角田裕毅、不運と理不尽のラストラン―防壁役の裏側とペナルティへの反発。「鍛えてやった」ウイットな感謝…そして次章へ

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2025年F1最終戦アブダビGP。角田裕毅(レッドブル・レーシング)にとって、この週末はF1レギュラードライバーとしての一つの区切りとなる舞台だった。

来季のシート喪失が発表されて数日という慌ただしい流れの中で迎えた、レッドブルでの最終戦。角田は僚友マックス・フェルスタッペンの逆転タイトルのため、自身のレースを投げ打つ覚悟で挑んだ。

だが、その役割を果たす過程で発生したランド・ノリス(マクラーレン)との攻防の最中に科された5秒ペナルティが響き、14位でフィニッシュ。入賞には届かなかった。それでも角田は胸を張る。

「少なくとも全力は尽くしましたし、自分ができることは示せたと思います」

決勝前のガレージでエミリー・ラタコウスキー、ジェイソン・ステイサムと並ぶ角田裕毅(レッドブル)、2025年12月7日(日) F1アブダビGP(ヤス・マリーナ・サーキット)Courtesy Of Red Bull Content Pool

決勝前のガレージでエミリー・ラタコウスキー、ジェイソン・ステイサムと並ぶ角田裕毅(レッドブル)、2025年12月7日(日) F1アブダビGP(ヤス・マリーナ・サーキット)

逆転王座へ捧げた「防壁役」

アブダビGPはドライバーズタイトルの決着戦だった。ランキング首位のノリスと、12点差で追うフェルスタッペン。フェルスタッペンが逆転王座を掴むには自身が優勝し、かつノリスが4位以下に沈む必要があった。

だが、ノリスは3番手スタート。淡々とした展開ではフェルスタッペンに望みはない。そこで角田に与えられた役割は明快だった。ノリスの前に立ちふさがり、わずかでもタイムを削ること。たとえ自分の順位を犠牲にしても、その任務を果たす必要があった。

予選10番手の角田は、ハードタイヤを履いて第1スティントを引っ張り、レース中盤のピットストップによって背後へ迫ったノリスと激しい攻防を繰り広げた。その応酬が、ペナルティという重い代償を招くことになる。

ランド・ノリス(マクラーレン)を後方に抑える角田裕毅(レッドブル)、2025年12月7日(日) F1アブダビGP決勝レース(ヤス・マリーナ・サーキット)Courtesy Of Red Bull Content Pool

ランド・ノリス(マクラーレン)を後方に抑える角田裕毅(レッドブル)、2025年12月7日(日) F1アブダビGP決勝レース(ヤス・マリーナ・サーキット)

ノリスが背後から迫る中、ピットウォールからは「追いつかれたら全力で守れ」との指示が飛び、これに対して角田は「何をやるべきかは分かってる」と応じた。レース後、角田はその時の心境を振り返った。

「無線で絶えずフィードバックがあって、チームのストレスが伝わってきたので、『いいか、やるべきことは分かっている。話し合っただろ。守り切るために全力を尽くすから』という感じで伝えました」

「彼(ノリス)を簡単に先に行かせるメリットは僕にはありません。ただ、彼が接近してくるのはあまりに速かったんです」

「いつも通り」の理不尽、運に見放された終盤戦

2人が交錯したのはバックストレートからターン6にかけての場面だった。角田は、追い付かれるまでに少なくともあと1周はあるとの想定で防衛策を考えていたが、ノリスの猛烈なペースがそれを狂わせた。

「彼は1周あたり0.5秒ずつ縮めてきていたので、もう1周くらいは持ちこたえられると思っていました。でも、ターン1からターン5までの区間で一気に差を削られました」

読みを超えて迫ったノリスに対し、角田はスリップストリームを断ち切るために、ストレートで走行ラインを変更しながら防戦した。”スリップ切り”は、後続との距離が十分ある場合に限り、スチュワードの裁量で認められることがある。

だが審議の結果、「複数回にわたって進路変更を行った」と見なされ、ノリスは接触を避けるためにコース外に逃げざるを得なかったとの結論が下り、角田には5秒ペナルティが科された。

5秒の代償は大きかった。単純計算ではこれがなければ9位フィニッシュしていたはずだが、実際には入賞圏外14位に終わった。この裁定について、角田はレース後も納得していない。

「少なくともポイントは取りたかったのですが、、またしてもよく分からないペナルティを受けました。まあ正直、“いつもどおり”という感じですけど」

さらにシーズン後半の不運の連鎖についても言及した。

「正直、僕は“運”という言葉はあまり使いたくないんですが、本当に、運がなかったと深く感じています。どのセッションでも、どの週末でも、必ず何かが起きていました」

「今週もそうです。旧型フロアに戻さなければならなかったのは、僕にはどうしようもなかったことですし。ピットレーンでの出来事もあり、レースでも疑問符がつくペナルティがあり…結局、一度も“普通のレース”ができませんでした」

ベルギーでのピットイン指示遅れ、ラスベガスでのタイヤ内圧設定ミス、アブダビでのアントネッリとの接触、それに伴う旧仕様フロアへのロールバック、そしてレース中のペナルティ。角田の終盤戦は、ペース改善の一方で逆境の連続だった。

ドライバーズパレードで手を振る角田裕毅(レッドブル)、2025年12月7日(日) F1アブダビGP(ヤス・マリーナ・サーキット)Courtesy Of Red Bull Content Pool

