
鍵は「300mmの移動」 ニューウェイが語るアストンマーティン・ホンダAMR27飛躍への勘所
アストンマーティン・ホンダは、すでに2027年型F1マシンの根本設計に着手しており、今季後半の「着実な前進」を経て、「AMR27」と命名されることが予想される新型マシンで「さらに大きな飛躍」を遂げる計画だ。
AMR27、根本設計で狙う新たな飛躍
ハンガリーGPで「AMR26」に投入されるアップグレードは、一部で噂されていたような「Bスペック」といった全面刷新ではない。基本構造を踏襲しつつ、大幅な軽量化と空力の刷新を行う大規模アップグレードとなる見通しだ。
だが、「AMR27」は単なるアップグレード・パッケージではない。
アストンマーティン・ホンダのチーム代表兼マネージング・テクニカル・パートナーを務めるエイドリアン・ニューウェイは、チーム公式サイトのインタビューで、2027年に向けたプロジェクトをすでに開始していると明かした。
「今は初期のリサーチ段階にある。現時点では、ホイールベース内のどこにエンジンを配置するか、シャシーをどう配置するかといったアーキテクチャに関する重要な決定、そしてリードタイムが非常に長いパーツに影響を与える根本的な選択について検討している」
「我々はフロントとリアのサスペンション・コンセプト、ギアボックスの形状など、空力に大きな影響を及ぼすすべての要素を検討している」
同じ轍は踏まない。早期の製造移行
Courtesy Of Aston Martin Lagonda Limited
切削加工機で金属部品を精密加工する様子、2023年 シルバーストンに位置するアストンマーティンのファクトリーにて
ニューウェイが2027年型マシンで重視しているのは製造時期だ。AMR26では、設計の出遅れに加え、「ジョーダン時代の最初期」にまでさかのぼる時代遅れのツールやプロセスが足かせとなり、開発と製造に遅れが生じた。
そのため、2027年に向けて同じ過ちを繰り返さないよう、ツールやプロセスをアップデートし、早い段階で基本設計を固める計画だ。
「重要な目標のひとつは、2027年型マシンを開発プロセスのより早い段階で製造に移行させることだ。そうすれば、今年と同じようなプレッシャーを全員に強いることはなくなる」とニューウェイは語る。
「それにより、重量や剛性、細部をはるかに効果的に最適化できるはずだ」
AMR27の鍵を握るTトレイ変更
2027年には、パワーユニット(PU)とシャシーの両面で規則変更が入る。PU側では、燃料が5%増え、エネルギー回生とデプロイメントにも調整が加えられる。シャシー側の変更は数こそ少ないものの、影響は小さくない。
ニューウェイは、アストンマーティン・ホンダにとって最も重要な変更点は、フロア前方にある「ビブ」または「Tトレイ」と呼ばれる部分とみている。
「Tトレイの前端が約300mm移動するため、マシンの前方をより低く設定できるようになる。これにより空力特性が変化することになる」とニューウェイは指摘する。
「我々にとって鍵となるのは、このフロア前部の変更だ。これにより各チームは、解決すべき新たな空力上の課題を抱えることになる」
もっとも変更点はTトレイにとどまらない。
「ダウンフォースを減らすためにリアウイングもやや浅くなり、フロア前部にもいくつかの変更がある。『ベアクロー』あるいは『フィンガー』と呼ばれるものは5本から3本に減り、各チームが排気やリアウイング周辺で使ってきたさまざまな仕掛けも取り除かれる」とニューウェイは語る。
苦戦の12カ月が育てた組織力と飛躍の芽
2026年シーズンの苦戦は、ハンガリーGPのアップグレードによりいくらか収まる可能性がある。ただ、それは表彰台争いを可能にするものではなく、ましてやチームが掲げるタイトル争いに届くものでもない。
一方でニューウェイは、現在の苦境を、チームがより強くなるために必要な過程とみている。この12カ月でチームが組織として急速に成長したことが、2027年の規則変更への対応で強みになると考えている。
「正直に言えば、今は試練の時期だ。だが、より強くなるためには、おそらく通らなければならないものだ。シーズン後半に着実な前進を果たし、来シーズンにはさらに大きな飛躍を遂げられるはずだ」とニューウェイは語る。
「この12カ月間で我々は、チームとして急速に成長することを余儀なくされてきた。そのおかげで、1年前よりもはるかに良い状況にあり、レギュレーションの変更を活用することができる」
「我々は今や、はるかに成熟した組織になっている。だからこそ私は、今後の展開について非常に楽観的に見ている」