
アストンマーティン・ホンダ、ハンガリーGPでAMR26大改修へ。「痛みを伴う決断」で挑む空力刷新と大幅な軽量化
アストンマーティン・ホンダは、7月24〜26日に行われるF1ハンガリーGPでAMR26に大型アップグレードを投入する。F1チーム代表兼マネージング・テクニカル・パートナーを務めるエイドリアン・ニューウェイが明らかにした。
希代の天才デザイナー、ニューウェイが設計したマシンに、近年レッドブルとともにタイトルを獲得してきたホンダのパワーユニット(PU)が組み合わされることから、アストンは新たな技術規則の時代の有力候補と見られていた。
だが、ここまでの現実は極めて厳しい。開幕からの8戦で獲得したポイントは、モナコGPでフェルナンド・アロンソが獲得した1点にとどまり、キャデラックの改善もあって、ここ数戦は最後尾を占める構図が深まっている。
Courtesy Of Aston Martin Lagonda Limited
レッドブル・リンクで順位を争うアストンマーティン・ホンダのフェルナンド・アロンソとランス・ストロール、2026年6月28日(日) F1オーストリアGP決勝
「痛みを伴う決断」で挑む空力刷新と大幅な軽量化
アストンは他チームのように毎戦小刻みなアップデートを投入するアプローチを採らず、一つの大型アップグレードがまとまるまで開発パーツの投入を見送ってきた。ニューウェイが「痛みを伴う決断」と認めるこの方針が、短期的な苦戦に拍車をかけてきた。
2026年F1第9戦イギリスGPを前に、チーム公式サイトのインタビューの中でニューウェイは、ハンガロリンクでアップグレードを投入することを明らかにし、その中身についてこう説明した。
「ハンガリーで両車にアップグレードを投入する計画だ。主要な構造要素は変わらない。シャシーとギアボックスのアーキテクチャは根本的には変わらないが、その両方から重量を削った。そのためシャシー前部の再ホモロゲーションとクラッシュテストが必要だった」
このアップグレードは、巷で取り沙汰されてきた「Bスペック」と呼べるほどの大幅な刷新やコンセプトの転換ではない。ダウンフォース不足と重量超過という、AMR26で表面化した弱点への対処に焦点が置かれている。AMR26は768kgの最低重量を10〜15kg超過しているとされる。
「フロント・サスペンションに変更はない。リア・サスペンションはわずかに改良した。また、新しいノーズを開発し、空力面を大幅に見直した」とニューウェイは続ける。
「従って基本構造は似ているが、大幅な軽量化と相まって、大規模な空力パッケージになっている。目標は最低重量制限に近づけることだ」
パフォーマンスの向上幅については慎重な姿勢を崩さなかった。
「大きな前進を見込んでいるが、具体的な数字を出すことには慎重でいたい。なぜなら、我々のシミュレーション・ツールは、まだ必要なレベルほど洗練されておらず、相関も十分に取れていないからだ」
Courtesy Of Aston Martin Lagonda Limited
グリッド上でレース開始を見守るアストンマーティン・ホンダのチームスタッフ、2026年6月28日(日) F1オーストリアGP決勝(レッドブル・リンク)
ニューウェイは、エンジニアリングのシミュレーションツールへの投資が歴史的に不十分だったとし、その改善には時間がかかると説明した。
「今その投資を進めているが、こうしたツールは一夜にして書き換えて検証できるものではない。実車と適切に相関させるには時間がかかる。今は改善しつつあるが、その作業による真の成果は、今年の後半に表れてくるだろう」
また、「フェルナンドはこのアップグレードを本当に楽しみにしている」と明かしつつ、今回のアップグレードが設計通りに機能すれば、アロンソの2027年残留を促す材料になると期待を示した。
ジョーダン時代のツールが招いた製造遅延
ニューウェイは、シーズン序盤への期待が過大だったことを認めた。問題の根には、新車の設計開始が遅れたことや、チームの運営体制がまだ十分に強固でなかったことがあるという。
ニューウェイによれば、2026年型マシンの本格的な設計作業が始まったのは2025年3月中旬で、風洞でのモデル・テストはその1カ月後までずれ込んだ。
ニューウェイは、「急いで設計すると、最初に犠牲になるのは重量だ。すべてを徹底的に最適化する時間がないからだ」と説明したうえで、空力面においても複数のコンセプトを深く検討する余裕のないまま、自らが強く主導する形で大胆な方向へ進んだと明かした。
また、チームの設計ツールやプロセスそのものの古さにも踏み込んだ。
「我々は、何年にもわたって継ぎはぎされ、応急処置を重ねられてきたツールとプロセスに依存していた。その一部は、アストンマーティンがグリッドに復帰する遥か以前、ここシルバーストンを拠点としていたジョーダン時代の最初期にまでさかのぼる」
ニューウェイは、こうした問題が部品の手配の遅れといった「非常に苛立たしいマシン製造」を招いたと説明し、アストンは人の問題というより構造的な問題を抱えていると指摘。「我々はこの困難な時期を、自分たちの働き方を全面的に見直す機会として捉えている」と語った。