レッドブル・レーシングのホスピタリティに向かうマックス・フェルスタッペン、2025年7月3日(木) F1イギリスGPメディアデー(シルバーストン・サーキット)
Courtesy Of Red Bull Content Pool

F1サバティカル否定で際立つ、フェルスタッペン”沈黙”の意味…一方で第一希望はレッドブル残留か

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2026年に向けた去就を巡る憶測が過熱するなか、レッドブルのマックス・フェルスタッペンは2025年F1第12戦イギリスGPを前に、メルセデス移籍についての質問には一切応じず、一方で「F1から離れる」という選択肢には明確に「ノー」を突きつけた。

この対照的な姿勢は注目に値する。移籍という選択肢には沈黙を貫きつつも、サバティカル休暇の可能性を明確に排除したことは、キャリアを中断する意思はないが、所属チームを変える可能性は排除していないという“含み”を強く感じさせる。

サバティカル休暇を全面否定

英専門誌『Autosport』によるとフェルスタッペンは、将来的にGT3などの他カテゴリーとF1を並行して戦う構想を持っていることを明かした上で、少なくとも2028年まではF1に留まる意向を明言した。

「いや、絶対にない。F1は続ける」とフェルスタッペンは語った。

「もちろん将来的には、F1と並行して他のカテゴリーにも出られたらいいなと思っている。準備が必要だからすぐには無理だけど、F1以外の世界も少し探っておきたいんだ。すでにテストはしているけど、いずれはレースにも出たいと思っている」

4度のF1ワールドチャンピオンは、GT3レースへの参戦準備を着実に進めており、その情熱をすでに行動へと移している。先週末のスパ24時間レースには自身のチーム「Verstappen.com Racing」を参戦させており、オーストリアGPでリタイアとなった直後にはその模様を観戦していた。

沈黙が語る「移籍の可能性」

トト・ウォルフ率いるメルセデスは、2026年のラインナップを夏休み中に決めると表明しており、その最有力候補としてフェルスタッペンの名が挙がっている。幾らか信憑性に疑問符が付くが、両者の移籍交渉が「現実的かつ決定的な段階」に入ったとの報道もある。

フェルスタッペンはイギリスに至ってなお、メルセデス移籍の噂について問われるたびに、具体的な回答を避け続けている。だが一方で、キャリア中断の可能性を明確に否定したことにより、結果としてその沈黙自体が“何かを語っている”かのような印象を与えている。

一連の報道について問われたフェルスタッペンは、「何も考えてないよ。先週言ったことと何も変わってない。付け加えることは何もない。みんながいろいろ書くのは勝手だけど、それは僕には関係ない」と一蹴した。

さらに、単なる憶測に過ぎないのか?何も言うことはないのか?と重ねて問われると、「他の人にはあるかもしれないけど、僕にはなにもない」と繰り返した。

レッドブル残留が第一希望?

メルセデス移籍関連の質問のなかで、フェルスタッペンが唯一明確に語ったのは、自身のF1キャリアをレッドブルで終えることが理想との思いだった。

他のチームで走る自分を想像できるか?という問いに対してフェルスタッペンは、「いや、と言っておくよ。『はい』なんて言ったら、また見出しにされてしまう。そんなことは望んじゃいないからね」と応じた。

「僕はずっとこのチームに、F1キャリアを一つのチームで終えられるのが理想だと伝えてきたし、チームも同じように考えていると思う。それが実現できたら本当に素晴らしいと思うし、それを今も目指しているんだ」

また、レッドブルに満足しているのかとの質問には、「“隣の芝は青く見える”って言うよね。だから冷静になって、今やっていることを楽しむことも大事なんだ。今シーズンはチームとして思い通りにいっていないけど、そういうこともあるし、時にはそれを受け入れる必要もあると思う」と語り、現状を静かに受け入れる姿勢を見せた。

2026年―読めない勢力図

F1は2026年に、車体とパワーユニット(PU)の両面で大規模なレギュレーション改定を実施する。事実上、現在の勢力図は白紙に戻され、誰が競争力を握るかは未知数だ。

メルセデスは開発中のPUに一定の手応えを感じているとされるが、同じPUを搭載していながら、コンストラクターズランキングで首位を争うマクラーレン(417点)と8位に低迷するアストンマーチン(28点)との間に圧倒的な差があることを見れば、PUの性能だけで競争力が決まるわけではないのは明白だ。

一方、レッドブルは成功を収めたホンダとの提携を今季限りで終了し、2026年からはフォードの協力を得て開発を進めている初の自社製PUを搭載するため、不確実性の度合いは一層大きい。

フェルスタッペンは、2026年の勢力図が見通せない中での移籍にリスクがあることを認め、「だからレッドブルと契約しているんだ」と強調した。

「来年のことを100%確信を持って語れる人なんて誰もいない。未知数が多すぎる。僕がやるべきなのは、与えられたマシンを速く走らせることだけさ」

「2026年は、これまでとは全くの別物だ。クルマに求められることもまるで違う」

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