
2026年F1パワーユニット規定に「第2の抜け穴」浮上―FIA、燃料流量計の”測定値トリック”に対処か
2026年のF1レギュレーションにおけるパワーユニット規定のグレーゾーンは、すでに問題が表面化している圧縮比上限だけではないようだ。
「第2の抜け穴」として浮上しているのが、燃料流量計に関する規定だ。師走という年の節目にレギュレーションに修正が加えられた。パドックではこれを、FIAが「抜け穴封じに動いた兆候」と受け止める向きが多い。
規定変更の焦点は、チームが意図的に燃料流量計そのものの温度に影響を与え、流量計が示す値を変化させるというトリックを塞ぐことにあるようだ。
新燃料導入で変わる測定方式
Courtesy Of Red Bull Content Pool
エクソンモービルが2021年型ホンダ製F1パワーユニットRA621H用に開発した新燃料シナジー・レース・フューエル
2026年に100%持続可能燃料が導入されるのに伴い、最大質量流量100kg/hという従来の上限に代わり、3000MJ/hという燃料エネルギー流量制限が採用される。
この変更により、本ルールの遵守状況を確認する手法も変更された。従来はチーム管理用とFIA管理用の2基の燃料流量計が使われていたが、2026年からはAllengra社製の標準ユニット1基に統一される。チームとFIAが同一データへアクセスする形だ。
一見すると透明性は高まり、不正の余地は縮小したようにも映る。だが、チームは常に規則の抜け穴を探し続ける存在だ。
10月から12月への文言変更
10月時点のレギュレーションには、「燃料流量計を意図的に加熱または冷却することは禁止される」と明記されていた。だがこの一文は後に削除され、12月に次の表現へ置き換えられた。
「燃料流量計の温度変更を目的とする、いかなるデバイス、システム、または手順も禁止とする」
当初の文言では、周辺機器の廃熱や配管レイアウトを理由に「結果的に温度が変化しただけ」と主張できる余地が残る。一方で新たな文言からは「そうした言い逃れは許さん」とするようなFIAの厳しい姿勢が読み取れる。
燃料の温度依存性という盲点
燃料は温度によって性質が変化する。密度や粘度、さらには超音波の伝播特性までが変わり、流量計の推定値に影響を与え得る。
持続可能燃料は成分設計の自由度が高いとされるだけに、温度依存性を突いた「測定時だけ異なる振る舞い」を誘発する発想が生まれても不思議ではない。たとえば、流量計を通過する瞬間のみ密度を変化させ、実際のエネルギー流量を過小評価させる――理論上はそうしたトリックも考えられる。
ルールがより厳格に書き換えられた背景には、チーム側のこうした可能性を未然に封じる狙いがあると推察される。ただし、この変更が、実際にその手法が使われていた事実を示すものとは限らない。
一方で、ライバルチームが規則のグレーゾーンに対する懸念をFIAに提示し、抜け道を塞ぐよう促す例は珍しくない。今回の修正も、そうした予防的措置である可能性は十分にある。
メルセデスとレッドブル・パワートレインズ(RBPT)が、いわゆる「熱膨張トリック」を用いて圧縮比上限を回避しているとされる疑惑も含め、できたてホヤホヤの次世代パワーユニットに関する規定には、他にも未知の「抜け穴」が存在する可能性がありそうだ。