2019年型ホンダF1パワーユニット「RA619H」の細部
Courtesy Of Honda Motor Co., Ltd

2026年F1エンジン規定:MGU-H廃止で基本合意か、一気に現実味帯びるワーゲンの参戦

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フォルクスワーゲンのF1参戦が一気に現実味を帯び始めた。F1は2025年に導入を予定していた次世代のパワーユニット(PU)レギュレーションを2026年に1年先送りすると共に、MGU-H(モーター・ジェネレーター・ユニット・ヒート)廃止の合意形成を進めている。

F1第14戦イタリアGPの決勝レースが行われる9月12日(日)のモンツァでは将来のF1エンジンに関するトップレベルの会談が予定されており、既存のPUサプライヤーと新規参入を計画しているメーカーの責任者達がエンジン構造、電動ユニット、燃料、コストなどの幅広いテーマについて議論を行う。

モンツァ・サーキットのピットレーンを走行するF1マシン、2021年9月10日F1イタリアGPにてCourtesy Of Pirelli & C. S.p.A.

モンツァ・サーキットのピットレーンを走行するF1マシン、2021年9月10日F1イタリアGPにて

伝えられるところによるとメーカー側の参加者はメルセデス、フェラーリ、ルノー(アルピーヌ)、レッドブル、アウディ、ポルシェの他に、今季限りでF1を撤退するホンダがおり、これにジャン・トッドFIA会長、F1のステファノ・ドメニカリCEO、F1の競技部門を率いるロス・ブラウンが席につくという。

統括団体の国際自動車連盟(FIA)とF1の経営陣は次世代PUに関して「持続可能性」「持続可能な燃料」「パワフルかつ感動的」「大幅なコスト削減」「新規メーカーの参入を促す魅力」という5つの方向性を掲げているが、利害関係者の調整は簡単ではない。

ワーキンググループは5つの基本方針に基づき具体的な青写真を描くべく、昨秋から定期的に会合を開いているものの、各社の立場の開きは大きく議論は遅々として進展していなかった。だが、ようやく一つの方向性が定まってきたようだ。

The Raceが伝えたところによると、メルセデスのトト・ウォルフ代表は”条件付き”ながらもMGU-H廃止の見通しが立ちつつある事を認めた上で「我々メルセデスはフォルクスワーゲン・グループの参戦を手助けする用意がある」と語った。なお具体的な”条件”については明らかにされていない。

F1パワーユニットにおけるターボチャージャーとMGU-Hの構造図copyright Formula1 Data

F1パワーユニットにおけるターボチャージャーとMGU-Hの構造図

熱エネルギーを回生するMGU-Hは非常に複雑なテクノロジーの産物で、アウディとポルシェを擁するワーゲン・グループを含む新規参入を計画する自動車メーカーにとって最大の参入障壁の一つとなってきただけでなく、コストを現行の半分に抑えるという目標を達成する上でもあまりに厄介な代物だ。

これまでの多額の投資を考えれば既存のPUサプライヤーが可能な限り現行のテクノロジーを維持したいと考えるのも無理はないが、少なくともメルセデスとルノーに関しては是が非でもこれを維持したいとは考えていないとされる。

「エレクトリック・エキゾーストガス・ターボチャージャー」との名称でAMGの次世代ロードカーへの技術転用が発表されているとは言え、MGU-Hはあまりに複雑過ぎて量産車に搭載される可能性は皆無に等しく、特にルノーが拘らなかったとしても不思議はない。

なお、現行の6気筒から4気筒にシリンダーが減らされるとの見方もあるが、ICE(内燃エンジン)はもはや自動車市場の関心事ではないためあまり深い議論は行われておらず、むしろMGU-Hの廃止と合成燃料やバイオ燃料の導入によるパワーダウンをハイブリッドを含むシステム全体で如何に補うかの方が専らの焦点のようだ。

Auto Motor und Sportによれば、100%持続可能な燃料を使用する事で100kg/hの流量制限を撤廃する他、現行の120kW(163馬力)から350kW(475馬力)へとMGU-Kの出力を増やす案が俎上に載せられており、F1の最高技術責任者を務めるパット・シモンズが以前言及していた「4輪駆動化」案は、重量増の観点から異論が出ているという。

F1側は今年10月中の合意を目指しているとの事で、遅くともシーズン最終戦までには何らかの具体的なモデルが提示されるものとみられる。

なおスーパー耐久シリーズでの実戦を通して水素エンジンの技術開発に力を入れているトヨタは今のところPUサプライヤーとしてのF1への参戦は考えていないようで、これまでの全ての会合に参加していないと伝えられている。