【正式発表】マルコ、2025年限りで辞任「今こそ、この章を閉じる時」レッドブルF1黄金時代の最後の巨頭が退く

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レッドブル・レーシングにおける一つの時代が終わりを告げた。レッドブルは12月9日、モータースポーツ・アドバイザーを務めるヘルムート・マルコが、2025年シーズン限りで同職を退任することを正式に発表した。

わずか2ポイント差でタイトルを逃した2025年シーズンの悔しさが、60年のモータースポーツキャリアを歩んできた老兵に引き際を悟らせたという。

レッドブルの共同創業者ディートリッヒ・マテシッツ、鬼才エイドリアン・ニューウェイ、そして長年チーム代表を務めたクリスチャン・ホーナー。そして今、黄金時代を支えた最後の巨頭が、ミルトン・キーンズから姿を消す。

優勝を喜ぶレッドブルのヘルムート・マルコ、エイドリアン・ニューウェイ、クリスチャン・ホーナー、2022年5月8日F1マイアミGPにてCourtesy Of Red Bull Content Pool

優勝を喜ぶレッドブルのヘルムート・マルコ、エイドリアン・ニューウェイ、クリスチャン・ホーナー、2022年5月8日F1マイアミGPにて

「今こそが、この章を閉じる時」──自ら決めた引き際

マルコの現行契約は2026年末まで有効だったが、最終戦アブダビGPの翌日にヤス・マリーナ・サーキットで行われた、オリバー・ミンツラフ(レッドブル社・企業プロジェクト/新規投資部門CEO)らトップマネジメントとの会談で、退任が最終決定された。

これまで数々の非情なドライバー人事を下してきた“ドクター”が、最後に下した決断は「自身の引き際」だった。マルコは、今季の激闘が自身の心境を大きく変えたと語る。

「私は60年にわたってモータースポーツに携わってきたが、レッドブルでの過去20数年は、並外れて成功に満ちた旅だった。多くの才能ある人々と作り上げ、共有してきたこの素晴らしい時間は、私の誇りだ」

「今シーズン、僅差でワールドチャンピオンシップを逃したことは、私を深く動かした。そして、個人的にこの非常に長く、濃密で、成功した章を終わらせるには、今が適切な時なのだと気付かされた」

ランド・ノリス(マクラーレン)にわずか2ポイント届かず、マックス・フェルスタッペンがタイトルを逃した2025年。その悔しさが、82歳の老兵に「退き時」を悟らせたようだ。

「チームの今後の成功を願っている。そして、来年も再び両チャンピオンシップを争うと確信している」

自らの意思による”辞任”──ミンツラフが敬意を表明

決勝前のパドックを歩きながら会話するヘルムート・マルコ(レッドブル・レーシング コンサルタント)とオリバー・ミンツラフ(レッドブルGmbH マネージングディレクター)、2025年12月7日(日) F1アブダビGP(ヤス・マリーナ・サーキット)Courtesy Of Red Bull Content Pool

決勝前のパドックを歩きながら会話するヘルムート・マルコ(レッドブル・レーシング コンサルタント)とオリバー・ミンツラフ(レッドブルGmbH マネージングディレクター)、2025年12月7日(日) F1アブダビGP(ヤス・マリーナ・サーキット)

ミンツラフによれば、今回の退任は解任ではなく、マルコ本人の意思による辞任だという。ミンツラフは長年の功労者の決断を尊重し、その功績を称えた。

「ヘルムートから年末で役割を終えたいという申し出があった。非常に残念だ。というのも、彼は20年以上にわたり影響力を持ち続けてきた人物であり、その退任は“並外れた時代”の終わりを意味するからだ」

「長く深い議論を重ねる中で、彼がこのタイミングを適切だと感じていることを理解し、私はその意思を尊重すべきだと悟った」

ミンツラフは、マルコの「情熱」「明確な決断力」、そして「潜在能力を見抜く力」を称賛した。

一方で、オランダメディアの報道では、ジュニアドライバー選考をめぐるレッドブル本社側との衝突が退任の背景にあるとされる。これは元マクラーレン育成のアレックス・ダンが関連していると伝えられている。

18人のF1ドライバーを輩出──才能発掘者としての功績

マルコの“第2のキャリア”は、1972年フランスGPでの事故で失明し、レーシングドライバーとしてのキャリアが断たれたことで始まった。自らが叶えられなかった道を、次代の才能に託す──それが彼の使命となった。

1999年、レッドブル・ジュニアチームを立ち上げて育成プログラムを統括。厳しい選定のもと、これまで18人がF1デビューを果たした。これには、4度の王者セバスチャン・ベッテル、現代F1を代表するマックス・フェルスタッペン、そして角田裕毅らが含まれる。

決勝前、フォレストF1ガレージで談笑するセバスチャン・ベッテルとマックス・フェルスタッペン(レッドブル・レーシング)、2025年11月9日(日) F1サンパウロGP(インテルラゴス・サーキット)Courtesy Of Red Bull Content Pool

決勝前、フォレストF1ガレージで談笑するセバスチャン・ベッテルとマックス・フェルスタッペン(レッドブル・レーシング)、2025年11月9日(日) F1サンパウロGP(インテルラゴス・サーキット)

2005年のF1参戦以降は、レッドブルとトロ・ロッソ(現レーシング・ブルズ)双方のアドバイザーを務め、8度のドライバーズタイトル、6度のコンストラクターズタイトル獲得に寄与した。

ベッテルの4連覇(2010〜2013年)、フェルスタッペンの4連覇(2021〜2024年)。レッドブル黄金期の中心には、常にマルコが発掘した才能があった。

一方で、冷徹な判断でも知られた。数戦で降格を命じられる者もいれば、シーズン途中に突然昇格を告げられる者もいた。マルコの決断は常に迅速で、また容赦がなかった。

「旧体制」の完全なる終焉

マルコの退任は、レッドブルがF1を席巻した“第1章”の完全な幕引きを意味する。

2022年10月にマテシッツがこの世を去ると、2024年には技術部門の要であるニューウェイが離脱。今夏には、創設時からチーム代表を務めてきたクリスチャン・ホーナーがチームを追われた。そして今、マルコが退く。

これで、レッドブルを支えてきた「四巨頭」──マテシッツ、ニューウェイ、ホーナー、マルコの全員が、ミルトン・キーンズのチームから姿を消すこととなった。