角田裕毅の”猶予”はあと6戦か…マルコ、パロウ検討の噂に言及―「レッドブル・シリーシーズン」を構成する3要素

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レッドブルが2026年に向けて、角田裕毅に代えてインディカー王者アレックス・パロウの起用を検討しているとの報道について、モータースポーツ・アドバイザーを務めるヘルムート・マルコは墺紙『クライネ・ツァイトゥング』に対し、「全くの事実無根だ」と全面的に否定した。

パロウは28歳にして、競争の激しい単一シャシーシリーズであるインディカーを4度制した実力者であり、F1関係者からも高い評価を受けている。だがパロウ本人やマネジメント、所属するチップ・ガナッシ・レーシングに加えてマルコも交渉を否定した。そのため、現時点ではレッドブルの来季シート候補には含まれない見通しだ。

レッドブル起用の可能性こそ消えたが、パロウはF1トップドライバーから称賛を集めている。マックス・フェルスタッペンは「アレックスのことはカート時代から知ってる。インディカーでの活躍は本当に素晴らしい」と語り、同郷のフェルナンド・アロンソも「才能があるし適応力も高い」と評価した。

念願のインディ500初制覇を経てミルクを飲むアレックス・パロウ(チップ・ガナッシ)、2025年5月25日第109回インディ500(インディアナポリス・モーター・スピードウェイ)Courtesy Of Honda Motor Co., Ltd

念願のインディ500初制覇を経てミルクを飲むアレックス・パロウ(チップ・ガナッシ)、2025年5月25日第109回インディ500(インディアナポリス・モーター・スピードウェイ)

角田とハジャーの直接対決へ

実際の争いは、角田とアイザック・ハジャーによる一騎打ちの様相を呈している。マルコも「良い意味で我々を驚かせている」と語るなど、レーシング・ブルズのルーキーは着実に存在感を高めている。

一方の角田は、レッドブル昇格後に苦戦が続いているが、新型フロアが導入された直近2戦ではシングルラップで大幅な改善を示した。また、第15戦オランダGPに先立っては、自身の不振の要因がチームメイトとは異なるマシンスペックにあったことをチームが理解したと主張し、評価が変化しつつあると示唆している。

猶予はあと6戦か、その裏にある疑問

角田はまた、来季契約の判断時期についてレッドブルと「合意」したとも明かした。報道によれば、レッドブル首脳陣は「10月末まで」にフェルスタッペンのパートナー、そしてレーシング・ブルズの来季ラインナップを確定させる方針とされる。

以下、この情報が事実であると仮定して話を進めるが、この場合、角田が自身を証明する最後のチャンスは第20戦メキシコGPということになる。つまり、今週末のオランダGPを含めた残り6戦が勝負所となる。

ステージ上に立つレッドブル・レーシングの角田裕毅とマックス・フェルスタッペン、2025年8月29日(金) F1オランダGP(ザントフォールト・サーキット)Courtesy Of Red Bull Content Pool

ステージ上に立つレッドブル・レーシングの角田裕毅とマックス・フェルスタッペン、2025年8月29日(金) F1オランダGP(ザントフォールト・サーキット)

疑問の一つは、なぜシーズン末まで待たずに判断するのかという点だ。マルコは以前「角田には今季末までシートを与える」と述べていた。これについてはホンダの関与を背景に見る向きもあるが、いずれにせよ仮に10月末で放出が決まれば、残り4戦で角田を走らせる意味は薄れる。

デッドラインの決定は、レッドブル側のみの意向を反映したものなのだろうか? 角田は、レッドブルから「提示された」とは言わず、「合意した」と語った。仮にシーズン末まで待たないという判断に角田の意向が反映されていた場合、それは何を意味するのだろうか?

レッドブル及びレーシング・ブルズでの可能性が潰えた場合、角田の最後の希望はアルピーヌとなる。候補の一つとされたキャデラックは先日、バルテリ・ボッタスおよびセルジオ・ペレスと契約を結んだ。

当然に優秀なマネジメントであれば、水面下でアルピーヌとの話し合いを進めていることだろう。アルピーヌの実質的なチーム代表フラビオ・ブリアトーレは、今季中のフランコ・コラピントの交代の可能性を除外していない

チーム代表記者会見でマイクを握るフラビオ・ブリアトーレ(アルピーヌ顧問)、2025年5月30日(金) F1スペインGP(バルセロナ・カタロニア・サーキット)Courtesy Of Red Bull Content Pool

チーム代表記者会見でマイクを握るフラビオ・ブリアトーレ(アルピーヌ顧問)、2025年5月30日(金) F1スペインGP(バルセロナ・カタロニア・サーキット)

控える次世代候補リンブラッド

さらにレーシング・ブルズの来季候補には18歳の新鋭アーヴィッド・リンブラッドが控えている。すでにスーパーライセンスを取得済みで、7月のイギリスGPでは初のフリー走行に臨み、フェルスタッペンに0.526秒差のラップを記録。パドックに確かな爪痕を残した

リンブラッドについてマルコは「計画通り、すべてが順調だ」と語り、将来的な昇格に強い含みを持たせた。また、今季中に更に複数回のフリー走行に登場する予定だと明かした。

リンブラッドがF1に加わる場合、現在のラインナップから誰かが外れることになる。角田がシートを失えばリアム・ローソンの残留が濃厚となるが、逆に角田が残る場合にはローソンが放出される可能性が高い。

レースエンジニアのリチャード・ウッドと話をするアーヴィッド・リンブラッド(レッドブル・レーシング)、2025年7月4日F1イギリスGP フリー走行1(シルバーストン・サーキット)Courtesy Of Red Bull Content Pool

レースエンジニアのリチャード・ウッドと話をするアーヴィッド・リンブラッド(レッドブル・レーシング)、2025年7月4日F1イギリスGP フリー走行1(シルバーストン・サーキット)

2026年のレッドブル系シートは、角田の挽回、ハジャーの台頭、リンブラッドの成長という3つの要素が交錯する構図だ。パロウの名前は消えたが、依然として「レッドブル・シリーシーズン」は混迷を深めている。

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