フリー走行を経て頬を膨らませながらパドックを歩く角田裕毅(レッドブル・レーシング)、2025年5月23日(金) F1モナコGP(モンテカルロ市街地コース)

角田裕毅、期待された”伸び”はどこへ「あとコンマ数秒が必要」予選に向けた課題と展望

  • Published:

2025年F1第8戦モナコGPの初日セッションを終えた角田裕毅(レッドブル)が、ソフトタイヤ(C6)のグリップ不足に悩まされた一日を振り返った。予選に向けては「あとコンマ数秒を絞り出す」ことが急務だと語り、マシンセットアップと自身の走りの両面で改善に取り組む姿勢を示した。

FP2に向けて前進も…

フリー走行1回目(FP1)で角田は14番手と出遅れた。チームメイトのマックス・フェルスタッペン(2番手)から1.105秒という大きな差をつけられ、ソフトタイヤでラップをまとめきれなかった。一方でハードタイヤではフェルスタッペンに迫るペースを見せており、タイヤコンパウンドごとの適応に課題を抱えていることが浮き彫りになった。

続くFP2では状況が一転。11番手まで順位を上げ、フェルスタッペン(10番手)に対してわずか0.004秒差まで肉薄した。だが、チーム全体としては厳しい現実に直面した。姉妹チームのレーシング・ブルズが躍進を見せ、リアム・ローソンが5番手、アイザック・ハジャーが6番手と上位に食い込む中、レッドブル勢は後塵を拝する結果となった。

モンテカルロ市街地コースのプールサイドを通過する角田裕毅のレッドブル・レーシングRB21、2025年5月23日(金) F1モナコGP フリー走行Courtesy Of Red Bull Content Pool

モンテカルロ市街地コースのプールサイドを通過する角田裕毅のレッドブル・レーシングRB21、2025年5月23日(金) F1モナコGP フリー走行

モナコの洗礼:トラフィックとの格闘

「モナコではこれが常ですし、条件は皆同じではありますが、トラフィックの影響でFP1ではほとんどまともなラップが走れませんでした」

角田の言葉が示すように、全長わずか3.337kmのモンテカルロ市街地コースでは、トラフィックの処理が最大の難題となる。20台のマシンがひしめく狭いコースで、クリーンラップを確保することの困難さを物語っている。

「結局は運次第ですが。ただ、幸いにもFP2では幾らか走れたので、その点はまぁまぁでした」と角田は苦笑いを浮かべながら振り返った。

C6の謎:期待された”伸び”はどこへ

最も注目すべきは、角田がソフトタイヤ(C6)で期待されたパフォーマンス向上を感じられなかった点だ。タイヤセット交換やセットアップ変更を試みても根本的な解決には至っていないようだ。

「ソフトタイヤの限界については、結構はっきりと感じ取れたのですが、それはFP1で感じた限界と似たようなもので、グリップに関してソフトタイヤによる”伸び”をあまり感じられなかったのが正直なところです」と角田は明かした。

同一要因かどうかは分からないが、C6に関する問題は前戦エミリア・ロマーニャGPでも見られた。レッドブル勢は今季初投入されたC6に苦戦。特にラップ終盤でのオーバーヒートによるグリップ低下に手を焼いた。

興味深いのは、FP2でのコンパウンド別のパフォーマンス差だ。ソフトタイヤではフェルスタッペンに0.004秒差まで詰め寄った角田だが、ミディアムタイヤでは0.692秒の大差がついた。この逆転現象は、問題解決を探る上で何らかの手がかりとなるかもしれない。

C6は2025年のタイヤラインアップの中で最も柔らかいコンパウンドで、C5よりもわずかに速い。また、1〜2周のクールダウンラップを挟むことで、パフォーマンスがある程度回復することが分かってきている。一方で、その柔らかさゆえにクルマの安定感が損なわれると感じるドライバーもおり、自信を持ってプッシュしにくい傾向も見受けられる。

懸念されるミディアムの理解不足

トラフィックおよびセッション中の赤旗中断により、ミディアムタイヤに関する十分なデータ収集ができなかったことが悔やまれる。ミディアム装着時のクルマの感触について問われた角田は、困惑を口にした。

「あまり走れていなくて…クリーンラップが取れたのは1周かな。でもその後、赤旗やら何やらで、兎に角、1周だけだったので」

決勝で使用される可能性の高いミディアムタイヤでの理解不足は、日曜日への不安材料となるかもしれない。また前戦同様、予選で使われる可能性も考えられるため、土曜のFP3で有益なデータが得られることを願いたい。

予選への展望:「ポテンシャルは示せている」

残されたプラクティスセッションはFP3のみ。限られた時間の中で、角田は現実的な目標を設定している。

「少なくとも、FP1からは一歩前進しましたが、それでもクルマをまだ改善する必要があります。あとコンマ数秒を絞り出せるよう、頑張るつもりです」

「ポテンシャルがあることは示せているので、あとは自分でシッカリと引き出すことに取り組んでいきます。今やっていることを続けていってペースを少しずつ上げていき、予選で全てをまとめられたらと思っています」

2ストップが義務化されてなお、モナコGPという特殊な舞台で予選順位が重要であることに変わりはない。どこまで上位に食い込めるか。イベント2日目に向けての巻き返しに期待したい。


2025年F1モナコGPのFP2では、地元出身のシャルル・ルクレール(フェラーリ)がトップタイムを記録。2番手にオスカー・ピアストリ(マクラーレン)、3番手にルイス・ハミルトン(フェラーリ)が続く結果となった。

FP3は日本時間5月24日(土)19時30分から、公式予選は同日23時から1時間に渡ってモンテカルロ市街地コースで開催される。セッションの模様はDAZNフジテレビNEXTで生配信・生中継される。

F1モナコGP特集