「うちのシェフでも運転できる」アロンソが語るF1マシンの異変、2026年規定で消えた“極限のコーナー”

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2026年、F1は史上最大級のレギュレーション変更という転換点を迎えた。カーボンニュートラルな持続可能燃料の導入、そしてパワーの約半分を電気エネルギーが担う新世代パワーユニット(PU)。テレビ画面に映るマシンは一見、これまでと変わらぬF1の姿を保っているが、そのコクピットの中では、これまでのレーシングドライバー像を根底から覆すような事態が起きている。

全開で走ることを禁じられたドライバー

新世代マシンは、慢性的なエネルギー不足に直面している。MGU-Kの担う役割は大幅に増加したものの、バッテリーのサイズはさほど変わっておらず、ドライバーはストレートやコーナーを全開で駆け抜けるのではなく、エネルギーを節約しつつ、強制的に回生を行うようなドライビングを強いられている。

例えばコーナーでは、続くストレートでエネルギーを使用するために、よりアグレッシブにシフトダウンを行って回生を促し、これまでより低い速度で通過しなければならない場面が増えている。一方で、意図的に速度を落とさなければならないのはコーナーだけではない。ストレートにおいても、極端なリフト・アンド・コーストが行われている。

ジョージ・ラッセル(メルセデス)が指摘するように、今季のF1ドライバー達は「常に最速で走る」のではなく、「1周全体を通してエネルギーの使用を最大化する走り」を強いられている。その結果、グリップの限界を攻めるような場面は激減した。2度のF1王者、フェルナンド・アロンソ(アストンマーティン・ホンダ)は、この現状を独特かつ痛烈な比喩で表現する。

バーレーン・インターナショナル・サーキット(F1バーレーンGP)のコースレイアウト図copyright Formula1 Data

バーレーン・インターナショナル・サーキット(F1バーレーンGP)のコースレイアウト図

バーレーン・インターナショナル・サーキットのターン12は、かつてドライバーの腕の見せ所だった難所だ。チームは、この区間をエンジン全開で駆け抜けるために、クルマのダウンフォースレベルを削った。

だがアロンソに言わせれば、今やターン12はチームの料理人でも運転できるほど、グリップの限界からは程遠いコーナーになってしまったという。

「以前は時速260kmだったけど、今はストレートでエネルギーを使うために温存しなきゃならず、50km/hも遅い」とアロンソは明かす。「260km/hではなく200km/hで走るなら、僕じゃなくて、うちのシェフでもドライブできる」

新たな技術規定が生み出した今季のマシンについて、マックス・フェルスタッペン(レッドブル)は「アンチ・レーシング(レースに反する)」と呼び、走る喜びが失われたと告白。「ステロイドを打ったフォーミュラEのようだ」と批判している。

アロンソは、フェルスタッペンの見解は理解できるとして、「ドライビングスキルの影響が減った」と認める。

セッション開始に向けてガレージ内で「AMR26」に乗り込むフェルナンド・アロンソ(アストンマーティン・ホンダ)、2026年2月12日F1プレシーズンテスト2日目(バーレーン・インターナショナル・サーキット)Courtesy Of Aston Martin Lagonda Limited

セッション開始に向けてガレージ内で「AMR26」に乗り込むフェルナンド・アロンソ(アストンマーティン・ホンダ)、2026年2月12日F1プレシーズンテスト2日目(バーレーン・インターナショナル・サーキット)

変わりゆくF1の「支配要因」

一方で、アロンソはこの変化を冷静に捉えている。「今はエネルギーがテーマになっているけど、ここ数年はダウンフォースが鍵だった。マックスがあらゆるレースで勝ち続けていた当時、僕らが時速250kmで曲がるコーナーを、彼は280kmで曲がっていた」

支配的な要素が空力からエネルギーマネジメントに移り変わっただけであり、これも長きにわたるF1の歴史の一部であるとして、通算425戦、F1キャリア22年を誇るアロンソは、この新しいルールに対する結論を保留した。

「僕らは今でもモータースポーツを愛しているし、競い合うことを楽しんでいる」

幾世代ものマシンをドライブしてきた大ベテランの言葉の裏には、その時代ごとの最適解を見つけ出そうとする飽くなき探究心と、それを受け入れ楽しもうとする柔軟な姿勢があった。