ハミルトンも驚くフェラーリ豹変を生んだ「4つの要因」、0.6秒遅れるはずが”有頂天”のスプリント予選ポール

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ルイス・ハミルトン(フェラーリ)は、劣勢を覚悟して2026年F1第9戦イギリスGPのスプリント予選に臨んでいた。前戦オーストリアGPではストレートで0.4秒を失う競争力不足に苦しみ、シルバーストンでは、その差がさらに拡大すると見込んでいたからだ。

だが、7月3日(金)に行われたスプリント予選でハミルトンは、彼が「言葉では表せない」と評した母国ポールポジションを獲得した。「フロントロウを争えるなんて、本当に思ってもみなかった。素晴らしい驚きだ。有頂天だよ」と喜びを爆発させた。

メディアデーでは「差が倍に広がる可能性もある」と嘆いていたものの、ふたを開ければアンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)をわずか0.011秒抑えて最速に立った。

誰もが意表を突かれたこの結果の背景には、ハミルトンがシルバーストンで9勝を誇る名手であること以上の要因がある。

「直線0.6秒遅れ」の予想を覆す走り

シルバーストーン・サーキットを走行するルイス・ハミルトン(フェラーリ)、2026年7月3日(金) F1イギリスGP FP1Courtesy Of Ferrari S.p.A.

シルバーストーン・サーキットを走行するルイス・ハミルトン(フェラーリ)、2026年7月3日(金) F1イギリスGP FP1

ハミルトンにとって、この結果はチームと自らの予想を大きく裏切るものだった。前日まで、フェラーリのエンジニアたちは、メルセデス相手にストレートで0.6秒の遅れを取ると警告していたという。

「昨日はチームからかなり不安になるような話を聞かされていたんだ。『メルセデスに対して、ストレートで0.6秒遅れることになる』という感じだった。前戦でのストレートでの遅れは0.4秒だったからね」とハミルトンは振り返った。

ところが、コースに出たハミルトンは、それとはまったく異なる感触を得ることになった。ストレートでメルセデスと互角に渡り合えたことに、半信半疑だったという。

「ところが今日は、突然かなり近いところにいた。『これは本当なのか? 予選になったら彼らは上げてくるんじゃないか?』と思っていた。でも現実には、僕らは彼らと同じところで戦えていた」とハミルトンは語った。

実際ハミルトンは、ラフィード(T7)からチャペル(T14)までの全開が長く区間で、アントネッリと遜色ない速さを見せた。

1:真価を見せた新スペックPUと、エネマネ術

レッドブル・リンクでルイス・ハミルトン(フェラーリ)とポジションを争うマックス・フェルスタッペン(レッドブル)、2026年6月28日(日) F1オーストリアGP決勝(レッドブル・リンク)Courtesy Of Pirelli & C. S.p.A.

レッドブル・リンクでルイス・ハミルトン(フェラーリ)とポジションを争うマックス・フェルスタッペン(レッドブル)、2026年6月28日(日) F1オーストリアGP決勝(レッドブル・リンク)

フェラーリ躍進を紐解く鍵のひとつは、追加開発・アップグレード機会制度(ADUO)を利用してフェラーリが前戦で投入したアップグレード版パワーユニット(PU)だ。

この新スペックが投入されたレッドブル・リンクでは期待外れに見えたが、その不振の背景には、高い標高と気温があった。フェラーリのPUは従来からオーバーヒート気味な傾向があり、気温が高く空気も薄い(=冷却が厳しい)オーストリアでの苦戦は、ある種、避けられないものだった。

一方で今週末のシルバーストンは、先週末のレッドブル・リンクと比べて、気温・路面温度ともに10℃近く低く、標高も低い。その結果、アップグレード本来の効果が表れた可能性がある。

PUに関して言えば、エネルギーマネジメントの面でもフェラーリは懸念されたような弱さを全く見せなかった。むしろ、全開区間が長く続くセクター2でハミルトンはアントネッリを0.044秒上回ってみせた。

このことは、少なくともこの区間でフェラーリが顕著なデプロイメント不足に陥っていなかったことを示している。

2:シャシーが後押しした低速再加速の優位

弱点としていた全開区間でのロスを最小限に抑え、シャシーの高いポテンシャルを最大限に活かしたことが、ポールポジションを可能とした重要な鍵であることは確かだろう。

ハミルトンは主に低速コーナーからの再加速でアントネッリに対してゲインしていた。

特にヴィレッジ(T3)からループ(T4)、エイントリー(T5)にかけての低速複合区間、ウッドコート(T8)から旧ピットストレートに向かう加速、そしてヴェイル(T16)からクラブ(T17)にかけての進入・脱出でタイムを稼いでいる。

これは、かねてよりSF-26が備えていた高いコーナリング性能やリアの安定性が後押ししていた可能性を示すものだ。

シルバーストン・サーキット(F1イギリスGP)のコースレイアウト図(2026年版)copyright Formula1 Data

シルバーストン・サーキット(F1イギリスGP)のコースレイアウト図(2026年版)

ブルックランズ(T6)周辺を除けば、ハミルトンは複数の低速コーナーでアントネッリと同等、あるいはより早いタイミングでスロットルを開けられていたように見える。

3:初期セットアップで後手に回ったメルセデス

スプリント予選でポールポジションを獲得したルイス・ハミルトン(フェラーリ)を祝福する2番手アンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)、2026年7月3日(金) F1イギリスGP(シルバーストーン・サーキット)Courtesy Of Mercedes-Benz Grand Prix Ltd.

