現実味帯びる”ザウバー・ホンダF1チーム”、エンジン供給に向けた人員増の動き
マクラーレン・ホンダならぬザウバー・ホンダ。エンジンサプライヤーとしてF1参戦しているホンダの、2チーム目となるエンジン供給が現実のものとなる可能性が高まってきた。(2017年4月30日、ホンダは2018年からのザウバーへのエンジン供給を正式発表した)
先日「ホンダF1、エンジン開発者の求人広告を英週刊誌に掲載」と題した記事にて、ホンダF1がイギリスで求人活動を行っていることを報じたが、その募集職種の仕事内容に見過ごせない点が隠されていた。
職務内容に散見される”現場経験”が意味するものとは?
ホンダが英誌に出稿した求人内容
実は、今回の募集職種の中には”サーキットでの現場経験“を求めるものが幾つか含まれていた。ここで言う現場とは、”工場”ではなく”サーキット”(トラックサイド)、のことを指す。例えば、今回の募集職種にはシステムエンジニアが含まれていたのだが、この仕事にホンダF1が求めていたのは以下の内容であった。
- 工場とトラックサイドの両方におけるレースオペレーション
- ダイナモとデータの保守及び、モニタリングとレポート
今季のマクラーレン・ホンダは、開幕前のテスト段階からマシンの信頼性不足に悩まされており、期待されたようなパフォーマンスを発揮できていない。よって、今回の求人広告を素直に解釈するのであれば、パフォーマンス不足を解消するための新たな人材登用が目的であると考えるのが自然だ。しかしながら、パフォーマンス不足への対処として人員補強するのであれば、トラックサイド側の経験を持つ人材に固執するのではなく、工場側での開発能力に優れた人材を求めるのが妥当かと思われるが、今回の募集では”現場経験”を求めている。
企業が求人を実施する理由は様々であるが、一般には事業拡大による人員確保のために行われることが多い。仮に、ホンダが”事業拡大による人員確保”のために現場経験をもつエンジニアの求人を行うとするならば、それはセカンドチームへのエンジン供給のために他ならない。
エンジンの供給先が増えれば、当然そのチームのガレージに人員を派遣しなければならないし、そこから得られた情報をモニタリングしながらミルトン・キーンズや”さくら”といったエンジンの開発拠点にデータを送り、状況を逐一レポートする必要が出てくるだろう。こういった仕事では利害関係者とのコミュニケーションが必須であり、エンジニアとしての能力はもとより、より広範な人間力という名のスキルを持つ人物が適材と言える。これは取りも直さず”現場経験を持つ人材”を意味する。
高まるザウバーホンダの可能性
ホンダは現在、ザウバーとエンジン供給についての交渉の只中にあるとされ、ザウバー側もこれを公に認めている。そして、今回の募集職種の中には現場経験を求めるものが幾つか含まれている。これは一体何を意味するのであろうか?特に深い意味はなく、単純にトラックサイドのエンジニアが突如離職してしまって人手不足に陥っているだけなのであろうか?予期せぬ突然の人員不足だとするならば、求人広告を出稿して各々の求職者と面接をして…などという煩わしく時間の掛かる手順を踏まずに、人脈ベースで迅速に人員採用するのが得策と言うものである。
以前、ホンダが自らマクラーレンとの決別を選択する見込みを検証分析した記事を公開したが、その記事の中で、3月31日にホンダ社内でザウバーへのエンジン供給の是非についての決議が行われた可能性に言及した。今回の求人広告が出稿されたのはその6日後の4月6日である。F1ファン御用達の雑誌”F1速報”は、オーストラリアGP決勝の4日後に、当グランプリの特集誌を発行しており、6日という期間は広告掲載するには短すぎる日数とは言い難い。逆に、タイミングとしてはこれ以上ないほどにバッチリと言えなくもない。
予想のための材料は概ね揃ってきた。後はこれをどう捉えるかの問題である。来季以降のザウバー・ホンダの誕生が現実味を帯びてきたというのは時期尚早であろうか?それとも至極妥当な予想だろうか?