
最終審判は”延期”か?角田裕毅は「本来の軌道に戻った」―復活を語るメキーズと、価値を認めるマルコ
レッドブル・レーシングのローラン・メキーズ代表は、2025年F1第19戦アメリカGPの週末を通して計8ポイントを獲得した角田裕毅について、「本来の成長軌道に戻った」との見方を示し、高く評価した。
レッドブル昇格以降、今季型マシン「RB21」への適応に苦しんできた角田だが、重要な局面で復活の狼煙を上げた。この8ポイントは、熾烈なコンストラクターズ選手権2位争いにおいて極めて重要であると同時に、来季シート争いにおいても、強力なアピールとなった。
逆境からの7位入賞、価値ある8点
角田はアメリカGPで、まさに「逆境からのカムバック」を体現した。スプリントは18番手、決勝レースは13番手と、いずれもポイント圏外からのスタートながら、アグレッシブな攻めと粘り強いレース運びを披露。両レースで逆転の7位フィニッシュを果たした。
角田の活躍に加えて、チームメイトのマックス・フェルスタッペンがスプリントと決勝で2連勝したことで、レッドブルは週末全体を通して全チーム最多となる合計41ポイントを加算。コンストラクターズ選手権3位フェラーリに3ポイント差、2位メルセデスに7ポイント差まで肉薄した。
残り5戦、チームとして狙う逆転の2位に向け、角田が持ち帰った8ポイントは極めて大きな意味を持つ。実際、レッドブルのモータースポーツ・アドバイザーを務めるヘルムート・マルコは、ドイツの衛星テレビ局『Sky Sport』のインタビューで角田を高く評価した。
「スタートはとても良かったし、クリーンエアー下では競争力あるペースを見せていた。つまり、その点でも上向き傾向が見られる。安定してきているし、それは選手権争いにおいて非常に重要なことだ」
Courtesy Of Red Bull Content Pool
パルクフェルメでクルマから飛び降りる7位フィニッシュの角田裕毅(レッドブル・レーシング)、2025年10月19日(日) F1アメリカGP決勝レース(サーキット・オブ・ジ・アメリカズ)
苦しんだRB21への適応と「シンガポールのつまずき」
トップチーム昇格という飛躍の裏で、角田はRB21の特性への順応に苦しんでいた。これまで親しんだVCARBとは大きく異なる空力特性と挙動を持つマシンに対し、「どのサーキットも新しいサーキットのように感じます」と語るほどだった。
昇格後の17戦でQ3進出はわずか8回、入賞は5回、獲得ポイントは22点にとどまる。一方でフェルスタッペンは、Q3進出を一度も逃さず、4勝を挙げて17戦すべてで入賞し、242ポイントを積み上げている。
だが、イタリアGPでの新型フロア投入を契機に流れが変わった。翌戦のアゼルバイジャンGPでは今季ベストとなる6位フィニッシュを記録し、確かな前進を見せた。
ただその直後のシンガポールGPでは12位に終わり、再びノーポイントに。メキーズが「シンガポールでのつまずき」と表現したように、赤旗中断が相次ぎセッションが混乱したとはいえ、流れを掴みきれない週末となった。
Courtesy Of Red Bull Content Pool
レッドブルRB21で最終プラクティスを走行する角田裕毅、2025年10月4日(土) F1シンガポールGP(マリーナベイ市街地コース)
「本来の成長軌道に戻った」メキーズが認めた角田の”復活”
だが、その「つまずき」を経て、角田はアメリカで復活を遂げた。メキーズ代表は、その走りを手放しで称賛する。
「かなり後方からのスタートであったにもかかわらず、昨日のスプリントでも今日のメインレースでもポイントを獲得してくれた。それにペースも良かった」
「これは彼にとっても重要なことだが、チャンピオンシップ争いという点でチームにとっても重要な結果だ。レース展開の中でチームに貢献できるようにもなっているし、本当に嬉しく思っている」
そしてメキーズ代表は、角田の復活が本物であると断言した。「厳しいシーズンが続いてきたが、シンガポールでのつまずきの後、再び本来の成長軌道に戻ってきた」
この「本来の成長軌道」という言葉こそ、チームが角田に期待していた姿だ。この発言からは、角田が不調を乗り越え、再び安定してポイントを獲得できるドライバーとして、一定の信頼を取り戻したことがうかがえる。
最終判断は先延ばしか—揺れるメキシコ決戦前夜
メキーズからの最大の賛辞は、角田の来季シート獲得にどう影響するのか。レッドブルは次戦メキシコGP後に、来季のレッドブル・レーシングおよびレーシング・ブルズのドライバーラインナップを決定するとしてきたが、マルコはアメリカGPを終えて突如、決定を先送りする可能性を示唆した。
レッドブルのセカンドドライバーをメキシコGP後に決定するのかとの問いに対し、マルコはこう答えた。
「原則としてはそういう計画だが、現時点でそれは我々の優先事項ではない。その時(メキシコの後)に、どの程度まで決定できるか様子を見ようじゃないか」
この発言は、ここ数時間でレッドブル内部に何らかの変化が生じたことを示唆するものといえる。というのも、マルコはアメリカGP予選後、つまりこの発言の24時間前に「メキシコの後に決定を下すつもりだ」と改めて明言したばかりだからだ。ただしその際、マルコは”謎めいた笑み”を浮かべていた。
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決勝レースを前にパドックでレッドブルのモータースポーツ・アドバイザーを務めるヘルムート・マルコと話す角田裕毅、2025年10月19日(日) F1アメリカGP(サーキット・オブ・ジ・アメリカズ)
いずれにせよ、角田とリアム・ローソンのいずれか1名がシートを失うと考えられている中、チーム代表であるメキーズが「チャンピオンシップに貢献できる」「本来の軌道に戻った」と公に認めた事実は、角田にとって大きな追い風だ。
ただし、角田には依然として克服すべき課題がある。
アメリカGPではスプリント予選18番手、公式予選13番手と、予選パフォーマンスが振るわず後方グリッドに沈んだ。角田自身も「特に、できるだけショートランを改善させることが喫緊の課題です」と認めている。
一方でロングランにも課題がないわけではない。アメリカGPでは第1スティントでタイヤを過度に使いすぎた結果、15周目以降、明らかにペースがダウンした。また第2スティントでは角田が認めるように、逆に過度にタイヤをいたわり過ぎてしまった。
運命の次戦メキシコGP。標高2,200メートルという特殊な高地サーキットで、「本来の成長軌道」に乗った姿を再び見せつけることができるか。メキーズとマルコからの信頼を胸に角田は、仮初めの可能性もある”最後の審判”に臨むことになる。
2025年F1第19戦アメリカGPでは、マックス・フェルスタッペン(レッドブル)がポール・トゥ・ウインを飾り、2位にランド・ノリス(マクラーレン)、3位にシャルル・ルクレール(フェラーリ)が続く結果となった。
エルマノス・ロドリゲス・サーキットを舞台とする次戦メキシコGPは、10月24日のフリー走行1で幕を開ける。