ホンダF1、マクラーレンとの決別を正式発表。マクラーレン・ホンダは僅か3年足らずで空中分解
9月15日(金)、本田技研工業株式会社とマクラーレンは、2017年を以て3年間に渡るF1でのパートナーシップを解消すると発表した。エンジンパフォーマンスと信頼性不足によって関係が悪化していた両者は、今季限りで袂を分かつ事になる。
2015年からマクラーレンにエンジンを供給する形でF1に参戦したホンダは、1980年代の伝説チーム”マクラーレン・ホンダ”の名のもとに復帰、ファンと関係者の大きな期待を背負っていた。だが、パワーユニットの性能不足と信頼性の欠如によって苦戦を強いられ続けており、2017年シーズンは過去最悪の成績を計上し続けていた。
4月のバーレーンGPでは、同チームのレースドライバーを務めるフェルナンド・アロンソが「こんなパワー不足でレースするのは人生初」と激怒、6月には、F1エンジン開発に苦戦するホンダをマクラーレンが見限る時期が近づいてきている、といった趣旨の報道がなされていた。
10年に及ぶ長期契約を結んでいるにも関わらず、パートナーシップの存続が危ぶまれ始めた事に関して、マクラーレンのチーム代表を務めるエリック・ブーリエは、ホンダとの間には取り返しのつかない緊張関係など存在しておらずメディアが煽っているだけだと語り、決別などあろうはずもないと開き直る場面も見られた。結果的にはマクラーレン・ホンダは空中分解し、ブーリエの発言は表面的なものであった事が明るみに出た形となった。
マクラーレン・ホンダ誕生の際に意思決定に関わったキーパーソンは、3年の間に全員F1の舞台を去った。伊東孝紳(前ホンダ代表取締役社長)、マーティン・ウィットマーシュ (マクラーレンCEO)、バーニー・エクレストン (F1グループオーナー)はいずれもその任を解かれている。
来季はトロ・ロッソにエンジンを供給
ホンダは来季以降マクラーレンに代わってトロ・ロッソへのエンジン供給を行う。詳細な年数についての発表はないものの複数年契約と見られる。一方のマクラーレンは、ルノーとの3年契約を締結した。
ホンダの代表取締役社長を務める八郷隆弘は、「志半ばでマクラーレンと袂を分かつのは非常に残念ですが、お互いの将来に向けた最善の道として決断しました」と決別の経緯を説明、トロ・ロッソとの提携については「トロ・ロッソは、才能あるドライバーを数多く輩出してきた若さと勢いのあるチームで、彼らと共にチャレンジできることを、とても嬉しく思います」との談話を発表した。
トロ・ロッソのチーム代表を務めるフランツ・トストは「Hondaの創業者、本田宗一郎氏が二輪車で初めてレースの世界に入って以来、レースは常にホンダの企業文化の中心です。そのホンダと我々が一丸となってチャレンジすれば、大きな成果につながるのは間違いありません」とのコメントを発表した。
ホンダF1のブランド・コミュニケーション本部長を務める森山克英は、来季の目標はトロロッソ・ホンダとして表彰台争いをする事と語り、さらなるステップアップに大きな自信を示した。
両者の提携の背景には、F1を統括するFIA国際自動車連盟と、F1を所有するリバティメディアの全面的な協力があった。フォーミュラ1会長兼CEOのチェイス・ケアリーは、ホンダの継続参戦はF1にとって極めて重要な課題だったと語り、ホンダのF1残留に歓迎の意を表した。
マクラーレン・ホンダ3年間の歩み
マクラーレン・ホンダは結成後、優勝はおろか表彰台に上ることすらなく関係解消に至った。両者の3年間に渡る歩みを振り返える。
- 2013年5月
- 15年からの提携を発表、ホンダ7ぶりのF1復帰
- 2014年1月
- ロン・デニスがマクラーレンのCEOに復帰
- 2015年3月
- マクラーレン・ホンダとしてF1に参戦
- 2015年11月
- 27ポイントを獲得しランキング9位で初年度を終える
- 2016年9月
- 日本GPにてアロンソがホンダエンジンを批判「GP2(下位カテゴリ)のエンジンだ!」
- 2016年5月
- スペインGPで初の予選Q3(トップ10争い)に進出
- 2016年9月
- イタリアGPで初のファルテストラップを獲得
- 2016年11月
- 76ポイントを獲得しランキング6位で二年目を終える
取締役会がロン・デニスを解任、ザク・ブラウンが同職に就任 - 2017年3月
- シーズン前テストで新開発エンジンの信頼性不足が露呈
- 2017年5月
- アロンソが今季限りでのチーム離脱を示唆
- 2017年9月
- シンガポールGPにて決別を発表