ガレージを後にするガブリエル・ボルトレート(キック・ザウバー)、2025年6月13日(金) F1カナダGPフリー走行(ジル・ビルヌーブ・サーキット)
Courtesy Of Sauber Motorsport AG

アウディ傘下ザウバーF1、EDASを導入─自動化技術でマシン開発を加速へ

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アウディ傘下のザウバーF1チームは2025年6月19日、スイスのロボティクス企業「イレブン・ダイナミックス」との間で、マシン開発における戦略的技術提携を締結したと発表した。この協業により、車両部品の計測精度と生産効率の飛躍的な向上が期待されている。

提携の中核にあるのは、イレブン・ダイナミックスが独自に開発した自動化プラットフォーム「EDAS(Eleven Dynamics Automation Suite)」の導入だ。

ロボット支援によるリアルタイム非接触測定を可能にするこのシステムは、従来の手動検査や複雑な工程を一掃し、生産ラインに「インライン非破壊検査」を組み込むことで、精度とスピードの両立を実現する。

F1マシンに求められる高精度な空力部品――たとえばカーボン製のフロントウイングやアンダーフロア――の幾何形状をミクロン単位で正確に測定し、その結果を即座にエンジニアリング部門へフィードバック。開発判断の迅速化と高精度化を通じて、サーキット上での競争力に直結する体制の構築を目指す。

本提携の意義について、ザウバーのチーフ・コマーシャル・オフィサーであるステファノ・バッティストンは次のように語った。

「F1はミクロ単位での進化と積み重ねの世界だ。イレブン・ダイナミックスの技術によって生産工程の自動化と高速化が実現する。その結果、我々は真に重要なこと、すなわちサーキット上でのパフォーマンスに集中できるようになる」

また、イレブン・ダイナミックスの最高執行責任者(COO)ミヒャエル・フィッシャーは、「ロボティクスの革新によってスピードをもたらすことが、我々の共通目標だ」と強調。高い精度が要求されるF1マシンの開発製造とEDASの相性は高いとし、「品質管理を新たな次元に引き上げる」と自信を見せた。

さらに、CEOのサンティアゴ・ドロールは、「この提携は、現代の産業技術がモータースポーツの競争力を直接的に高めうることを示すものだ」と付け加えた。

すでにBMWやアウディをはじめとする自動車業界で実績を積んできたイレブン・ダイナミックスは、F1という極限の開発環境における応用により、自社技術の性能と汎用性のさらなる向上を視野に入れている。

「最大99%」の測定時間短縮も見込まれるという今回のシステム導入。アウディF1プロジェクトにおける競争力強化の一手として、その成果が今後のレース結果にどう反映されるか注目される。