
なぜ角田裕毅ではなくローソンだったのか? リンブラッド含む3人の比較から読み解くレッドブルの選択と変化
アイザック・ハジャーの欠場を受け、レッドブルが2026年F1第12戦オランダGPでマックス・フェルスタッペンのチームメイトに選んだのは、角田裕毅でもアーヴィッド・リンブラッドでもなく、リアム・ローソンだった。
チームは選考過程の詳細を明らかにしていないが、3人を取り巻く条件を比較すると、今回の一戦でローソンを選ぶ合理性がいくつか見えてくる。
角田裕毅、111戦の経験でも代役に届かず
Courtesy Of Red Bull Content Pool
ガレージでシート合わせに向けてイヤホンを装着する角田裕毅(レーシング・ブルズ)、2026年8月20日(木) F1オランダGPメディアデー(ザントフォールト・サーキット)
まず角田には、経験という明確な強みがある。F1キャリア通算111戦を誇り、通算46戦のローソンを大きく上回るうえ、2025年にはレッドブルで22戦を戦っている。現在もレッドブルの公式リザーブを務めており、代役が必要になった際の候補として考えるのは自然だ。
一方、その22戦で角田は今シーズンのレギュラーシートを確保するだけの結果を残せなかった。
ただし、より大きな要因は現在のマシンにあると言える。角田が最後にレースを戦ったのは2025年型で、2026年の新世代マシンをドライブした経験がない。旧型マシンテスト(TPC)を通してドライビング感覚を維持してきたとはいえ、現行規則のマシンでレース週末を経験してきた他のドライバーとは、そもそも出発点が異なる。
今季導入された新世代マシンは、現役ドライバーに言わせれば「レーシングドライバーの本能に逆らう走り」が要求される。「パワーをどう使い、どう効率的に充電するか。その理解と活用次第で差がつく」とアルボンが語るように、エネルギー・マネジメント能力と戦略眼が成績を左右する。
つまり、従来型マシンとは全く異なるドライビングが求められる。
もちろん、ローソンもレーシング・ブルズからレッドブルへ乗り換える以上、新たなマシンへの適応は必要になる。それでも、2026年型マシンの特性や今季のレース週末を継続して経験しているという点では、そのハードルは角田よりはるかに小さい。
リンブラッド、初コースとスプリントの試練
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笑顔でパドックを歩くアーヴィッド・リンブラッド(レーシング・ブルズ)、2026年8月20日(木) F1オランダGPメディアデー(ザントフォールト・サーキット)
では、レーシング・ブルズで今季ローソンと戦うリンブラッドはどうか。かつてのレッドブルは若手を早い段階で昇格させ、フェルスタッペンのチームメイトという厳しい環境で力量を測るような人事を繰り返してきた。
実は今回、リンブラッドはレッドブル昇格の候補として検討されなかった。本人は、フェルスタッペンの隣に座る可能性について話し合いがあったのかと聞かれ、「火曜日に知らせを受けただけなので、分からない」と答えた。
一方で、レーシング・ブルズのピーター・バイエルCEOは「まだルーキーシーズンの途中だし、ここを走ったこともない。我々としては、彼自身のキャリアとパフォーマンスに集中してもらいたい。だから、それについて話し合うことはなかった」と明かした。
なお、ローソンが選ばれた理由についてリンブラッドは、「僕を選ぶ方が少しリスクは大きかったはずだ」と認めている。
ルーキーイヤーの折り返し地点に達したばかりのリンブラッドにとって、ザントフォールトを走るのは今回が初めてであり、さらにオランダGPは通常よりフリー走行が限られるスプリント週末だ。
「正直、ザントフォールトに来るのは今回が初めてなんだ。それにスプリント週末だし、僕はまだルーキーイヤーの半分を終えたところだから、リアムを選ぶ方が、言ってみればより論理的な判断だったと思う」とリンブラッドは語る。
「もちろんドライバーとしては、やりたかった。チャンスは欲しかった。でも同時に、チームがなぜそういう判断をしたのかは完全に理解している」
ローソン、既知の環境と現行マシンでの実戦成果
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パドックに到着し、笑顔を見せるリアム・ローソン(レッドブル・レーシング)、2026年8月20日(木) F1オランダGPメディアデー(ザントフォールト・サーキット)
ローソンには、角田の経験値やリンブラッドの将来性とは別の強みがある。2026年型マシンで今季のレースを戦い続け、レーシング・ブルズではリンブラッドをリードする成績を残してきた。
実際、両者がそろって完走したレースでは、ローソンがリンブラッドの後方でフィニッシュしたのは2戦だけだ。しかもローソンにとって、レッドブルのチーム環境は全くの未知のものではない。
一度は降格を強いられた経験を持つだけに、今回の代役は当時からどこまで成長したかを示す好機であり、2027年のグリッドに残るため、自身の価値を改めて示すチャンスでもある。
ローソンは、週末を迎える前にこなしたレッドブルでの1回のみのシミュレーター走行に触れたうえで、レーシング・ブルズとレッドブルのマシンは「大きく違う」としつつも、昨年の降格以降「多くのレースを経験し、本当に多くを学んできた。その経験をできる限り今週末に持ち込みたい」と意欲を示した。
奇妙なことに、ローソンがザントフォールトで手の負傷を理由にレッドブル系ドライバーの代役を務めるのは、これが2度目となる。
「確か3年前も、まさにここザントフォールトでダニエルが負傷して、僕が急きょ乗ることになった。あれは間違いなく、今までで一番厳しい週末だったと思う」とローソンは振り返る。
「今回はあれ以上、過酷でないことを願っているけど、間違いなく難しい週末になると想う。一方で、過去にそういう経験ができたことには感謝している。ああいう経験が、今回のような状況に備える助けになっていると思うからね」
メキーズ体制に映るレッドブル人事の変化
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レッドブル・レーシングのガレージに置かれたマックス・フェルスタッペンのヘルメット、2026年8月20日(木) F1オランダGPメディアデー(ザントフォールト・サーキット)
今回の人事は、ローラン・メキーズ体制下のレッドブルにおけるドライバー人事に対する考え方が、以前と比べて変わりつつある可能性を感じさせる。
クリスチャン・ホーナーとヘルムート・マルコが中心だった時代には、ピエール・ガスリー、アレックス・アルボン、ダニール・クビアトらを含め、若手を早期に昇格させ、トップチームで評価するような大胆な人事が繰り返されてきた。
今回も将来性だけを基準にすれば、リンブラッドを試すという選択肢は十分に考えられたはずだ。
だが、少なくとも今回のオランダGPにおける代役選考では、若手の評価機会以上に、現行マシンでの実戦経験と成果、リスクの低さが重視されたように見える。