スプリント予選でポールポジションを獲得したルイス・ハミルトン(フェラーリ)を祝福する2番手アンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)、2026年7月3日(金) F1イギリスGP(シルバーストーン・サーキット)

今週末がスプリント・フォーマットであることも見逃せない。フェラーリの勝因の裏には、メルセデスがイニシャル・セットアップを外したという側面もある。スプリント予選までに許されたプラクティスは、FP1のわずか60分間のみだった。

メルセデスのトラックサイド・エンジニアリング・ディレクターを務めるアンドリュー・ショブリンは、「ここ数戦は、持ち込み用のセットアップをうまく決められていたものの、今日は後手に回っているような感覚があった」と認める。

「セッションを通じて、クルマにより安定性を持たせる変更を加えてきたが、SQ3の段階でも、依然としてフロントが強すぎるように感じられた。これだけ突風が強いときには、望ましくない状態だ」

さらに、アントネッリ自身がラップを完璧にまとめられなかったという点も挙げられる。F1公式サイトは、全ミニセクターをベストまとめられていれば、ハミルトンに代わってアントネッリがポールを獲得していたと指摘している。

いずれにせよ、両チームの準備の差がスプリント予選の結果にどれだけの影響を与えたのかについては、100kmで争われるスプリントレースを経て、パルクフェルメが解除される本予選でより明確に見えてくるだろう。

4:低い路面温度と硬いタイヤがもたらした優位

アストンマーティン・ホンダのガレージに並べられたタイヤ。信頼性不足による走行機会の喪失から多くが使用されることなくテストを終えた、2026年2月20日 F1プレシーズンテスト6日目(バーレーン・インターナショナル・サーキット)Courtesy Of Aston Martin Lagonda Limited

アストンマーティン・ホンダのガレージに並べられたタイヤ。信頼性不足による走行機会の喪失から多くが使用されることなくテストを終えた、2026年2月20日 F1プレシーズンテスト6日目(バーレーン・インターナショナル・サーキット)

3つ目の要因は、タイヤをめぐる状況の違いだ。ピレリはシルバーストンに、最も硬いレンジとなるC1~C3を持ち込んでいる。一方で前戦オーストリアGPに持ち込まれたのは、C3~C5という最も柔らかいレンジだった。

オーストリアでは、タイヤのオーバーヒートが課題の一つとなったが、それとは対照的にイギリスでは、如何にタイヤに熱を入れて機能させるかが焦点となっている。それは、リアム・ローソン(レーシング・ブルズ)の次の発言に顕著に表れている。

「さほど気温が高くなかったから、アタックに向けて使いすぎることなく、タイヤに温度を入れなきゃならなかった。その点では、これまでのコースとかなり状況が違う」

今季のフェラーリは、タイヤの熱入れに苦労しておらず、ソフトタイヤから最大限のパフォーマンスを引き出していた可能性が高い。

フェラーリの好調さに驚いたのは、ハミルトンだけではない。ジョージ・ラッセル(メルセデス)も、跳ね馬の豹変に首をかしげた。

「彼らはPUとエネルギーマネジメントで後手に回っていたのに、ここでは今のところ最も優れているように見える。本当に驚きだよ」とラッセルは語った。

また、ルクレールも「今日ルイスがポールを獲ったことには、僕らもすごく驚いている。全体的に、前のマシンとのギャップはもっと遥かに大きいと予想していた」と驚きを隠さなかった。

ただし、フェラーリが日曜の本戦で表彰台の頂点に立てるかどうかはまだ分からない。これはスプリントフォーマットの週末であり、セッションごとのデータ分析と改善が、最終結果に直結するからだ。

ピレリのポールポジション賞を手渡されるルイス・ハミルトン(フェラーリ)、2026年7月3日(金) F1イギリスGPスプリント予選(シルバーストーン・サーキット)Courtesy Of Ferrari S.p.A.

ピレリのポールポジション賞を手渡されるルイス・ハミルトン(フェラーリ)、2026年7月3日(金) F1イギリスGPスプリント予選(シルバーストーン・サーキット)


スプリントは日本時間7月4日(土)20時から、公式予選は同24時から1時間に渡ってシルバーストン・サーキットで開催される。セッションの模様はフジテレビNEXTで生配信・生中継される。

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