
ポール争いを狂わせた“1輪の逸脱”を振り返るガスリー、ミスへと突き動かした決意と言葉
2025年F1第11戦オーストリアGPの予選Q3。僅差の頂上決戦が期待されていたポールポジション争奪戦は、レッドブル・リンクの最終コーナーで起きた1台のスピンによってあっけなく幕を下ろした。
ピエール・ガスリー(アルピーヌ)が左フロントタイヤをグラベルに落とした瞬間、コース上に黄旗が掲示され、複数のドライバーの運命が決した。影響を受けたドライバーの中には、オスカー・ピアストリ(マクラーレン)とマックス・フェルスタッペン(レッドブル)も含まれていた。
フェルスタッペンにとっては、このセッションで唯一の新品ソフトタイヤでのアタックだった。メルセデスの新人アンドレア・キミ・アントネッリもまた、ラップを完遂できず、ピアストリはフライングラップに入ることすらできなかった。
この結果、ピアストリは3番手、フェルスタッペンは7番手から決勝を迎えることとなり、ポールポジション争いの行方は一転。フロントローの構図は大きく塗り替えられた。
限界を越えた最終コーナーでの「ミス」
「ここが勝負所だ」「最後の2つのコーナーで押し切れ」―ガスリーがQ3最後のアタックに向かう直前、レースエンジニアからの檄が飛んだ。だが、結果的にその激励は、ガスリーのスピンという悲劇的な結末を呼び込む結果となった。
「限界ギリギリまで攻めたんだ。Q2を終えた段階で、最終コーナーでわずかに伸びしろがあると分かっていたからね」とガスリーは振り返る。
「やり抜こうと必死に踏ん張ったけど、曲がり切れずにアンダーステアが出てしまい、エイペックスを捉え損なった。なんとかアクセルを踏んで立て直そうとしたけど、あそこはほんのわずかなミスが致命傷になるコーナーだ。タイヤが1輪グラベルに落ちた瞬間に、すべてが一気に崩れてしまった。本当に一瞬の出来事だった」
一方でアルピーヌにとっては大きな成果
ガスリーはQ2を5番手タイムで突破していたが、最終コーナーでの痛恨のミスにより、Q3では最下位に沈んだ。それでも、コンストラクターズ選手権最下位に低迷するアルピーヌにとっては、Q3進出そのものが価値ある成果だった。
「もちろん、最後のミスには満足しちゃいないけど、それでも難しい予選になるのは分かっていたから、トップ10に入れたのは嬉しい」
「このパッケージでこれだけのパフォーマンスが出せたのはホント、励みになる。正直、ここまでやれるとは思っていなかったからね。全体を通してかなりペースは良かったし、クルマからポテンシャルを引き出せたのは大きい」
なおガスリーは、仮にスピンしなければ、6番手につけたリアム・ローソン(レーシング・ブルズ)と同程度のタイムを記録できたと分析している。
11位じゃ意味がない「トップ10で完走を」
日曜日、ガスリーは10番手から決勝レースをスタートする。彼の視線はすでにレースでのポイント獲得に向けられている。
「決勝レースは僕らにとって厳しい戦いになることが多いけど、ポイント圏内からスタートできるのは大きい。まずは良いスタートを切って、そこからどう展開していけるかがカギになると思う」
「正直、もっと後ろからのスタートを覚悟していたから、予想より良いポジションが獲得できて、ホント嬉しい」
その上でガスリーは、「でも肝心なのはトップ10圏内に居続けることだ。11位や15位でフィニッシュしたって意味がない。大事なのはポイントを取ることだからね」と気を引き締めた。
2025年F1オーストリアGP予選では、ランド・ノリス(マクラーレン)がポールポジションを獲得。2番手はシャルル・ルクレール(フェラーリ)、3番手はオスカー・ピアストリ(マクラーレン)という結果となった。
決勝レースは日本時間6月29日(日)22時にフォーメーションラップが開始され、1周4318mのレッドブル・リンクを71周する事でチャンピオンシップを争う。レースの模様はDAZNとフジテレビNEXTで生配信・生中継される。