ホンダ長谷川祐介とハース小松礼雄「将来F1で働きたい!」夢を持つ日本の若者にアドバイスを贈る
「将来はF1で仕事をしたい!働きたい!」世界最高峰の4輪モータースポーツで自分の腕を試してみたいと思い悩んでいる若者は少なくはないだろう。だが、他の多くの職種のように求人サイトで募集がかかることは稀であり、どのようにその夢を叶えるべきなのかは良くわからないのが実情だ。
では、現在F1でエンジニアとして活躍している日本人達は、学校で何を学びどのようなプロセスを経てF1に進んだのだろうか?仕事を行う上では何を大切にしているのだろうか?2017年の日本GPを前に、ホンダのF1プロジェクトを率いる長谷川祐介と、ハースのチーフエンジニアを務める小松礼雄が、エンジニアとしてF1で活躍する夢を持つ日本の若者にアドバイスを贈った。
ロマン・グロージャンを育て上げたレースエンジニアとして世界中に知られる小松は、2016年にグロージャンと共にアメリカに本拠地を置くハースに移籍、同チームの主任エンジニアを務めている。高校卒業後、英ラフバラ大学に留学し自動車工学を専攻、その後BARホンダにてF1でのキャリアをスタートした。
「中学生の時からF1に興味を持っており、いつかF1で仕事をしたいと思っていました。そのためにはイングランドに行った方が良いと考えたので、高校を卒業してから日本を離れることにしました。好きな事をやりたいなら、”出来ないかも…”と考えてはいけません。やれると信じて全力を尽くすのです。もし失敗したとしても、そこから学べば良いのです。私のアドバイスはそんな感じです」
F1の中心地は英国イングランド、多くのチームが活動の本拠地を置く場所だ。ウィリアムズでメカニックを務める白幡勝広も、まずは渡英し夢の実現を模索、あらゆるチームに履歴書を送っていたという。
新井康久に代わって昨年からホンダF1を統括している長谷川は、2000年から2008年までのホンダF1第3期に、ジャック・ビルヌーブや佐藤琢磨のレースエンジニアを務めた経験を持つ。ホンダの撤退と同時に第5技術開発室室長としてエンジンやモーターなどパワートレインの開発を担当、F1でのノウハウを活かして量販車向けの技術開発に従事していた。
「僕は小松さんとは違う道を歩んできました。彼はF1エンジニアを目指していましたが、私はホンダに入社し量産開発に従事していました。ですので、自分がフォーミュラ1のエンジニアになるなんて思ってもいなかったのです。しかし、私はいつも自分の仕事を集中し、自分自身を成長させるように頑張ってきました。そうしたら、チャンスが訪れたのです。期待していなかったものの…そうですね、自分の仕事を着実にこなし自分を高め続けること、そういった事が重要なのだろうと思います」
F1の最前線で戦う二人の日本人エンジニアは、各々全く別の道を通って今に至っている。小松の場合には夢を明確に思い描き、今自分がいる場所から夢の場所までを繋ぐ道をイメージした。そしてその道から外れないようにひたすらに努力を重ねてきた。長谷川は到達地点のイメージこそ描かなかったが、目の前に与えられた仕事に全力で取り込み続けた。だが、二人のアドバイスには共通するものがあった。それは、常に自分を研鑽しベストを尽し”続ける”、という事だ。
F1には、エンジニア以外にも広報や企画、スポンサー担当等、幅広い職種がある。二人の助言は、F1を志す全ての人達の大きな参考になるのではないだろうか。いつの日か、スクーデリア・フェラーリのチーム代表は日本人、という時代が来るのを見てみたい。