
メルセデスF1、パワーユニット供給チーム数を「削減」へ―ウォルフが明かす次世代に向けた戦略転換
メルセデスF1チームのトト・ウォルフ代表兼CEOは、将来的にパワーユニット(PU)を供給するカスタマーチームの数を削減する意向を明らかにした。
長きにわたりF1グリッドで最大勢力を誇り、V6ハイブリッド時代を牽引してきたメルセデスだが、来たる新たなエンジン規則の導入を前に、その戦略を転換しようとしている。
理想的な供給数は「2〜3チーム」
現在、メルセデスは自身のワークスチームに加え、今季コンストラクターズ連覇を果たしたマクラーレン、ウィリアムズ、そしてアストンマーチンの計4チームにPUを供給している。
来季からはアストンがホンダPUへと切り替わる一方、自社製ルノーPUの開発を終了するアルピーヌが新たにメルセデスユーザーとなるため、依然として4チーム体制は維持される。契約上は全チームが2030年までの契約を結んでいる状態だ。
Courtesy Of Alpine Racing
ラスベガス市街地コースでアルピーヌA525を駆るフランコ・コラピント、2025年11月20日(木) F1ラスベガスGPフリー走行
だが、ウォルフはメルセデス・ベンツ・グループのオラ・ケレニウス会長と協議の上、この規模を縮小する方針を固めている。
「オラ(ケレニウス)とも話し合っているが、我々の現在の考えとしては、次のサイクルでは供給するチームの数を減らすつもりだ」
ウォルフはそう語り、理想的な供給数は「2〜3チーム」であるとの見解を示した。その最大の理由は、製造と物流の負担だ。4チームに供給するということは、開幕戦に向けて合計16基ものパワーユニットを用意しなければならないことを意味する。
「もしホンダのように単独供給であれば、4、5基で済む。つまり、我々はより長いリードタイムと、長い生産サイクルを強いられることになる。これらを考慮すれば、将来的には4チーム供給という形ではなくなるだろう」
Courtesy Of Daimler AG
メルセデスAMGペトロナスF1チームのトト・ウォルフ代表、INEOSのジム・ラトクリフ卿、ダイムラーのオラ・ケレニウス会長
メリットとデメリットの狭間で
一方で、現場でPU開発を指揮するメルセデスAMGハイ・パフォーマンス・パワートレインズ(HPP)のマネージングディレクター、ハイウェル・トーマスは、供給削減によるメリットとデメリットの狭間で揺れている。
「過去の実績が示す通り、複数のチームを持つことは、より多くのデータ、より多くの情報、そしてより多くの走行距離を確保できるということだ」とトーマスは語る。
「4倍の数のエンジニアたちが『いや、ここはもっとこうできる』『あそこはこうすべきだ』とフィードバックをくれる。常にそう感じられるわけではないが(笑)、優れた製品を作る上で、それが有益であることは間違いない」
Courtesy Of Mercedes-Benz Grand Prix Ltd.
ハイウェル・トーマス(メルセデスAMGハイパフォーマンス・パワートレイン マネージングディレクター)、2024年
だが、ハードウェアの製造負担は無視できないレベルに達している。
「その裏返しとして、我々は大量のハードウェアを作らなければならない。そのためには、設計上の決定を(ライバルより)早く下す必要がある」
「1チームが正解なのか、4チームなのかは分からない。だが、スイートスポット(最適解)は間違いなく存在し、それは1チームよりは4チームに近いところにあると思う」
現場はデータを欲し、経営は効率とスピードを求める。マクラーレンという強力なライバルにPUを供給しながら、自らも王座奪還を目指すメルセデス。次世代に向けた「陣営縮小」の決断は、吉と出るか、それとも凶と出るのか。そして弾かれる、あるいは去るのは、どのチームになるのだろうか。