
フェルスタッペン、アントネッリの誠意に”寛大”対応「これでタイトルの話題が減ればいいのに」衝突DNFで遠のく王座
6月29日に開催された2025年F1第11戦オーストリアGP決勝レース。レース開始からわずか数秒後、レッドブル・リンクの第3コーナーでマックス・フェルスタッペンの週末はあまりにも唐突に幕を下ろした。
メルセデスのアンドレア・キミ・アントネッリとの接触により、両者はともにリタイア。タイトル争いの趨勢に大きな影響を与える波乱の幕開けとなった。
不運が重なった週末
フェルスタッペンの週末は、イベント2日目から不穏な空気に包まれていた。
3回のフリー走行すべてでトップ3に名を連ねる快調なパフォーマンスを見せていたが、予選ではピエール・ガスリー(アルピーヌ)のスピンによる黄旗に阻まれ、最終アタックを完遂できず。結果として7番手からのスタートを余儀なくされた。
「予選では運がなかった。黄旗さえなければ、もっと前からスタートできていたはずだ」とフェルスタッペンは振り返る。
新人のミスが招いた悲劇
スタート直後のターン3で、9番手スタートのアントネッリがリアタイヤをロック。レーシング・ブルズのリアム・ローソンを避けようと咄嗟に進路変更を試みたが、グリップを失ったマシンは前方のフェルスタッペンに突っ込み、両者ともその場でレースを終えることとなった
「ブレーキを踏んだ瞬間にリアがロックして、もうコントロールできなかった。前にいたマシンを避けようとしたんだけど……止まりきれず、運悪くマックスに当たってしまった」と、アントネッリは無念の面持ちで語った。
一気に遠のく5年連続タイトル
このリタイアにより、2024年オーストラリアGPから続いていた31戦の連続完走記録はストップ。チャンピオンシップ争いにおいても、痛恨のゼロポイントとなった。
「これで、タイトル争いの話題が挙がらなくなることを願うよ」と苦笑いで応じたフェルスタッペンの言葉には、やるせなさと現実を受け入れる冷静さがにじんでいた。
今シーズン、マクラーレンは目覚ましい進化を遂げ、ランド・ノリスとオスカー・ピアストリの両名がタイトル争いを席巻する存在へと成長を遂げた。そんな中、現王者フェルスタッペンは彼らに対して執念の走りで食らいついてきたものの、今回のリタイアによって、5年連続タイトルという偉業は風前の灯火となっている。
「時には勝てないことを受け入れなきゃならない。それでも僕らは常にベストを尽くすだけさ」と、フェルスタッペンは静かに語った。
オーストリアGPを終えて、ランキング首位を走るオスカー・ピアストリ(マクラーレン)とのポイント差は61ポイントに拡大した。
アントネッリの謝罪に、寛大対応
レース後、アントネッリはすぐにフェルスタッペンの元を訪れ謝罪。その誠意に、4度のF1ワールドチャンピオンも理解を示した。
「まあ、不運だったって感じかな。仕方ないよ。キミ(アントネッリ)はすぐに来て謝ってくれたし、ホスピタリティにも顔を出してくれた。誰だってああいうミスはある」と、フェルスタッペンは寛大な姿勢を見せた。
「わざとやるようなことじゃないし、僕にとっては大した問題じゃない」
次戦イギリスGPへの課題
この日、レッドブルはホームレースでのポイント獲得に失敗。角田裕毅もフランコ・コラピント(アルピーヌ)との接触で10秒ペナルティを受け、最下位となる16位完走と、厳しい結果に終わった。
フェルスタッペンは「今週末はそもそもペース自体があまり良くなかった。来週に向けて、学ぶべきことが多い」と語り、すでに視線を次戦イギリスGPへと向けている。
なお、フェルスタッペンへの衝突により、アントネッリには次戦での3グリッド降格処分が科された。若きイタリア人にとっても、F1の厳しさを知る苦い一戦となった。
2025年F1第11戦オーストリアGPでは、ランド・ノリスがポール・トゥ・ウインを飾り、オスカー・ピアストリが2位と、マクラーレンが1-2フィニッシュを達成。3位表彰台にシャルル・ルクレール(フェラーリ)が続く結果となった。
伝統のシルバーストン・サーキットを舞台とする次戦イギリスGPは、7月4日のフリー走行1で幕を開ける。