
大型改良で一気に入賞圏へ、ではない。ニューウェイが描くアストンマーティン・ホンダ反攻の第一歩
アストンマーティン・ホンダが満を持して投入するアップグレードは、フェルナンド・アロンソとランス・ストロールがドライブするAMR26の競争力を一体どの程度引き上げるのだろうか。
F1チーム代表兼マネージング・テクニカル・パートナーを務めるエイドリアン・ニューウェイによれば、そのターゲットは一気に入賞圏内へと飛び込むことではない。まずはQ2進出、そしてポイント獲得を現実的に狙える位置へ戻ることだという。
痛みを伴う決断、小刻み改良を捨てた背景
開幕8戦でわずか1ポイントに沈むアストンマーティン・ホンダは、他チームのようにレースごとに小刻みなアップデートを投入するアプローチを採らず、一つの大型アップグレードがまとまるまで開発パーツの投入を見送る方針を採ってきた。
その第一弾が、サマーブレイク前の最終戦にあたる第11戦ハンガリーGPで投入される。
ニューウェイは第9戦イギリスGPのスプリントに先立ち、自身が「痛みを伴う決断」だったと認めるこの方針を固めた経緯を、次のように説明した。
「メルボルン[開幕戦オーストラリアGP]を終えて、小さな変更を投入してもポイント獲得の見込みがないのであれば意味がない、と判断した」
「そこで我々は、いったん自分たちへのプレッシャーを少し緩め、立て直しを図り、将来に向けた体制を整えたうえで、きちんとしたアップグレードに取り組むことにした」
シャシー性能を問うハンガリーでの第一弾
Courtesy Of Red Bull Content Pool
2023年F1ハンガリーGPでハンガロリンクを走行するマックス・フェルスタッペン(レッドブル)-2023年7月23日
第一弾のアップグレードが投入されるハンガリーGPは、7月24日(金)から26日(日)にかけて開催される。舞台となるハンガロリンクは、車体改良の効果を測るうえでこれ以上ないほど適したコースだ。
ハンガロリンクはエンジンパワーへの依存度が低く、低速主体でうねるように連続するコーナーが特徴のレイアウトは、パワーユニット(PU)ではなく、むしろ高いシャシー性能を要求する。
重量超過とダウンフォース不足に苦しんできたAMR26にとって、その弱点がどのくらい改善されたのかを問う舞台としてはもってこいといえる。
オランダで見据えるQ2と入賞圏内
ニューウェイは、夏休み明けの初戦となる第12戦オランダGPでも、さらに開発パーツを持ち込む予定であることを明かした。ホンダのアップグレード版PUの投入と併せて、さらにパッケージを前進させる計画だ。
ただし、ニューウェイの見通しは慎重だ。チームがオランダGPの時点で目指しているのは、即座にトップ10を確約するマシンを用意することではない。
「その段階では、少なくともポイントを狙える位置にいたい。トップ10に入れるとは言わないが、少なくともQ2に進めるようになれば、そこから可能性を見ていける」とニューウェイは説明した。
これまでに25個もの世界タイトルを支えてきた天才デザイナーの言葉としては控えめな目標と言えるかもしれないが、第9戦イギリスGPの予選で2台がなお最後尾に沈む今の状況を踏まえれば、その慎重さもうなずける。
ニューウェイは、アップグレードによって大幅なタイムの改善を見込みつつも、シミュレーションツールの精度がまだ十分でないとして、具体的な数値を挙げることには慎重な姿勢を崩していない。
もっとも、シルバーストン・サーキットでAMR26は予選11番手に対して約2.5秒の遅れを抱えていただけに、入賞圏内を目指すQ2上位、つまり11~13番手あたりであっても、途方もないギャップを埋める必要がある。その点で、「控えめな目標」とは言えない側面もある。