上海インターナショナル・サーキットに設置されたピレリ・ホットラップのガレージ内の様子、2024年4月19日F1中国GP
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F1タイヤ、2026年18インチ継続も幅と外径は縮小「16インチでは不十分」方針を転換した技術的な理由とは?

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F1は当初、次世代F1パワーユニット(PU)が導入される2026年に現行の18チンチから16インチへと、タイヤサイズを縮小する計画を立てていたが、このほど18インチを継続する方針に切り替えた。

インチダウンは車重の軽量化対策の一つとして打ち出されたものだった。昨秋の段階では、23%の重量増となる最新世代のPUを背景としてマシンの総重量が800kgを大きく上回る見通しであった事から、クルマの俊敏性が損なわれ、またデプロイメント切れのリスクが増大すると見られていた。

2026年F1ショーカーの前に立つアウディのオリバー・ホフマン総代表Courtesy Of Audi

2026年F1ショーカーの前に立つアウディのオリバー・ホフマン総代表

しかしながら国際自動車連盟(FIA)やチームの合意の下、タイヤの幅は狭められ、外径も縮小されるものの、18インチを継続する決定が下された。

そもそも2022年に18インチへと切り替えられた理由が市販車市場の動向を反映したものであるため、ピレリが難色を示すのは容易に予想できた事だが、18インチが継続される事になった理由は他にもある。

方針転換の理由についてピレリのモータースポーツ部門を率いるマリオ・イゾラは中国GPが行われている上海インターナショナル・サーキットで「タイヤの負荷能力や特性など、さまざまな理由から、FIAおよび各チームと合意して18インチタイヤを使い続けることにした」と説明した。

「我々は、当初のアイデアであった16インチタイヤでは不十分だったと考えている」

「2026年のクルマの推定性能を考えると、オーバーヒートや耐久性の問題が大きくなるリスクがあるため、内圧を大幅に上げなければならなくなる」

「そこでチームとFIAから提供されたデータをもとに分析を行い、特にフロント側に関して、18インチで幅が狭く、直径が小さいタイヤを使用することが2026年に向けての正しいアプローチだという結論に達し、最終的にチームもこれに同意した」

ピレリがFIA-F1世界選手権に供給するタイヤ「ピレリPゼロ・レッド」の拡大写真、2024年Courtesy Of Pirelli & C. S.p.A.

ピレリがFIA-F1世界選手権に供給するタイヤ「ピレリPゼロ・レッド」の拡大写真、2024年

ピレリは2024年の9月あるいは10月頃には2026年スペックのタイヤテストをスタートさせる計画だが、その前に2025年スペックを最終決定する必要がある。

日本GP後の鈴鹿サーキットでは、RBとザウバーの協力を得て2025年タイヤの開発テストが行われた。その目的は、車体開発の進展により更にダウンフォースが増加すると見込まれる2026年型F1マシンの負荷に対応できるよう、新しい構造を最終決定する事にあった。

ピレリのエンジニアにフィードバックを返す角田裕毅(RBフォーミュラ1)、2024年4月10日鈴鹿サーキットCourtesy Of Pirelli & C. S.p.A.

ピレリのエンジニアにフィードバックを返す角田裕毅(RBフォーミュラ1)、2024年4月10日鈴鹿サーキット

シルバーストンやモンツァ、ムジェロでもテストが予定されており、ピレリは今後、オーバーヒートを低減させる新たなコンパウンドの開発を進めていく。

ピレリは、ドライタイヤの開発に関しては大きな課題はないと考えているが、ウェットタイヤはこの限りではない。

「ウェットやインターミディエイトのテストは非常に限られている。これが現時点での我々にとっての最大の課題だ」とイゾラは語る。

「ブランケットなしで使用できるインターミディエイトや、より優れた性能を持つエクストリームウェットの開発を完了したいものの、ウェットコンディションでのテストの機会は多くない」

「(人工ウェット再現システムがある)ポールリカールやフィオラノでテストすることはできるものの、それ以外の機会はあまりない。鈴鹿でのテスト初日は雨が降っていたが、ウェットタイヤを履くほど十分な雨量ではなかった」

「ドライ用のテストに関しては良い計画があり、そのプランに沿って進めば良い結果が得られると確信しているが、ウェットに関しては、もっと複雑だ」

決勝レースに先立ちピットレーンでピットストップの練習をするザウバーのピットクルー、2024年F1オーストラリアGPCourtesy Of Pirelli & C. S.p.A.

決勝レースに先立ちピットレーンでピットストップの練習をするザウバーのピットクルー、2024年F1オーストラリアGP

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