対。レッドブル懐疑の2026年エンジン規定を巡り

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2026年F1パワーユニット(PU)規定を変更すべきとのレッドブルの提案を受けアストンマーチンのマイク・クラック代表は、新たなメーカーの参戦を促した電動化重視のレギュレーションを「薄める事はできない」として、これを退けた。

ICE(内燃エンジン)と電動パワーの出力比率が約50対50となる次世代F1パワーユニットの導入に合わせてアストンは、PUサプライヤーをメルセデスからホンダに切り替える。

本田技研工業株式会社の三部敏宏代表執行役社長とアストンマーチンF1のローレンス・ストロール会長、2023年5月24日の2026年パートナーシップ締結発表会見にてCourtesy Of Honda Motor Co., Ltd

本田技研工業株式会社の三部敏宏代表執行役社長とアストンマーチンF1のローレンス・ストロール会長、2023年5月24日の2026年パートナーシップ締結発表会見にて

昨年8月の技術レギュレーション承認を経て、アウディはザウバーと提携する形での参戦を表明し、ホンダはアストンへの供給を発表。フォードはレッドブルとパートナーシップを組んだ。ところが導入まで2年半を切ったタイミングでレッドブル陣営からルール変更を求める声が上がった。

車体重量増とドラッグの悪化により1周保たずにデプロイメント切れが起きる恐れがある等としてチーム代表のクリスチャン・ホーナーは、内燃機関の出力を5~10%引き上げる事を提案した。だが、ホンダのワークスパートナーとなるアストンはこれに否定的だ。

F1イギリスGPの2日目を迎えたシルバーストンでクラックは「こうしたコメントが今になって出てきたのは興味深い。ワーキング・グループでは1年以上前から取り組んできた事だと思う」と語った。

「我々は慎重になるべきだと思う。26年のレギュレーションの中には、ホンダの場合はカムバックだが、新たなメーカーの参加を促した部分がある」

「よって、後になってもう一度見直したからといって、それを今更、薄めることはできない」

「異なるエネルギー間でより均等に分担するというこれらの新しい課題に対して我々は、チームとしてFIAやF1と協力し、可能な限り最善の解決策を見つけていく事が重要だと思う」

「時間が経てば分かるだろう。ワーキンググループは今も進行中で、木曜日にも開かれたようだし、適切な解決策が見つかると確信している」

アストンマーチンのマイク・クラック代表、2023年7月6日F1イギリスGPの舞台シルバーストン・サーキットにてCourtesy Of Aston Martin Lagonda Limited

アストンマーチンのマイク・クラック代表、2023年7月6日F1イギリスGPの舞台シルバーストン・サーキットにて

レッドブルのPUプロジェクトを担うレッドブル・パワートレインズ(RBPT)は当初、電動エリアの外部協力を求めてホンダと交渉したものの決裂。フォードとの提携を経て今年、システム全体の開発に本腰を入れ始めたものと考えられている。

ホーナーの提案に対してメルセデスのトト・ウォルフ代表は、PU開発が順調に進んでいない証であり、自己利益の追求に過ぎないとの疑いの目を向けたが、レッドブルの指揮官は開発が「かなり進展」しているからこそ、潜在的な問題点が見えてきたのだと主張する。

英「The-Race」によるとホーナーは「彼(ウォルフ)は顧客であり、HPP(メルセデスのレースエンジン会社)事業に正式に関与してはいない」と述べ、ウォルフがエンジン開発の事情をどれだけ把握しているのかは疑わしいとした上で、次のように続けた。

「プログラムが本格的に始動し始め、シミュレーションが固まるにつれて幾つかの課題が明らかになってきた。これは必然だ」

「これはおそらく我々がかなり進んだ結果として、実際に幾つかの限界が見えてきたのだろう」

「比率を調整するのに遅すぎるとは感じていない。さほど時間はかからないだろうし、すべてを壊してやり直す必要があると言っているわけではない」

「燃料フローにしろ、セルの質量にしろ、素晴らしいレースを実現させるためには比率を少し変えるだけでいいんだ」

フェラーリのフレデリック・バスール代表もレッドブル同様、変更に前向きな姿勢を示しているが、「我々はみな同じ地点にいる」と述べ、レッドブルが他社より先行しているとのホーナーの主張に反論した。

なお英「Autosport」によると、F1のチーフ・テクニカル・オフィサーを務めるパット・シモンズは、2026年のエンジン規定に対するレッドブル陣営の懸念は古いデータに基づくもので、見当違いだと主張している。

F1及び国際自動車連盟(FIA)の技術チームはAWSのサポートを経て、潤沢なサーバーリソースを駆使してCFDシミュレーションの精度を上げてきた。曰く「信じられないほど複雑なモデルを実行する」事が可能だという。

シモンズは、この最新鋭のデータはチームが目にしているものより「明らかに何ヶ月も先をいく」ものだと説明し、2026年の技術規定がレースを損ねる可能性があるとの指摘に対して楽観的な姿勢を見せた。

2026年のエンジン規定は昨年合意に至った一方、車体側のルールはまだ議論中で定まっていない。

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