ドライバーズパレードで手を振る角田裕毅(レッドブル)、2025年12月7日(日) F1アブダビGP(ヤス・マリーナ・サーキット)

ウイットに富んだメカニックへの感謝

最後まで苦境は続いたが、チームと共に過ごした時間に悔いはないようだ。特に、シーズンを通して幾度となく夜通しでセットアップ変更に取り組んでくれたメカニックたちに対しては、独特のユーモアで感謝を示した。

「すごく楽しかったです。特にメカニックたちとの時間は。彼らから受けたサポートは本当に素晴らしかったです」

「まあ多分、何人かは僕のことを嫌っていたと思いますけどね! FP3から予選にかけて、夜通しで大幅なセットアップ変更を何度もお願いしたので」

角田はメカニックの労を労いながらも、彼らしいジョークで場を和ませる。

「でも、昨日ふと思ったんですけど、少なくとも彼らを鍛えたんだなと(笑)。実際、かなりキレッキレになりましたし。なので、きっと僕に感謝してるはずです!」

決勝を前に担当レースエンジニアのリチャード・ウッドと話す角田裕毅(レッドブル・レーシング)、2025年6月1日(日) F1スペインGP決勝(カタルーニャ・サーキット)

決勝を前に担当レースエンジニアのリチャード・ウッドと話す角田裕毅(レッドブル・レーシング)、2025年6月1日(日) F1スペインGP決勝(カタルーニャ・サーキット)

「最高のドライバー」勝者たちへのリスペクト

自身のレースは波乱に満ちていたが、角田は激闘を制した勝者たちへの祝福を忘れなかった。

「ランド、本当におめでとう。彼はシーズンを通して素晴らしい走りを見せ、今夜も堅実な走りで初のタイトルを勝ち取りました」

ノリスはわずか2ポイント差でフェルスタッペンを振り切り、悲願のドライバーズタイトルを獲得した。

優勝を祝ってガレージ前で歓喜のシャンパンファイトを繰り広げるマックス・フェルスタッペン、角田裕毅、ヘルムート・マルコ(いずれもレッドブル)とチームメンバー、2025年12月7日(日) F1アブダビGP決勝レース(ヤス・マリーナ・サーキット)Courtesy Of Red Bull Content Pool

優勝を祝ってガレージ前で歓喜のシャンパンファイトを繰り広げるマックス・フェルスタッペン、角田裕毅、ヘルムート・マルコ(いずれもレッドブル)とチームメンバー、2025年12月7日(日) F1アブダビGP決勝レース(ヤス・マリーナ・サーキット)

フェルスタッペンはアブダビでポール・トゥ・ウインを飾り、今季最多の8勝目を上げたものの、奇跡を起こすには至らなかった。それでも、チームメイトとして間近でその背中を見てきた角田は、最大級の賛辞を贈った。

「優勝したマックスにもおめでとうと言いたいです。驚異的なシーズンでした。彼とチームは最後まで諦めずに戦い抜き、本当にあと一歩のところでタイトルを逃す事になりました」

「彼はグリッド上で最高のドライバーです。彼の仕事ぶりや、すべてを引き出す姿を目の当たりにすると、彼が如何に優れているかが分かります。それに相応しいメンタリティも兼ね備えていて、見ていて本当に刺激を受けました」

「サヨナラじゃない」――そして次章へ

レギュラードライバーとしてのシートは失うが、これで角田のF1人生が終わるわけではない。最後に彼は、こう締めくくった。

「シーズンを通して支えてくれたエンジニア、メカニック、そしてチーム全体に感謝します。来シーズンもここにいるので、これが本当のお別れというわけではありませんけどね」

2026年、角田はテスト兼リザーブドライバーとしてレッドブルに残る。それは、再びレギュラーシートを掴むためのチャンスを待つポジションだ。

角田は今季、キャリア最多となる33ポイントを稼いだが、最終的なランキングはキャリアワーストタイの17位に終わった。だが、その数字以上にやりきったという達成感、そしてプライドを胸に、彼は一旦ヘルメットを置く。

メキーズ代表「ユーキに感謝したい」

マックス・フェルスタッペンの優勝を祝うレース後のピットレーンで話をする角田裕毅(レッドブル・レーシング)とヘルムート・マルコ、2025年12月7日(日) F1アブダビGP決勝(ヤス・マリーナ・サーキット)Courtesy Of Red Bull Content Pool

マックス・フェルスタッペンの優勝を祝うレース後のピットレーンで話をする角田裕毅(レッドブル・レーシング)とヘルムート・マルコ、2025年12月7日(日) F1アブダビGP決勝(ヤス・マリーナ・サーキット)


2025年F1最終第24戦アブダビGPでは、マックス・フェルスタッペン(レッドブル)が今季最多となる8勝目をポール・トゥ・ウインで飾ったが、ランド・ノリス(マクラーレン)が3位でフィニッシュし、自身初のワールドチャンピオンに輝いた。

史上最多の24戦となった2025年シーズンはアブダビでフィナーレを迎えた。新たな技術レギュレーションが導入される未知の2026年シーズンは、3月6日のオーストラリアGPで幕を開ける。

F1サーカスは決勝後のアブダビテストを経てウィンターブレイクに入るが、その休息は長くない。1月26日〜30日にはバルセロナで非公開の合同テストが行われ、2月には11日〜13日と18日〜20日の2回に分けて公式プレシーズンテストが実施される。

F1アブダビGP特集