
1周で0.573秒の大差…新旧メルセデスW17に明暗。シンガポールで浮き彫りになった「新仕様の弱点」とは?
メルセデスが2026年F1第17戦シンガポールGPで実施している新旧パッケージの比較から、最新仕様の弱点が見えてきた。スプリント予選では旧仕様のジョージ・ラッセルが2番手を獲得した一方、新仕様のアンドレア・キミ・アントネッリは0.573秒も遅い7番手にとどまった。
チームは、前週にマレーシアで開催されたバーレーンGPで期待した競争力を発揮できなかった原因を探るため、2台に異なる仕様を投入。同グランプリで導入したアップグレードをアントネッリ車に残し、ラッセル車を旧仕様に戻してマリーナベイ市街地コースで検証を進めた。
作動領域が狭く予測し難い新仕様
スプリント予選後、マシンからラップタイムを引き出すのがここまで難しかったことに驚いたかと問われると、アントネッリはこう答えた。
「正直、イエスでもありノーでもある。すでにFP1から苦戦していたしね。このパッケージについては、まだ理解しなきゃならないことが山積みだよ」
「このクルマはすごく難しくて、予測しにくい。それに、1周をうまくまとめるのもすごく難しい。残念だよ。かなり期待してここに来たけど、今のところはかなり厳しい」
アントネッリが使う新仕様は、良好なバランスを保てる範囲が狭く、挙動に一貫性がないため、ドライバーは自信を持って攻めることができず、スライドが多発することでタイヤも必要以上に摩耗する。
ただ、メルセデスはその理由をまだ把握できていない。改良によってセットアップのウインドウが狭まったのか、それとも新たなパッケージの性能を十分に引き出す術を見つけられていないだけなのか、見極めが必要な状況だ。
トラックサイド・エンジニアリング・ディレクターを務めるアンドリュー・ショブリンも、期待した性能向上が得られないことに「頭を悩ませている」と認めた。
「どちらのクルマもバランスは良くなかった。ただ、キミ(アントネッリ)はブレーキングとコーナーへの進入で、より自信を欠いていた。ここで予選ラップを攻めるには、そこでの自信が必要だ」
「なぜそうなっているのか、引き続き調べていく。改善に向けて活用できるデータは豊富にある。明日の決勝に向けた予選では、キミのクルマをもっと良い状態にしたい」
現時点では、旧仕様の方が少なくともマリーナベイ市街地コースの条件には合っているように見える。だが、アントネッリは週末に先立ち、仮にラッセルの旧仕様の方が高い競争力を示したとしても、週末の途中で旧仕様に戻す選択肢はないとしていた。
スプリントレースと本予選の間はパルクフェルメが一旦解除されるものの、作業に宛てられる時間は3時間しかない。一方で、アントネッリのマシンを旧仕様に戻すには2日間の作業が必要になる。
比較の先にある2027年型W18の開発
コンストラクターズ選手権で大量リードを築くメルセデスとしては、目先のパフォーマンスを追求するよりも、2027年型マシンの開発を進める中で、比較を通して知見を得ることにより、現在の設計方針が正しいかどうかを確認する方が重要ともいえる。
チーム代表のトト・ウォルフは、新旧それぞれの仕様で何が機能し、何が機能していないかを詳しく調べ、良い部分を組み合わせながら2027年型マシンの開発の方向性を見極める考えを示した。
そのうえで、「新しいマシンは、ドライブするのが少し難しいように見える。必ずしも遅いと言っているわけではない。良い部分もあるはずで、我々がまだすべてをうまく組み合わせ、調整する方法を見つけられていないのかもしれない」と説明した。
「旧仕様のマシンはもう少し安定していて、グリップもある」
「ただ、現時点ではまだひとつのデータポイントを得たにすぎない。フリー走行も1セッションしかこなしていないし、もっと確かな結論を得るには、さらに時間が必要だ」
2026年F1シンガポールGPのスプリント予選では、マックス・フェルスタッペン(レッドブル・レーシング)がポールポジションを獲得。2番手にジョージ・ラッセル(メルセデス)、3番手にシャルル・ルクレール(フェラーリ)が続く結果となった。
スプリントは日本時間10月10日(土)18時から、公式予選は同22時から1時間に渡ってマリーナベイ市街地コースで開催される。セッションの模様はフジテレビNEXTで生配信・生中継される。