曙ブレーキの信元久隆社長とマクラーレン
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マクラーレンF1に不安材料…曙ブレーキが経営不振、金融機関に支援を要請

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マクラーレンF1チームに不安材料が発生した。埼玉県羽生市に本社を置く自動車部品メーカー「曙ブレーキ工業」が資金繰りに行き詰まり、私的整理の一種である「事業再生ADR」制度を使用して金融機関に支援を要請。経営再建を図る事が発覚した。

同社は日本の他に、アメリカやヨーロッパ、そしてアジアなど、世界中に研究開発センターと製造施設を所有。マクラーレンは曙ブレーキと共に、高いねじれ剛性を持ち800度もの高温に耐えるF1専用のアルミニウム製軽量キャリパーを開発。2007年よりテクニカルパートナーシップを結んできた。

2018年型マシン「MCL33」にも同社の技術が投入されており、ブレーキ・キャリパーとマスターシリンダー、カーボンファイバー製ディスクブレーキとパッドが曙ブレーキ工業製であった。当然2019年の新車「MCL34」にも曙ブレーキの技術が供給されるものとみられていたが、ニューマシンの発表を2週間後に控えた1月30日、懸念材料が明るみに出た。

創業から90年の歴史を持つ曙ブレーキは資本金199億円、従業員数9240名という規模の大きな企業であり、筆頭株主がトヨタ自動車という事もあって、即座に事業が行き詰まる可能性は高くはない。とは言え、何らかの形で事業整理が行われる可能性は十分にあり、マクラーレンが安定供給に不安を抱えこれをリスクとみなせば、代替のパートナーを模索する事は考えられる。

両者の関係はF1にとどまらない。ハイエンドのブレーキング材の構造設計と表面処理に関しても共同開発しており、マクラーレンのミッドシップスポーツカー「MP4-12C GT3」は、同車専用のオーダーメイド・レーシングキャリパーとブレーキパッドを装備している。

更に、曙ブレーキは2013年より、WEC世界耐久選手権に参戦するトヨタチームにブレーキキャリパーを供給。専用開発された耐久レース専用キャリパーを備えたトヨタ・ガズーレーシング「TS050 HYBRID」は、昨シーズン5勝を挙げてマニュファクチャラーズランキング2位を果たした。同社はニュルブルクリンク24時間レースでもサプライヤーを務めており、モータースポーツ界への広範な影響が心配される。

トヨタの広報担当は否定しているものの、日本経済新聞が報じたところによれば、曙ブレーキ工業はトヨタに増資引き受けなどの形で支援を打診したという。経営悪化はアメリカでの事業不振が原因とみられており、今後立て直しに奔走する事になる。

マクラーレンは今年ドライバーラインナップを一新。カルロス・サインツとランド・ノリスを新たに起用しF1世界選手権に挑むが、グリッド上の全10チームの内、唯一優勝経験のないコンビでシーズンを戦う事になる。新車「MCL34」は、バレンタインデーとなる2月14日に、本拠地英国ウォーキングで発表される。