アロンソ「僕は予選でもレースでも最速の男じゃない」WECに参戦し即競争力を示すのは無理と断言
フェルナンド・アロンソ(マクラーレン・ホンダ)は、自身は予選でも決勝でも最速の男ではないと主張、WEC世界耐久選手権に参戦したとしても直ぐに速さを発揮するのは不可能だと断言した。2018年のルマン24時間レース参戦を目指すアロンソは、ここ数週間の間に立て続けにWECマシンのテストを行っている。バーレーンではトヨタGAZOO RacingのLMP1マシンを、母国スペインではデイトナ24時間レースに向けてLMP2マシンをテストした。
「すぐに競争力を発揮するのは無理だね」23日(木)に行われたF1最終アブダビGPの公式記者会見で、会場からの質問にアロンソはこう答えた。「F1での僕の強みの一つは適応性にあると思うけど、僕は多分予選では最速じゃないし、レースでもウェットコンディションでもファステストじゃない」
常に自信に満ち溢れて見えるが、アロンソ本人はF1においてでさえ自分よりも速いドライバーがいると考えそれを認めている。全方位的に何でもそつなくこなせてしまう人物の事を日本語では器用貧乏という。多くの場合否定的なニュアンスを以て使われる言葉だが、アロンソはこれをポジティブに捉えており、WECのような他のシリーズへの参戦を後押しする資質だと語る。
「(色々な事を器用にこなせるからこそ)他のカテゴリにチャレンジしたり、あるシリーズのベストドライバーと張り合える準備が出来ていると言えるんだ」
ある特定の領域で突出した速さはないもの、全領域において高レベルな能力を発揮できる。だからF1以外のモータースポーツにチャレンジする…アロンソはWEC参戦の背景をこのように語った。アロンソは3度目の王者獲得を諦め、その代替として世界三大レース制覇の”トリプルクラウン”に照準をすげ替えているフシがあるが、それを裏付けるかのような発言であった。
マクラーレン残留を発表した時、アロンソはマクラーレンでキャリアを終える事になるだろうとの認識を示した。ホンダからルノーにエンジンサプライヤーを変更したとしても、ここ数年の間にマクラーレンが選手権争いの先頭を走る可能性は極めて少なく、それはアロンソ自身も重々承知。事実上、3冠の夢を断念したものと推測されている。
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世界中を飛び回り年間20戦をこなすF1に加えて、世界の耐久レースの頂点に君臨するWECへ並行参戦するのは想像以上にハードだ。WEC王者を獲得しトロ・ロッソからF1デビューしたブレンドン・ハートレーは、一時両カテゴリを行き来する事を強いられたが、マシンが大きく異なるため、都度の適応が難しかった事を明らかにしている。アロンソは2つの公開テストを振り返り「遊んでいる暇はなさそうだ」と楽しげに語った。
「まずはバーレーンテストについてだけど、ここではLMP1マシンをテストする機会に恵まれた。このマシンにはまだF1に搭載されていない技術が詰め込まれていたり、逆に近年のF1で禁止されてるテクノロジーもある。そう、例えばトラクション・コントロールとか4輪駆動とかだね。そういったマシンを走らせるのにはF1とは違うドライビングスタイルが求められるんだ。燃料制限については僕らがF1で経験している以上に厳しいからちょっとストレスが溜まるところもあったけど、全体として言えば素晴らしい経験だった」
「スペインでLMP2をテストした時も最高に楽しかったよ。このマシンもかなり違うんだ。より原始的というかアナログ的で、シンプルなんだ。うん、本当に楽しかったよ。この冬のデイトナに向けて準備ができたし、あまり遊んでるヒマはなさそうだね」
アロンソに負けず劣らず、世界中のモータースポーツ愛好家の2018年は極めて多忙となりそうだ。